百合的短編集

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癒しの小唄

 家の近所にある森林公園。私は毎週末の昼頃にここを訪れる。春も、夏も、秋も、冬だって、毎週末には訪れている。

 というのも、気温や木の様相以外に変化がなく、雪も降らないこの辺では、冬でもたいした苦にはならないからであり、また、私の目的も、四季問わずにそこに居るからだ。

 今日も、そうして森林公園の隅にある小さな木のもとへと向かう。私の目的である彼女も、いつも通りそこに居て、木の根元にもたれている。優しい歌声を周りにだけ響かせ、穏やかな表情を浮かべる彼女に、私は日頃の生活で生まれる心の棘を払ってもらうのだ。

 歌う事に熱中している彼女の横に、腰を下ろして歌声を堪能する。これが私達の週末だ。

 しかしこんな所で歌を口ずさんでいると、どこか童話の世界の女の子のようにすら見えてくる。この世の淀みや穢れに一切触れていないような、そんな印象。彼女はとても澄んでいる。

「こんにちは、まだまだ皆勤賞ですね」

 私に気付くと彼女は、優しく微笑んで私に喋りかける。初めは隣に座る私に驚くようなことがあったが、今となってはそれが普通になってしまった。少しだけ、それが嬉しい。

「貴方の歌声が、落ち着くからね」

 私がそう返すと、彼女は照れくさそうに、そうですかね、と言いながら頬を掻く。そんな一挙一動にも、私の心は癒される。きっと、私はこの子が好きなのだろう。この子の歌声が、この子の仕草が、この子の性格が、この子の全てが、私にとっての癒しなのだ。

「でも、そうして誰かが好いてくれるっていうのは、なかなかいい気分ですね」

 両腕で抱える膝に頭を乗せ、私の方を覗き込む彼女の頬は、少しだけ赤く染まっていた。

 少しだけそうして話すと、彼女はまた歌い出す。優しく心を癒す彼女の歌声が、今日も私の心の棘を払い、私の好意を膨らませていく。

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