第15夜  雨が降る

 ーー朝食兼昼食を取り、玄関で楓はスニーカーを履く。


 本日は、頭にキャップを被っている。


 がらっ・・


 玄関の戸が開いた。

 入って来たのは、鎮音だ。


 年中・・着物姿なのか、本日も着物だ。

 それも鮮やかな藍色。

 白い百合の絵柄が入った着物だ。


「出掛けるのか?」

「ああ。ばーさん。出掛けてたのか?だから、いなかったのか。」


 楓はスニーカーを履くと、下駄箱の所に掛けてある傘を二本、手に取った。

❨優梨が用意しておいたものだ❩


「雨が降るぞ」


 鎮音は草履を脱ぐと玄関に上がる。


「みてぇだな。」


 楓は玄関から出て行く。


「楓」


 戸を閉めようとした楓に、鎮音は声を掛けた。楓は振り返る。


「気をつけてな。雨は色んなものを呼ぶ。」



 楓はきょとん。としたが、直ぐに


「ああ。わかった。行ってくる。」


 笑うと、戸を閉めた。



 鎮音は・・出て行った楓が閉めた戸を見つめていた。


(ああしておると、である事を忘れる)


 Tシャツに薄手のロングパーカー。

 薄い水色のダボッとしたGパン。

 スニーカー。黒のキャップ。


 鎮音には少女に見えた。


(雨・・降りそうだな・・)


 楓は空を見上げた。

 どんよりとした雲はいつの間にか、陽を隠してしまっていた灰色の空が広がる。


 降るか。どうかは定かではない。

 ただ、出掛ける口実は出来た。


 理由の無い外出は、極力避けろ。と、口酸っぱく言われているからだ。


 まるで・・ご主人の帰りを待つわんこの様である。



 住宅街を歩いていると、ポッ・・ポツ・・

 顔に水滴が当たる。


 次第に・・雨は降り出した。


 楓は傘を開き挿した。


【楓がこうして現代の道具を使いこなせるのも葉霧や優梨、夏芽。そして鎮音が教えてくれているからだ。】


 途端に酷い土砂降りだ。


(うわ・・こりゃすげぇや。)


 風は然程、強くはないが雨はスコールの様に土砂降り。傘を挿していても濡れる。


(雨は連れて来る……)


 楓は住宅街で立ち止まった。


 そのに。


 背後・・に感じる悪寒。

 振り向くと電柱の側に黒い影。


(・・・オンナ・・・?)


 髪の長い女性に見えた。

 ゆらっ・・と、電柱の側に立つその影は。

 横向きのその佇む雰囲気がそう見えるのだ。


 黒い影は手を伸ばす。


 まるで指を指しているかの様だった。


 楓はその指の指した方に視線を向ける。


 屋根の上だった。

 何ら変哲の無い一軒家の屋根の上だ。

 そこに蝦蟇がいたのだ。


 大きな蝦蟇は棘の様な牙を持つ口を開きそこから長い紫色の舌を垂れていた。


 ギョロギョロと両眼は動く。

 じっ。と、楓を見据えていた。


「?」

(あの影は?)


 電柱の側にいた影はいなくなっていた。


 視線を屋根に向けると蝦蟇の姿もいなくなっていた。


(は??なんだ??)


 楓は目をぱちくりさせていた。


(な・・なんだったんだ?姿を見せただけか??)


 楓は葉霧の傘を握り歩きだした。


 強い雨は辺りを靄で覆う。

 一向に治まる気配の無い雨。


 灰色の世界が広がっていた。


(気味悪りぃな。それにしても・・ってのは強ち・・ウソじゃねぇんだな。ここには集まってくんのか。あっちこっちから。)


 東京都はかつてと、呼ばれていた。そのせいか、都内各地には怪談話も多い。闇に紛れ棲むあやかし達にとって棲みやすい土地なのかもしれない。


 住宅街を抜けて大通り沿いに出ると楓は立ち止まった。


 通行人が多いのだが・・


(な・・・なんだ??あやかしばっかじゃねぇか!)


