第8話 失策

「そこまで!」


教官の静止、


「きゃああああああ?!だ、大丈夫ですかああああああ」


うさ耳の少女がすっ飛んで来て、


「母なる大地よ、その慈悲深き御手、我等に差し伸べ給え──超位回復グラヒール!」


地属性魔法、第陸階位シクス

超高位の回復魔法だ。

しかも、短縮詠唱での発動。

相当な術者だ。


属性魔法の回復は、神聖魔法に即効性は劣るが、柔らかいので、好んで使う者もいる。


傷がみるみる塞がっていく。


「有難う、助かったよ」


「いえ、いきなりすみません……で、レオ、何やってるんですかあああああああ!」


「いや、余裕で防ぐと思ったんだよ。本当に」


ぽかり


心底疲れた様子で、教官がレオの頭を叩く。


「貴様は……」


言葉にならないようだ。


「あの、勉強になって良かったですよ。皆さん、お強いですね。こうやって腕も治して貰いましたし」


ルシフは、苦笑いし、


くそ、自己申告した能力が低過ぎた。

完全純粋人間基準じゃないか。

鍛錬して強くなった方向で少しずつ……


心の中で溜め息をついた。


--


「此処が学食です」


うさ耳の少女──スピカに案内され、食堂へ。

レオ、犬耳の偉丈夫──シリウス、樹肌の青年──リブラも一緒だ。

仲良しグループ?


「うわ……大きいな」


ルシフは思わず言葉を漏らす。

食堂は、巨大。

料理の種類も豊富。


「まだ学生証無いですよね?現金決済だと割引が無いから、私のを使いますか?」


スピカが尋ねる。

学生証でお金を払うシステムか。


「大丈夫だよ。お金には困っていない……もっとも、この学校に通う人に比べたら、裕福ではないけどね」


ルシフが、苦笑して答える。

小遣い稼ぎに、幼馴染の商人に薬を売って貰ったり、製法教えてお金を貰ったり。


ルシフは、普通に日替わり定食を購入。

値段はリーズナブルで、量は多い。


「裏庭で食べようぜ!」


レオの提案。


「外に食器を持ち出しても良いのか?」


「ちゃんと返せば大丈夫ですよ」


ルシフの疑問に、リブラが答え。


「持って帰れば食器代浮くぜ!」


「駄目だよ?!学食の人、困っちゃうんだから!!」


レオがとんでもない事を言い、スピカが止める。


「外に行くなら、時間が惜しい。行き帰りだけで時間をとるからな」


シリウスが、落ち着いた低い声で言う。


「こっちだぜ!」


レオが駆け出した。


「レオ、待って?!食器持ってそんな速度出せないです!」


スピカが叫んだ。


--


スピカはサンドイッチを少し──草食でもないらしい──レオはがっつりの山盛りどんぶり、リブラはパンで、シリウスはハンバーガー。


「ルシフ、あんたやるなあ。あたいの剣技は結構なものだと思うんだが、あんたには勝てる気がしないよ」


「いや、君が圧勝しただろう?」


「ルシフが手を抜きまくってたからな!」


……やはり、気付かれるか。


「私達賤混者ハーフは、力を隠す事が多いです。純人間ピュアがどこまで許容するのか、信用できないですからね」


リブラが微笑を浮かべ、言う。

……レオも、重力属性魔法をこっそり使っていた。

使える事を隠しているのだろう。


「とはいえ、迂遠なのも確かだ。隠す幅が大きければ違和感が強くなるし──それに、勝てる勝負を落とすのも、業腹だろう?」


にまり


シリウスがルシフに笑いかける。

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