第12話〜姫様はやってしまいました〜
「ラットプントだと!!」
私の言葉に信じられない顔をする面々を見て、私は満足気に頷きます。
「えぇ。信じられないのなら、私の王家の印をここで見せてもいいです。」
そうして私は自身のスカートをめくりあげようとするのだが、そこでリーフィマークさんから待ったが入る。
「ま、待ってください!あなたが王家の人だとは認めます!ですから、・・・あの女性なんですから、男性の前でそういうのはやめた方がいいかと。」
「私もやめた方がいいと思います。だって、ここには野獣がいっぱいいますもの。」
そうやって、男性陣を見る同じくS級冒険者でエルフのネルファさんがそう続く。
その視線に男性の皆さんがやるせない表情をします。
「ありがとうございます、リーフィマークさん。ネルファさん。ですが、何もなしでは示しがつきません。変わりにこれを出しましょう。」
そう言って私は懐に閉まっていた一枚の紙を取り出す。
「なるほどな。」
その紙が気になって一番私に近かったこの中でたった二人しかいないSS級冒険者のホワイトさんが、その紙のある部分に着目した。
「そうです。これは国王からの正式な依頼であることを証明する依頼書。右上の印は、王家の証です。この依頼書を私が持っているということで、私が王家と繋がりがある証拠になると思います。」
「確かにそうだな。君が王家の血をもし、偽っていたとしても君が王家と繋がりがあるということだけは信じられる。」
「ホワイトさんありがとうございます。
改めて皆さん。私がここにいるということは、今それだけこの国が危機的状況にあるということが分かっていただけたと思います。だから・・・私の大好きなこの国を、皆さんには守っていただきたいのです!」
わたしの演説に拍手が巻き起こる。
その拍手に私は思わず涙を流しそうになって堪える。
「ありがとうございます!では皆さん、いえ、この手をとってくれるこの国の
「じゃあ俺からだな!嬢ちゃん、いやミレイナ様の話は聞き受けた。
この《ビーストマスター》アルガス。ラットプント王国に命を賭けよう。」
「《大物狩り》オルトモアだ。俺も姫様のために尽くす。」
「それじゃあ私も〜!《神速の脱兎》ラフィットでーす!」
「《神弓の乙女》ネルファ。私も参加させてもらうわ。」
「げひひ!《ポイズンソーサラー》ムルサンプ。報酬は期待させてもらうんだね。」
「・・・《紛れし者》モル。」
『ガラガラガラ。(《アンデットキング》マスロル。不死身の軍団の力を貸そう。)』
「《ライブラリーノーレッジ》リーフィマーク。私は戦闘系じゃないけど、支援頑張るよ!」
「《科学者》カワじゃ。同じく非戦闘員じゃが、武器の作成は任せい。」
私の言葉は届いた。あとは最後の二人。
「え、えーっと《魔帝》ミディです。」
あと一人・・・!
「ホワイトさん。最後はあなたです。返事を聞かせてください!」
「・・・・・・断る。」
「・・・・・・・・・はぇ?」
私はとても王家の血筋として絶対に出していい音ではない声を発してしまいました。
でも、しょうがないじゃないですか・・・。
sideホワイト(ユマ)
「ちょっ、ちょっと待ってください!ホワイトさん何故断るのですか!?」
「理由は簡単だ。お前は一つだけミスをした。」
そう、ミレイナさんは忘れていることがある。一つだけ、たった一つだけ些細なことだったけど・・・。
でも、僕にとってはとても重要で、それだけには違和感が隠せなかった。
「わ、私が何をしたのですか!?教えてくださいホワイトさん!!」
「高貴さが抜けてるぞ。ミレイナ。さっきの威厳と纏ったオーラはどうした?」
「あ、あなたは・・・!」
「悪いが俺は抜けさせてもらう。だが安心しろ。ミディ参加するみたいだ。彼女の強さは俺が保証しよう。」
「ま、待って。」
「ホワイト。悪いがこの依頼は」
「その先は言わない方がいいぞギルドマスター。」
「「「「!!!?」」」」
僕はここにいる全員に威圧をかける。それも特大な。
有無を言わせないために。
『全く、私のマスターは優しいんだか意地っ張りなんだか。ここまで来てまだ妹様方を気にしていたなんて。ですが、ある意味ミレイナさんは一番間違ってはいけない失敗をしてしまいましたね。』
僕はそうして会議室を出ようとする。だが、彼女はまだ諦めていなかった。
「・・・待ってくださいホワイトさん。私はどんな失敗をしてしまったのですか。教えてください。」
「自分で考えろ。だが・・・今回の俺の依頼の放棄は、主に事情だ。」
「事情・・・ですか?ホワイトさんにそんな事情・・・はっ!ま、待ってくださいホワイトさん!どうかもう一度話を!」
「無理だ。こちらもちょうどよかったのでな。利用させてもらおう。」