 それだけでは無かった。


 通行人に紛れ歩くのは、人間ではない者たちだ。中には、幽霊と呼ばれる者達もうようよと浮いている。


 火の玉や提灯お化けも空を浮く。

 傘を挿し歩く通行人をすり抜けて行き交うのは紛れもなく人で無い者達だ。


 獣人・・。

 鬼面をした和服姿の者など、姿カタチは様々だが歩道には人と同じ様に溢れ返っていた。


(・・・妖大行進ですか??)


 人の眼に触れたら大パニックになりそうなビジュアルの者達ばかりだ。

 特に多いのは、獣人や爬虫類系の姿をした者だった。


 楓の横を素通りするろくろ首。

 その後ろからてんてん。と、跳ねてくるから傘おばけ。昔からとして、名を知られている者達もいる。


(・・・まー。害はねぇんだろうけど、雨……か。雨に紛れて出てきたのか。ああ。。そうゆうことか。)


 この靄の掛かった灰色の世界に彼等は彷徨い歩く為に出てきたのかもしれない。


(うわ。コッチもか・・)


 商店街の入口に差し掛かると楓は思わず足を止めた。


 ぼーっと街灯に照らされる商店街の通りもお客に紛れて妖たちが彷徨いている。


 何をする訳でなくただ、通りを歩きキョロキョロと辺りを見回している。

 その間、人間が通るとすり抜けていく。

 その身体を。


(ヒトに見えねぇ奴らばっかだな・・)


 大きな身体に白い着物を着た魚人。

 トゲトゲしい頭をしたカメレオンの顔をした者。皆、二足歩行だ。


 楓は歩きだした。


(葉霧が居たら大変だな。目を回す。慣れてねぇからキョロキョロするだろうからな。)


 横断歩道を歩き出した辺りで、雨は少し弱まった。


 傘を挿し歩く人々と混在して歩く妖のその様は、奇妙で異様であった。



 ✣           



「降ってきたな………」


 各務学園高校の廊下を歩きながら窓の外に視線を向ける。


 外は雨だ。


「葉霧。見廻りすんだろ?」


 窓の外を見て立ち止まった葉霧に灯馬は声を掛けた。


「ああ。」

(……楓……。大丈夫か?)


 廊下を歩きながらスマホを手にした。


(お。珍しいな。あんまスマホ見ねぇのに。

 コレは……❨葉霧彼女説❩濃厚か??)


 隣で灯馬はにやにや。

 ちらっと覗く。


「お前………。覗くな」


 葉霧はスマホをズボンのポケットにしまった。


「なんだよ?いいじゃねぇかよ~……。王子様の恋愛模様とか気になるんだよ。」

「そんなんじゃない。」

(相手は鬼だ。聞いたらビビるだろうな。コイツ)


 葉霧はふぅ。と、息を吐く。


「そうか?けど………なんか楽しそうだぞ?葉霧。」

「…………?」


 葉霧は目を丸くした。

 灯馬は葉霧のその目を見ながらやはりにやつく。


あった。そんな顔してるよ。ここんとこの葉霧は。」

(大体……澄ましたツラしてっから~……。

 良く言えば……温厚で当たり障り無く……何でも卒なく熟す。けど……悪く言うとイマイチ……人間味欠けるっつーか……。無感情って言うか………。ガキの頃からだけど。)


 灯馬は葉霧をずっと見てきた。

 一緒に過ごしてきた。


「そう見えてるなら……眼科に行け。」

「は??なんだそれ?」


 フッ………葉霧は笑う。

 少し笑みを浮かべる程度に。


(楽しそう………か。退屈はしていないのは事実だ。)



