Roul B.LIVEツアー【秘伝開帳】終了直後ロングインタビュー 前半





 端的に言って凄まじいステージだった。およそ十カ月間に及んだ全国横断ツアー【秘伝開帳】。その最終公演のチケットを手にしたばかりか、昨晩にステージを終えてまだ間もないRoul B.(以下、Roul)に、ツアーの総括としてロングインタビューさせて頂く機会を得た幸運な筆者である。


 今や若い女性層を中心に、新しいカリスマとしての地位を築きつつあるRoul。彼女が見ている景色と、これから見ようとしている景色、さらには【秘すれば花】として内に秘めている熱い想いを、可能な限り掘り下げていきたいと思う。




 ──まずはお疲れ様です。昨夜のステージを拝見して、とてつもないエネルギーを頂きました。月並みな言葉になってしまいますが、本当に素晴らしかった。


 ありがとうございます。私自身も夢のような時間を過ごさせてもらいました。皆さんにエネルギーを与えられたというか、吸い尽くした感があって(笑) だからそう言って頂けたなら何より。


 ──吸い尽くした感ですか。適切な表現かもしれません。特に中盤の展開ですね、私も含めてオーディエンス皆が多大な喪失感に襲われましたから。良い意味で、ぐったりさせてもらいました(笑)


 ふふ、【藍色】からの流れですよね? これでもかとばかりに、ダウナーなナンバーを盛り込んでみました。


 ──心を抉られましたよ。渋谷公会堂全体を、うねるような陰鬱が支配していたいというか。


 それは良かった。実はあれ、SET LESTを作る時にスタッフ間でちょっと揉めたんです。最終的には、私がを通させてもらって、昨晩の流れになったわけですが。


 ──揉めた、と申しますと?


 舞台監督である青葉さんが、「ツアー最終日にお通夜ムードはどうなんだ?」と。それからトラックメーカーのUTAうたも、もっと煌びやかな展開を作りたかったみたいで。


 ──監督の仰ることも理解できます。それにメインコンポーザーとして多くの楽曲を共に作り上げた二階堂にかいどうUTAうた(以下、UTA)さんですから、LIVEのひとつひとつにも強いこだわりがあるのでしょうね。


 そうそう、本当に大変ですよ。ぶっちゃけてしまうと彼は、私より面倒な人間なんです(笑) 特にEDMの畑で育っていますからね、フロアを沸かせるイコールLIVE、みたいな方程式の下で生きてる。


 ──面倒な人間という今の発言ですが、裏を返すとUTAさんをそれだけ信頼していらっしゃると?


 もちろんです。多分UTAは、私が今こうしてる間にも新しい曲を書いていますよ。彼は私と違って、夢の中でさえも曲作りしているタイプなんです。呼吸することに手を抜く人なんていないでしょう? それと同じです。


 ──なるほど。音楽への距離感について、Roulさん自身はどうなんでしょう? 


 どうなんでしょうね(苦笑) 正直に言うと、あんまり仕事熱心ではないですよ。最低限のトレーニングをして、良さげなメロディが思い浮かんだなら必ずスマホに録音する。徹底してるのはその程度です。なんというていたらくでしょう(笑)


 ──(笑) 失礼な言い方かもしれませんが、昨晩のステージに立っていたRoul B.と同一人物とは思えません。いえ、非常に良い意味でリラックスされているというか。


 あれはね、何かが憑依するんです。客電が落ちるその瞬間まで、私は不完全燃焼の燃えカスみたいな生き方をしています。LIVEが始まると、海底に溜まった天然ガスに着火する感じですかね? あまり言い方がおしゃれじゃないんですが。


 ──いえいえ、赤裸々に語ってくださりありがとうございます。つまり今は、精神的に一番穏やかな状態でいらっしゃるというわけですね。


 はい、空っぽの状態です。秘伝を開帳した直後ですので、揺すっても叩いても何も出ません。


 ──秘伝開帳。そういえば今回のツアータイトルは、大きな矛盾を孕んでいますね。秘するべきものを開帳してしまう、その真意は?


 【〜秘せずは花なるべからず~】というのは世阿弥ぜあみの芸論書にある記述なんです。様々な解釈があると思うのですが、私は内的価値と外的評価の乖離を危惧する言葉だと捉えていて。


 ──それは今の日本の音楽シーンに対しての風刺ですか?


 えっと、そこまで大層な論議ではなく、単純に燃えカスの私とRoul B.との対比を、どのようにして世間に知らしめようか、みたいな。


 ──なるほど、だから【秘伝開帳】というわけですね。秘すれば花でいられることも、いち表現者としては表現の中に組み込んでいきたいと。


 それはカッコよく言い過ぎですよ(苦笑) 神格化されていない等身大の私が、物陰から顔を覗かせている程度の認識です。例えばこうしたインタビューだって、以前の私であればお断りしていましたから。


 ──貴重な機会をありがとうございます。責任の大きさを感じて、今さらながらに緊張してきました(笑) 冗談はさておき、今のRoulさんのお話を聞いて、【君が思う天使について】の歌詞が思い浮かんだのですが。


 ご明察です。【天つい】の歌詞中では恋愛色を強く打ち出していますが、実際には恋愛の範囲に留まらず、憧れを抱かれることへの恐れを書いています。


 ── 『もうおしまいにしなよ アタシがあんたの憧れでいられるうちに』とありますが、おしまいにしたいのは『アタシ』であると?


 ほら、秘すれば花ですよね(笑) 解を得られた途端に、陳腐になってしまうものって沢山あるんですよ。世の中の人が皆がそうであれば、多少の救いはあると思うのですが……。いえ、あるいはそうだと思いたいんです。私を含めた誰も彼も全部、本当は大したものではないと思いたい。


 ──なんだか哲学的ですね。Roulさんがファンを魅了してやまない理由が垣間見えた気がします。


 哲学的というか、禅問答になってしまって難しいんですよ。死ぬまで誰かに憧れていたいと思う自分と、憧れさえ幻想だと知って楽になりたい自分がいる。更に今の私が置かれている環境というのは、時に誰かの憧れにさえなろうとしている。


 ──『虚栄』『怠惰』、されど『強欲』。そのような印象を受けますね。


 とても詩的な返しですね、ここで七つの大罪かー。なんだかアーティスティックだ、負けました(笑)


 ───茶化さないでください(笑)


 いやでも遠くないですよ。次の曲のテーマはそれにしましょう。


 ──本当ですか? 楽しみにしています。





 インタビュー後半は明日のK.O.MUSICにて掲載!







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