Roul B.渋谷公会堂2days Day2 LIVEレポート
昨年末から今夏にかけて行われたLIVEツアー【秘伝開帳】。その追加公演にしてツアーFINALの位置付けとなる2daysライブ【秘伝開帳~秘せずは花なるべからず~】が、LINE CUBE SHIBUYA(旧・渋谷公会堂)にて開催された。
チケットは両日とも即日完売。その事実が、若い女性層を中心に支持されるRoul B.の人気の大きさを物語っている。このレポ当日も、およそ2,000席近くを埋め尽くしていたのは女性が中心だ。目を輝かせながら客電が落ちるのを待ちわびる彼女らは、Roul B.という存在に恋する乙女のように筆者の目に映った。
定刻通り照明が落ち、ステージ前方のスクリーンに舞い踊る桜の花弁が映し出された。鳴り響くSEは波の音。花鳥風月を思わせる演出は、EDMというジャンルに括られることの多いRoul B.には少々珍しい。
しかし耳に心地良い波のさざめきは、不安を煽るほどに激しい濁流のうねりへと変化していく。優雅に舞っていた桜の花びらは突如として深紅に染まり、電話線を抜く時のような「プツン」という不吉な音が会場に響き渡った。同時に暗転。
その瞬間、フロアからは盛大な歓声が沸き上がった。彼女の熱烈なファンであれば、この日の一曲目が何であるかピンと来たはずだ。
Roul B.の代表曲のひとつ【浴室オーケストラ】の電子的なイントロに乗せて、引き上げられていくスクリーン。照らし出されたステージ中央では、バニラブロンドの毛先にショッキングピンクを遊ばせた彼女が妖しく手招きしている。
『一人遊びをしましょう~』独創的な歌い出しと共に、一気に高まる渋公のボルテージ。次々と上がる黄色い声援を、表情豊かな彼女の歌声が捻じ伏せていく。その様子は、どこか暴力的ですらあった。
続くナンバーは【観音殺し】、更には【最難解パラドクス】、【デストロイ】と、畳み掛けるようなアッパーチューンが続く。駆け抜けるように四曲を歌い上げた彼女は、必要最低限のMCだけを済ませ、ファルセットボイスを多用した【偏差値不足】を披露する。『足りなすぎるアタシは、足りないものを数えることもできない~』自分自身を表現したと語る痛々しい歌詞が、オーディエンスをダウナーな世界へと誘い込んでいった。
フェードアウトしていくアウトロに合わせて、再び波の音が響き渡る。徐々に青みを帯びていく照明は、深海じみた不気味な揺らぎを伴ってフロア全体を照らしていった。
やがて一筋の光。その中心に立つRoul B.が紡ぐナンバーは【藍色】。ここから九曲目の【ロイヤルブルー】に至るまで、彼女は喪失感溢れるナンバーを畳みかけた。あまりにも強烈なRoul B.ワールドに、筆者の視界も度々滲んでしまう。
言葉には代えがたい「痛み」を我々にプレゼントしたRoul B.は、ここで本格的なMCを挟んだ。すっかりダウナーな世界に浸りきった我々とは正反対のご機嫌な様子で、「どうしてみんなは、わざわざ陰鬱な曲を聞きに来るの?」などと問いかける彼女。
その問いかけのアンサーとして用意されたのか、【君が思う天使について】のイントロが流れた。メタリックなドラムが刻む、特徴的なシンコペーション。胃を揺さぶるほどの重低音がフロアを揺らす中、Roul B.はキレの良いラップを披露する。
『キレイでいたげるよ それであんたが救われるなら~(略)
もうおしまいにしなよ アタシがあんたの憧れでいられるうちに』
気怠いステップを踏みながら、ステージの上を動き回る彼女。一斉に沸き立つオーディエンスを煽りながら、【クラリネットコンプレックス】までを一気に歌い上げた。続く【+ちっく】の間奏では、このツアーのバンドメンバーを一人一人紹介していく。すっかり息の合ったパフォーマンスは、客席の皆を見ていて微笑ましい気持ちにさせる。
「ありがとうみんな。あと一曲だけ、私の自己満足に付き合ってください」
少しだけ息を切らしながら彼女が言うと、物悲しさを孕んだピアノが響いた。【拝啓4オクターヴ】のピアノアレンジだ。【浴室オーケストラ】と並ぶ、Roul B.の代表曲である本曲。しかしこのアレンジは、筆者も初めて耳にする。
『ねぇ 君へ 無いものを無いと言うことが そんなに罪なのかなぁ
教えてくれなくていい 答えてくれなくていい
ただ私が今から零す弱音を どうか聞かなかったことにしてください』
それは心を抉られる歌声だった。純度の高いカタルシスが、日常の何もかもを洗い流していく感覚が筆者に訪れたのだ。誤解を恐れずに書くならば、このLIVEのピークは【拝啓4オクターヴ】であったと断言できる。この後にアンコールで演奏された四曲ももちろん素晴らしいのだが、【拝啓4オクターヴ】で涙腺崩壊してしまった筆者には心ここに在らずだったのだ。
さて最後に、彼女のファンを『Roul B.という存在に恋する乙女』と称したことを詫びねばならない。Roul B.とは、恋や憧れを超越した私たちの教祖であり代弁者なのだ。
『秘せずは花なるべからず』、決して知られてはならない私たちの弱さや狡さを、美しい花のままとして歌い上げてくれる稀有な存在。それこそRoul B.が求められてやまない最大の理由であり、彼女がカルト的な人気を誇る真理なのである。
Roul B. LIVE渋谷公会堂2days
【秘伝開帳~秘せずは花なるべからず~】
Day2 2020.10.24.(Sat)
SET LIST
1.浴室オーケストラ
2.観音殺し
3.最難解パラドクス
4.デストロイ
5.偏差値不足
6.藍色
7.Quarter Quartz
8.生きりゃんせ
9.ロイヤルブルー
10.君が思う天使について
11.鏡像と。
12.クラリネットコンプレックス
13.+ちっく
14.拝啓4オクターヴ
15.沙羅双樹
16.新曲
17.新曲
18.腐海のつぼみ
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