「さっさと終わらせる。今日はがある。」

「へ??だから。その予定とやらを俺には教えてくれてもいいんじゃねぇの??葉霧くん。」

「灯馬は……口が軽いからな。」


 葉霧はさっさと廊下を歩く。

 それを追いかける灯馬。


「いやいや。クチ重いっすよ!」

「信用出来ない。」


 優梨からメールは貰っている。


【楓が迎えに来ることを】




「雨……やまねぇな。」


 灯馬は職員室から出ると窓の外の雨にそう言った。

 窓にまで雨は打ち付けていた。


 葉霧は職員室のドアを閉めた。


「灯馬。傘はあるのか?折り畳み持ち歩くタイプじゃないよな?」


 廊下を歩きながら葉霧はそう聴いた。

 二人とも鞄を持ち帰る支度は万全だ。


「ん?俺は【水月《みつき》】がいるからな。」

「ああ。そうだったな。良く出来た嫁だ。

 本当に。勿体無い。」


 職員室から出て廊下を歩き階段に向かう。

 放課後とあって、すれ違う生徒達も多い。

 階段を駆け下りてく女子たちの笑い声が響く。


「勿体無いってことねぇだろ。」


 灯馬は少しムッとした様な表情をしていた。


「ねぇねぇ。昇降口にいたよね?」

「制服じゃなかったけど、何処の学校の娘だろ?」

「すっごい。キレ~な娘だったね。」


(………もう来たのか?)


 階段を上がってくる女子生徒たちの声だ。

 葉霧は耳を傾けた。


「他校の女子?あ。まさか!」


 灯馬は葉霧をちらっと見ると、途端に階段を駆け下りた。


「あ!コラ待て!灯馬!」


 葉霧は慌てて追いかけた。


(か!?)


 あっとゆう間に階段を駆け下りてく灯馬とそれを追いかける葉霧。


 段飛ばして軽快に駆け下りた灯馬は昇降口に向かう


 昇降口に傘を挿してる少女。

 それは直ぐに目についた。

 制服姿ではないので、目立つ。


「お。アレか」


 灯馬は下駄箱からさっさとローファー出した。


「灯馬!」


 葉霧は酷く慌てた顔をしながらさっさと靴を履き替え昇降口に向かう灯馬を追うカタチになる。


(こうゆう時はな。)


 灯馬の出歯亀根性は、侮れない。


「葉霧の事。待ってんの?」


 灯馬は昇降口に立つ傘を持った少女……に、声を掛けた。振り向くのは……楓である。


(うわ!すげー美人じゃん!しかも眼が蒼い!へぇ。葉霧ってこーゆう姫様っぽいのが好みなのか。知らなかったな~……。けど。胸はねぇな。)


 とりあえずに、目がいくのであろうか。じっ。と、胸元を見ていた。


「誰だ?お前………」


 楓は灯馬を見上げていた。


(また……ハデな人間だな。そして。)


「灯馬!」


 葉霧が慌てて出て来たのはそんな時だ。


「おー。美人じゃん。で?何ちゃん?」


 灯馬は葉霧を見るとにやにや。からかいたくて仕方がない。そんな表情である。


「楓だ。」


 葉霧は楓の隣に立つと傘を取った。


「へー。楓……。そりゃまた可愛い名前だこと。」

(え??マジなの??こんな葉霧の照れた顔。見た事ねぇけど)



 葉霧は少し頬が赤い。

 普段の涼し気な表情に頬が紅く……若干。

 ムキになってる様子が伺える。


「楓。よく来れたな。大丈夫だったか?」

「ああ。優梨さんに地図もらったんだ。」


 楓は葉霧に地図を渡した。


「ああ。解りやすいな。さすがだ。」


 葉霧は地図を眺め微笑む。


(おいおい………。マジかっ!まじじゃん!

 なにその微笑ましいツラ!え!?なんかすでに……ちょっと一線越えてね??)


