ひとといきるばけものとばけものといきるひと

『checking operation system』


 頭脳に直接打ち込まれた起動プログラムにより、駆ける様に全身を巡る電流。


『all clear start in ex mode』


 以前とはやや違う起動確認を経て、問題無しと判断され、意識が再開する。

 何故、起動を?

 私の機能は停止したです。再起動するはずがありません。


「ようやく起きたか、寝坊助め」


 耳に入る、怪異最愛の声。

 視覚系の接続が悪いのか視界はぼんやりとした暗がりのままですが、聴覚系は正常な様です。


「あばだ…どう…で……」

「慌てるな、無理に喋ろうとせずとも良い」


 発声器の調子も悪いのか、上手く音声が出ません。

 周囲の状況は分かりませんが、声の大きさから彼が近くに居ることは分かります。

 音の反響具合からするとコンクリート製の建物に居るのでしょうか? 地下のシェルターを掘り返したのかもしれません。

 しかし、それでも私を直す事は不可能な筈です。

 シェルターは既に空になっており、替えのパーツなどありません。

 一体どうやって私の部品を工面し、私を直したのでしょうか。


「どうした? 我の作りし物に不備などある訳が無いが、やはり他者に体を弄られるのは安心せぬか?」


 ……今、彼はなんと言いましたか?


「頭脳はほぼ同じ物を作成し、それ以外は全て我の特別製だ。間違いは無い」


 私の体の部品を作ったと、そう言ったのですか?


「まあ、融合炉を作るのに300年程かかってしまったが、そこは許せ」


 そうでした。私は彼を侮っていました。

 彼は、人間なんかより、私なんかより、とても崇高な存在です。 

 人間が作った物程度、彼にとってはおもちゃ同然なのでしょう。


「さあ、目を開けろ。以前のお前は鉄が多かったが、今のお前は人間とそう変わらぬ。まずは瞼を上げねば目は見えぬぞ」


 言われて初めて、目の前がぼんやりとした暗がりなのは、瞳の上に瞼が掛かっているからなのだと気付きました。

 瞼を上げるのは初めての行為ですが、なんとか額を上に引っ張る様に力を入れ、瞼の淵を開けます。

 

「目を開けたな? 我を見たな?」


 そこにあるのはあの日と同じく、思わず引き込まれてしまいそうになる、満面の笑顔。


「 約束は覚えているな? さあ、答えて貰うぞ」


 ああ、確かに貴方は言っていましたね。次に目が覚めた時に返事をしろと。

 そして、自分は契約を違えないのだと。

 そんなの、貴方への返答なんて、既に決まっているではないですか。


「お前を気に入った、我とつがいになってくれ」

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ひとをくらうばけものとばけものをだますもののおはなし @dekai3

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