Dream Meets

アルミのみかん

第1話 夢の中

「ここは……?」


目を覚ますと、そこは森の中だった。

今は仰向けになっているので上しか見えていないが

木しかないのであればここは森ということで間違いはないだろう。


身体を起こしてみると、何かが上に乗っていたのかごろんと何かが転がった。

見ると、ゲームでよく見るスライムだった。

スライムも寝ていたようで今の行動で起こしてしまったらしい、急に起こしたからかこちらを睨んでいる。

スライムと言えば基本的には最弱のモンスター、ただの人間でも容易く倒せるものである。


ならば、とその辺にあった枝を拾い武器としてスライムに対して構えた。

スライムも臨戦態勢になりこちらに突進をしてきた。

どうせ死ぬことはないだろうとそのまま受けた後、持っていた木の棒で突き刺すとスライムは霧状になって消えてしまった。

痛みは殆どなかったのでやはりこのスライムは弱いモンスターらしい

ここがどこかはまだわからないが、とりあえず道を進んで見ることにした。



森は一本道で、スライムを枝で倒しつつ進んでいくと大きな花畑に出た。


花びらの舞う綺麗な風景の中に赤、青、黄色、オレンジ 色んな花が咲き誇っていた。

あまりの絶景に数秒、見惚れてしまった。


真ん中に寝転がって目を瞑ると、優しい風とそれに乗って流れてくる花の香りがとても心地良い。

周りにはモンスターもおらず、一休みするにはちょうどいい場所だった。

森を進み続けて疲れていたので、睡魔はすぐにやってきた。

そのまま心地良い睡魔に身を委ねようとした時


「おーい、大丈夫ですか?」


「うわぁ!」


突然頭上から声をかけられ驚いて変な声をあげてしまった。


「ひゃ!なに!?」

相手も驚いてしまったようで変な声をあげてしまっていた。


「ご、ごめん。びっくりしちゃって」


「あ、あはは……こちらこそいきなり声かけてごめんね」


「ううん、大丈夫。それで、どうしたの?」


「散歩していたら道端に青い塊が落ちてたからそれを辿ってきてみたの、そうしたら人が倒れてたから声をかけたの」


そう言って彼女は持っていた籠の中に入った小さな石のような青い塊をこちらに見せてきた。


「それは?」


「モンスターが消滅したときに落とす所謂この世界で言う通貨みたいなものよ。これは殆どスライムのものね」


「それ多分僕のだ」


「やっぱり!それで、身体は大丈夫なの?」


「平気平気!スライムくらいじゃなんともないよ」


「そうじゃなくて、あなた、倒れてたじゃない」


彼女は先程の寝かけていた時の僕の事を心配していたらしい。


「あれはこの花畑がの寝心地がすごくよくて、ひと眠りしようと思ったんだ」


「そう…よかったぁ」

彼女はそう言ってホッと胸を撫でおろしていた。会ったばかりなのにここまで心配してくれるのは悪い気がしない。

彼女はとてもいい子だな、と思った。


「君は」


「アイラ」

質問をしようとしたら謎の言葉で止められてしまった。


「アイラ?」


「私の名前、君とか他人行儀じゃない。ここで会ったのも何かの縁だと思うの。あなたの名前は?」


「大地、あずま大地だいち


「ダイチね、よろしく! それで、さっき何か言いかけてたみたいだけど」


「ああそうだった、アイラが向こうから来たって事はこの先には街があるの?」


「そうだよ、私の暮らしてる街があるんだ。良かったら今日は私の街の宿屋に泊まっていく?」

と、彼女……アイラが提案してきた。まだこの世界の事もわかっていないので非常にありがたい。

「ありがとう!お言葉に甘えさせてもらうよ」


それからアイラの住む街へと向かう道すがら、彼女にこの島に来たばかりであることを告げ、この世界の事を色々聞くことにした。

「この世界はね、4つの大陸に分かれているの。ここからずーっと北にあるのがネイロス、そしてずーっと東に行くとベトール、ずーっと西に行くとタソス、そしてそして!私達が今いるこの島がペウスだよ!」


彼女は楽しそうに目をキラキラとさせながらそう教えてくれた。


途中スライムが何度か出てきたが、最早敵ではないので出てくる度に倒し、落としていった青い塊は彼女の持っている籠に入れていった。

「そうそう、この石みたいなのはね!街に行くとお金と換金してくれるんだよ。強い敵を倒すともっとたくさんのお金が手に入るけど、この量のスライムだと今日の宿代くらいかな?」