 葉霧と楓のやりとりに灯馬の顔はとても驚いていた。


「雨……ちょっと弱くなった。」

「じゃあ。帰ろう。」


 葉霧は地図を鞄の中にしまう。


「あ。その紙袋。持つよ。」

「ああ。」


 葉霧は楓に紙袋を渡した。

 すんなりと受け取る楓。


(何を見せられてんだ??俺は。ラブラブじゃん。)


「灯馬。またな。」

「え!?てか。」

(紹介しろよ。と言いてぇが………邪魔できない。あの二人の間に入る勇気がねぇ…………)


 こうして連れ添って歩く葉霧と楓を見送る事になった灯馬であった。



「あの人間は………葉霧の仲間か?」

「幼馴染みだ。幼稚園から一緒なんだ。」

「おさななじみ??よーちえん??」



 傘を挿し並んで歩く。

 校舎から離れ校門に向かう。

 雨は……それでも降り続いていた。



「幼い頃からずっと一緒なんだ。わかるか?」

「あー。それならわかる。なるほどな。」


 楓はそう頷く。


(ん?見られてる??ん??なんだ??)


 楓は視線に気がつく。

 キョロキョロと見回した。


 辺りで傘を挿して同じ様に校門に向かう女子生徒達の姿が見えた。

 だが、コチラをじ~~っと見ている。


 その視線はとても冷やかであった。


「葉霧。なんかすげー見られてんだけど。

 何だ?睨まれてる。オレの格好が変か?あ。角、見えてるか?」


 楓は葉霧に聞きつつキャップの頭の上の部分に触れる。満月から離れたからか、角は少し小さい。


「気にしなくていいよ。それに……角は見えてないし。その服は一緒に選んだだろ?似合ってるよ。」

「え………?」

(な………なに?今の…………)


 どきっ……。


 と、させられたのは言うまでもなく……。


 楓の胸の鼓動は少し速くなっていた。


 葉霧を見上げれば優しい笑みを浮かべている。穏やかでいつもよりも優しい目をしていた。


(うわ!ヤバい………。なんかドキドキするぞ。葉霧の顔なんていつも見てんのに。)


 顔が赤く染まってゆく。


「楓。迎えに来てくれてありがとう。

 助かったよ。」


 葉霧のその顔はとても綺麗でいて優しい微笑みだった。それに加えてこの甘い雰囲気。

 いつもよりも甘く響くトーン。


(な………なんなんだ?か??

 コイツは……魔性だ。オレは知ってる。

 は、ヤバいんだ!!)



「どうした?」


 顔は真っ赤だが言葉を発せず俯いて歩く楓。

 葉霧は心配そうに声を掛けた。



「別に…………」

(くそ~~。ドキドキする。このイケメン!!甘いのは顔だけにしろよ!)


 葉霧の甘い攻撃に心を持っていかれそうになった楓であった。


(耳まで赤いな………。可愛い………)


 葉霧は葉霧で……少し違う感情が自分の中に滲み出ているのを感じていた。



 ✣            



 学園を出ると葉霧は目を丸くした。


「これは………な。」


 葉霧の眼は……碧色に煌めいていた。

 街中に降りてくると自然とその眼は変わった。


「すげぇよな。大行進だ。」


 街中の景色は変わらない。

 あやかし達は、彷徨いていた。

 中には唐傘を挿してる者もいる。


「目が回りそうだ………」

「あ。やっぱり??」


 交差点の人と妖の波に葉霧はただ目を丸くしていた。


 信号待ちの交差点。

 葉霧の隣にふらっと立ち寄ったのは大きな鳥の顔をした鳥人であった。


(……二足歩行の鳥………。それにスーツ………)


 インコによく似た顔だ。

 だが、着ているのはスーツ。

 それにビニール傘を挿している。


 手元は鳥の羽だ。

 器用に傘を持っているし、肩から鞄を下げている。足元は鳥の足そのものであった。


(あやかし会社とか……あるんだろうか?)


 葉霧は視線を戻した。

 鳥目がぎろっと見てきたからだ。


 楓の隣には狸がいる。

 よく見掛けるあの置物だ。


 その姿をした狸が立っていた。


「雨はイヤだよ。」

「だなー。」


(え??会話してる??)


