仮面ライダータイキ

俺たちまじでカッコeイケメンs

第1話 俺の未来は仮面ライダー!?(諸説あり)

みんな、たこ焼き、好きかい?こんな事を聞くのは漫画では特殊能力、つーのかな?要は俺の特技に関わるから。嫌いじゃ無いといいけど。あれは高2の大晦日、年の瀬。そう、カラオケに行った日だ。俺はあの日こんな奇妙でイカれた事が起きるなんて思わなかったんだ。おっと、名前も語らずに自分語りばっかですまねぇ。俺の名前は木野井口太、まぁ友人からは野口、グッチ、なんて呼ばれてるかな。そして「野口さん、仮面ライダー変身おねしゃす!」この仲間内だと妙に調子の良い男は前原晃、晃と呼んでいる。こいつは悪いやつでは無いが、その、なんと言うか何を言ってるのか分からない。滑舌とかじゃなくて、純粋に何が言いたいのか分からない。俺は仮面ライダーが大好きなんだけど俺がフード被った姿を仮面ライダーと言っている。それであの調子で囃し立てているのだ。やっぱりなんのことだか分からない。「お願いしますよー隊長〜!」この男は宇田一樹。宇田と呼んでいる。俺と同じ、自動車整備士を志す所謂同士、だ。宇田と晃はよくつるんでおりこの流れも当然乗っかってくる。「馬鹿言え!なんで俺が仮面ライダーなんだよ。」いつものように軽く流す。よく分からない事を言っている時はこのようにスルーに限る。それより少しお腹が空いた。思えば寝坊して昼飯食いそびれたんだっけ。今は晃がなんとも言えない歌を歌っている。注文だ。「隊長、ここたこ焼きタワーあるらしいよ。」宇田はどうやら俺に頼めと言っているようだ。恐らくみんなで食えるのでおこぼれ期待ってとこか?まぁたこ焼きも悪くは無いしこいつらも楽しそうだから頼んでやるか。そう思い宇田に愛想笑いを向けると注文の電話をするため受話器を取った。思えばこの時から何かおかしかったのかもな。「ご……文……します……」やけに向こうの声がくぐもっている。厨房は深海に沈んでるのか?んなわけない。きっと晃のせいだ。間違いない。取り敢えずそう思い「たこ焼きタワー一つ。」俺は特に疑問も持たず注文した。

後は、待つ。晃の歌が終わった。どうやら休憩するらしい。まぁ俺も注文した事だしくるまで駄弁るか。そうして俺たちは高校生にありがちな、しかもどちらかというとモテない男にありがちな話をしていた。しかしいつもより様子がおかしい。話に熱中して1時間はたったか?遅い。たこ焼きが余りにも遅すぎやしないか?今日は見たところかなり空いていたが。「俺はさぁ顔なんていいんだよ。愛嬌ある娘ならさぁ。」晃のこの話はたこ焼きを待ってから既に3回はしている。こいつは酔ってるのか?「俺厨房見てくるわ」そういって立ち上がろうとしたまさにその瞬間だ。店員が来た。全身を防護した服を着てヘルメットを被った店員というよりは乗組員、と呼んだ方がしっくりくるこいつを店員と呼ぶなら、だ。明らかに俺らの中には動揺が走る。宇田に至っては腰まで抜かしている。無理もない。俺も叫びたくなる気持ちを抑えて冷静に振る舞っている。今日が10月31日なら少しは理解できるけど。しかし別室の悪戯、という可能性も大いにあり得るし、この恐ろしく奇妙な格好の男が、無言でたこ焼きを持って立ち尽くしているのなんて誰だって信じたくないだろう。俺が何者かを問いただそうとしたその時、「誰だよ...あんた」お前か。口を開いたのは晃だった。声は今にも掻き消えそうだったが確かに晃の発声だった。返答は無い。こうなりゃやけだ。こいつを取り押さえる。こう見えても、といっても体格通りなんだけど俺は陸上の円盤投げをしている。なのでパワーには自信があるしヘルメット野郎もそこまでデカくない。やるしかない。行動より先にヘルメット野郎が動いた。何か呟いた後に静かにたこ焼きとレコーダーをテーブルに置き、あろうことか服だけを残して蒸発していった。比喩じゃ無いんだ。本当に蒸発した。なんなら大気に消えてった。あぁ、一刻も早くドッキリのカメラマンが出てきてくれたらいいのに。何がなんだか分からない。分からないが、確かな事はこの野郎は仮装しているわけでも、たこ焼きが食べたかったわけでも無いという事だ。