そう言ってもう籠いっぱいの青い塊を見せながらアイラは説明してくれた。


そうしているうちに森を出た。森を出ると正面に街のようなものが見える。


「あそこが私が住んでる街だよ!ここまで来るともうすぐだよ!いこっダイチ!」


そう言ってアイラは僕の手を持って駆け出す。

ちょっと恥ずかしかったけど、僕もその手を握り返し一緒に街へと向かった。

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街へと着く頃にはもうすっかり夕方になっていた。

僕とアイラは早速換金所に向かうことに。


「いらっしゃい!……おお、アイラちゃんじゃないか。今日は彼氏と一緒か、熱いねえ」

換金所に着くなり店頭にいたおじさんが僕らを見てからかってきた。


「そんなんじゃないです!もう!早く換金してください!」

そういうなり籠いっぱいの塊を店主に押し付けるアイラ


「おお、いっぱいリム魂を拾ってきたな。でもアイラちゃんはスライムを倒す必要もないレベルだったと思うがどうしたんだ?」

どうやらこの塊はリム魂というらしい、そしてこの世界にはレベルという概念があるようだ、話を聞く限り彼女の方が僕よりずっと強いらしい


「ダイチがスライムをたくさん倒していたからそれを私が回収していたんです」


「君はダイチというのだね、俺は換金所のニックだ、よろしくな」

ニックという男はそう言って手を差し出してきた。

「よ、よろしくお願いします、ニックさん」

そう言ってこちらも手を出し握手をした。

ニックさんはちょっと待ってなと言い少し待つと袋をもって戻ってきた。

「ほらよ、これが今回のリム魂の分の100リムだ」

ニックさんから報酬を受け取り、ズボンのポケットにしまう。

お金の名前もリムというらしい。

「お金は受け取ったわね、じゃあ宿屋に向かいましょ」

そう言ってアイラは歩き出した。

「ありがとうございました!また来ます!」

おじさんにお礼を言い、僕もその後を追った。

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「あら、おかえりアイラ。遅かったわね」

宿屋に入ると受付の人がそう言い僕らを出迎えた。

「ただいま、ちょっと森の奥まで散歩に行ってたの」


「そう、森の奥は危ないからあまり行っちゃだめよ?」

「わかってるって!もう……お母さん心配性なんだから」

「そりゃ心配もするわよ、アイラは危なっかしいんだから」

「すいません、今日ここに泊めて貰いたいのですが」

仲の良い家族の会話をずっと眺めていたい気持ちだったが、ずっと突っ立っているのも邪魔になりそうなのでアイラのお母さんらしき人に声をかけた。

「あら、ごめんなさいね。あなたがアイラをここまで送ってくれたの?」

「い、いえ、むしろ僕は案内してもらったほうで」

「案内?」

「はい、森の中で彷徨ってたのをアイラさんに助けてもらったんです」

「そうだったのね。ここまで疲れたでしょう。アイラの友達ということでまけといてあげるから今日はゆっくり休みなさいな」



アイラのお母さんのツキノさんに本来の金額の4分の1で泊まらせて貰う事ができた。

寝る準備を整えいざ寝ようとした時


扉をノックする音が聞こえた。

「ダイチ、まだ起きてる?」

その声はアイラのものだった。

「うん、まだ起きてるよ」

そう言うと静かにドアを開けてアイラが部屋に入ってきた。

「ごめんね、夜遅くに」

「いいよいいよ、どうしたの?」

そう聞くと彼女は一度大きく深呼吸をし、そのまま勢いよく

「ダイチに折り入って、お願いがあるの」

と言った。

「お願いって?」

「私と……」

彼女はもう一度大きく息を吸い込み

「私と一緒に、冒険してくれませんか!」

と、夜にも関わらず大きな声で彼女は言った。

言った後にしまったと手を口に手を当てている仕草がとても可愛らしい。

「いいよ、一緒に冒険しよう」

いきなりの事に驚いたものの今日の彼女との小さな冒険がとても楽しかったから迷うことはなかった。

「ありがとう!嬉しい!」

そして彼女は笑った。太陽のような眩しい笑顔だった。

その素敵な笑顔に僕はずっと見惚れてしまっていた。

「っとと、長居しちゃったね、そろそろ私も寝るよ。おやすみ、ダイチ。また明日ね」

「おやすみ、アイラ。また明日」

そうしてアイラと別れた後、布団に入る。

その瞬間疲れがどっと押し寄せ、すぐに眠りに着くことができた。

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目覚ましの音で目が覚める。

時間は朝7時、まだ眠いからもう少し寝ていたい…と思うのだが


「大地!早く朝ごはん食べないと学校遅れるわよ!」

下から母さんのうるさい声が聞こえるので渋々起きる事にした。

そのままにしておくと部屋にまでやってくるので、それは勘弁してほしい。

思春期の男子の部屋にはなるべく親は入れたくないものだ。

制服に着替え、通学カバンの中身を確認しそれを持って下へと降りる。

用意されている朝食はご飯、目玉焼き、味噌汁というありふれた家庭の朝食だ。


それらを食べ終え、玄関で靴を履き

「いってきます」

「はーい、いってらっしゃい」

学校へ向かうのだ。

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