 葉霧は楓と狸の会話に目を丸くした。


「青だぞ。あんちゃん。」


 その声に葉霧はハッとした。

 隣の鳥人だ。声を掛けてきたのは。


 信号は青であった。

 鳥人はすたすたと歩いて行ってしまう。


(……人をすり抜けてる。そうか。他の人間には視えないし、触れられないのか……)


 ようやく……思考回路も働いた。

 そして足も。


 交差点を渡る。


「久々に来てみたけど……都会はすごいな。

 すっかり変わっちまってるよ。」

「へー。そうなのか?」

「ああ。こんなに人も多くなかった。それにもっと……ごちゃごちゃしてたな。綺麗になったよ。」


(相変わらず……会話してるな。)


 隣では狸と楓が会話をしている。

 狸の頭には葉が乗っている。


 大きな蓮の葉だ。

 傘代わりなのかどうなのかは定かではない。


「オレは最近……来たからわかんねぇんだ。」

「そうかい?暫く居ると思うから寄ってくれよ。」


 交差点を渡り終えると狸は楓に指差した。

 直ぐ側のビルだ。


「ん?」

「ここの三階にいる。メシ食うとこだ。中々美味いぞ」


 五階建てのビルだった。

 狸が指を指したのは。


「わかった。今度行くよ。」

「おー。待ってるぞ~」


 狸は手を振るとビルの中に入って行った。


「何で仲良くなってるんだ?」


 葉霧は少し呆れ顔だ。


「情報収集ってのも必要だぞ。葉霧。」

「何の?」

「あやかしの情報だ。悪さしてんのいたら

 ぶっ飛ばす。」


 歩道を歩きながら楓は拳を握る。


「何だそれ?世直しでもするつもりか?」

「葉霧は退魔師だろ?もーちょいやる気だした方がいいぞ」

「末裔だ。」


 歩道を並んで歩く二人の後ろで・・・


 ズズズ・・・


 地面から黒い影が頭を出し更に大きくゆらっと立ち昇った。


 黒い影は地面から飛び出す。

 影は浮いてそのまま消えてゆく。

 まるで・・・煙のように。



            ✣


 その日の夜のことだった。


 蒼月寺に突然の訪問者が来たのは。


「御免下さい」


 玄関の戸を叩く音とその声が聞こえる。


「あら?誰かしら。」


 和室でいつもの様に食事をしていた時だ。

 優梨が腰を起こそうとした。


「オレが出るよ」


 それを止めたのは楓だ。

 何しろ・・でもある。


 楓は颯爽と和室から出て行った。

 とりあえずフードを被る。


 和室では怪訝そうな顔をしている残された面々。葉霧は壁の柱時計を見上げた。


(8時・・か。)


 時刻は八時ちょうど。



 楓は玄関に出てくると戸の向こうに数人の影に視線を向けた。


「はい?どちらさん?」


 声を掛ける。


 一瞬・・戸の向こうで間が空いた。

 だが直ぐに


「鎮音さん。いらっしゃいます??」


 女性の声であった。

 その声は少し・・焦った様にも聴こえた。


 楓は玄関から降りるとサンダルに足を通した。


「楓。ちょっと待て」


 止めたのは葉霧だ。


「?」


 振り向いた楓は自分の肩を掴む葉霧に驚いた。


「え?来たのか?」

「俺が出るから。」


 葉霧はサンダルを履くと、戸に向かう。


(なんでだ??)


 きょとん。する。


 葉霧は鍵を開けると戸を開けた。


 がら・・・


 戸の向こうでは女性が数人。

 それに男性も数人いた。


「どうかしました?」


 緊迫している表情の人達に葉霧はそう聴いた。


「鎮音さん・・いますか?息子が・・」


 一番手前にいる女性だった。

 そう言うと顔を覆って泣き出したのだ。


「すみません!夜分に・・。」


 その隣にいた男性が身を乗り出した。

 スーツ姿で慌てて出向いて来た様子が伺える。


「とにかくどうぞ。」


(近所の人達だな・・)


 身覚えのある顔ばかりであった。

 葉霧には。


        



















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