ひとしきり悲鳴をあげたがカラオケボックスなので騒音にはならないだろう。みんなの頭が冷静になって来るとこのあり得ない状況の答えが知りたくなる。「どうする...これ...」宇田が重い口を開いた。思えばこの時誰も逃げる決断をしなかったのも、恐怖の裏にある好奇心からだったのだろう。分かってる。どうする、とはやはりヘルメット野郎が残したレコーダーの事だ。空腹の俺はたこ焼きも気にはなるけど、得体の知れない奴が残した物は流石に食えねぇな。「取り敢えず...聴いてみるか?」晃が続く。本当は聴かない方がいいんだろう。国家機関に任せて俺たちは家でぬくぬく過ごす方が良いに違いない。しかしこの忌々しいレコーダーには何か意味があるはず。石橋を叩いて渡る、なんてことわざあるがそんな事よりこの不可思議な夢のような話の手がかりを掴まねば。聴いてみる事にした。「隊長、お願いします。」宇田がぼそりと呟く。お前は鬼か。まぁどのみちこいつらは頼りないし俺がしっかり聴かねば。レコーダーからは俺らに届けてるのだろうか、通信の声が聞こえてきた。

(えー、えー、こちらエージェント……。えー、えー、私は未来からこのメッセージを届けている。正確に言えば令…2年の...まぁ、遠くは無い未来だ。えー、えー、率直に言えばだね、こちらの世界はもうダメだ。バカバカしい話とは思うがね、我々はお好み焼きを主食にするのが目的の異星人にだね、侵略されたのだよ。お好み焼き、しか食べられないのだよ。食うものがそれしか無いからな。この地球上からね、信じられんかもしれんがね、他の食糧が消え去ったのだよ。これが危険か否かは君が栄養士出なくても分かるね?えー、えー、つまりだね。そちらの世界では大晦日では無いか?えー、えー、えー、まぁあまり時間が無いという事だ。そこでだね。えー、えー、未来の誰かの君にね、えー、頼みたいのだよ。どうかね、えー、そちらの未来をまぁ、守ってみてはどうかね?という事なんだ。このメッセージを過去の出前に仕込んだんだ。我ながら素晴らしい技術だ。えー、つまりだね、頼んだ注文、届いてるだろ?それを食してくれ。なぁに不味かぁ無いさ。羨ましいよ。私はお好み焼きしか食べら....待て、貴様どうやってここに...!私は.....)

生々しい水音とゴトリ、という音と共に通信はここで途絶えた。この音が何なのかは考えない事にした。

要約すると何?お好み焼き星人が来るからこのたこ焼きを食って地球を守れ?冗談もここまで来ると笑えないな。しかし宇田や晃の顔は真剣だ。なぁお好み焼き星人ってどんなかな、とかいつ来んのかな?とか言っていた。「おかしな事が起こったのは間違いない。しかし俺は信じられない。ともかく言えるのは今日のこの出来事は忘れる事だ。」分かってる。そりゃ無茶だ。しかし俺はこう言うしか無かった。二人はごちゃごちゃ言っていたが暫く説得し、ようやく渋々ではあるが納得して大人しくなった。今日の事は忘れよう、そうしよう。俺は心に固く誓い、店員にたこ焼きを持ち帰るための容器を貰っておいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る