瑠花視点:パート8

うっすらと目を開けると白い天井が目に入る。

手に暖かい感覚がある。

ゆっくりと頭をもたげ、その暖かい原因を確認する。

梨友が椅子に座り、私の手を握ったまま眠っていた。


空いている手で身体を起こし、梨友の頭を撫でる。

梨友が目を覚ますと悲鳴をあげながら抱きつきながら喜ぶ。


「瑠花ちゃん!!瑠花ちゃん!!!!!瑠花ちゃん!!!!!!!」


何回も何回も何回も私の名前を叫ぶ。

あぁ、梨友が目の前にいる……。

私の唯一の支えがここにいるんだ。

看護師がなんの騒ぎかと様子を見にき、今先生を呼びに行きますねと先生!!先生!!と医師を呼びに行った。


「死んじゃうかと思ったよぉ……。」


顔が涙や鼻水で酷い有様になっている。


「あんな奴に殺されてたまるか。」


「瑠花ちゃん…………。良かった。ほんとに良かった。」


またわんわん泣き出す。


医師が来て、怪我の具合や容態を聞いてくる。


「いやぁ、腹にナイフを突き刺されるってどうなっているのやら……。最近の若い子は物騒なのか……?まぁいい、とにかく手術は成功。傷も塞がってるようだし、2〜3日安泰にしてれば問題ないでしょう。あぁ、あとそれと奇跡的に致命傷は避けてたよ。神様っているのかもね。」


そう言ってまたどこかに行ってしまった。


「私!!毎日来るからね!!」


「うん、ありがとう。もう大丈夫だから、一旦帰りな?」


そう言うと梨友はまたねと手を振り家に帰っていった。


親は来なかったなぁ……。

再び眠くなった頭で最後にそのことを考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る