僕はそのままドアを閉めて帰ることはなかった。きっと最後の言葉で彼女は気づいただろうから。
ふっ。さ〜って、今から帰るよ〜マリアル、コハル〜。お兄ちゃんが帰ってくるからね〜。
そして、そんなホワイトの姿に気づいた者はいない。
sideミレイナ・ラットプント
誰もいなくなった会議室で、私は何時間も唸っていた。
「私はなんて失態を。二つ名持ちの冒険者の情報は全て覚えていたはずなのに・・・!」
それに、よりにもよって、この国最強の冒険者である《白王の仮面》ホワイトを仲間に加えることができなかった。
「父上に合わせる顔がない。」
私はさらに顔を机に押し付け、唸り続ける。
「今回だけは・・・今回だけは、私は絶対に間違ってはいけなかったのに。このままでは帝国に・・・。」
私の顔からはやがて涙が出てきます。そう、その理由はとっても馬鹿らしくって・・・
「あの方がシスコンなのを忘れていました・・・。」
そう、この国最強の冒険者は妹が大好きすぎるという困った性格をしていたんです。
「それなのに私は、本来強制するはずだった依頼をわざわざ自分から取り下げるような行為を・・・。アァーーーー!!」
ホワイトさんは知らない。この戦争はホワイトさんがいなければ絶対に王国が勝利することがないことを。
「私の恩恵さえ話していれば・・・。」
私の恩恵は【神の伝達者】。これから起こる最悪の未来を予想して、それの対処法を教えてくれる恩恵。
「私はこれからどうすれば・・・。」
恩恵で見た未来は、勇者に私の父、国王が殺されるその時、銀色の騎士が突然現れて、勇者の剣を受け止めるというもの。
銀色の騎士なんて、ホワイトさん以外に目立って強い人なんていない。ーーーそれは、王直属の騎士にだって。
「こんなことを言ってしまえば、私は首をはねられますね。いえ、もう私ははねられる所ではないと思いますが。」
でも、あの方が本当に国と妹を天秤にかけて、妹を選ぶなんて。
「重度、あれは重度の病です・・・。」
その時、会議室の扉がノックされる。
「・・・どうぞ。・・・あ、あなたは!?」
「失礼。あら、ミレイナ。冒険者の皆さんのスカウトに失敗したそうじゃない?これは王位継承がとっても遠のいたわね〜。」
私の前に現れたのは、私のひとつ上の姉である
ナハトア・ラットプント様でした。
「私は王位継承権など欲しくはありません。私は王家の血筋の前に、ラットプント王国の民、そしてS級冒険者です。ナハトア様には関係がないでしょう?」
「あらそうね。まぁそもそも、メイドとの間にできた存在自体が王家の恥さらしであるあなたには、そもそも関係の無い話ですわね。」
オーッホホホ!と、高らかに笑うナハトア様に私はこう思う。
(あなたこそ、王家の恥さらしでしょうに。)
「何〜?その目。言っておくけど私はあなたをこれから連行するために、ここに来たのよ?」
「連行!?な、何故ですか!」
「さぁね。私が知る由もないけど、大方今回の失敗で、お父様もあなたの王家としての振る舞いに嫌気が差したのではなくって?」
「お、お父さんはそんな方ではありません!!」
「お父様よ、ミレイナ。あぁ、可哀想に。こんな子を世に出してしまって、さぞかしお父様の苦労が伺えるわ。」
そんなこと、一切思ってないクセに・・・!
「まぁ、そんなのはいいわね。・・・連れていきなさい。」
その瞬間、後ろに控えていた騎士たちが、私を拘束しようとこちらに向かってくる。
「いや、そんなお父さんが。そんなこと!」
その時、私の恩恵が発動した。
恩恵が見せたのは、どこかの森の風景と、その先の広々とした一切の濁りがない美しい湖の姿。
そして、そこにある見慣れない建物。
「こ、これは・・・!?ーーー私はまだ捕まる訳には行かない!!」
油断した騎士たちを私は剣で切る。そして、ナハトア様の前に一瞬で移動した。
「な!?み、ミレイナ。遂に本性を表したわね。騎士に怪我をさせるなんて重罪よ!あなたには死刑が待っているわ。だ、だからその剣をしまいなさ」
最後まで聞かず、私はナハトア様の腹に拳を当てる。
「うっ!あ、あなたは終わるわ。終わるのよ!もし捕まってみなさい。私が、私がーーー」
そしてそのまま、彼女は倒れた。その音に気づいたのか、下から登ってこちらにやって来るいくつもの足音が聞こえる。
その音を尻目に、私は窓から冒険者ギルドを脱出する。
「ホワイトさん、この責任取ってもらいますからね!」
そうして私は闇の中に姿を暗ます。
私がいなくなった部屋でやがて悲鳴が聞こえると、冒険者ギルドに人が集まっていき、夜の王都は騒乱に包まれた。
そして、私の名前は後日、王国の反逆者として出回ることになった。
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