第9話〜成長した二人〜
「それじゃあ行ってくるねマリアル、コハル。」
「「行ってらっしゃい!」」
そう言って、兄さんがワープを使って今日も王都に出かけます。兄さんはミディと言う女性と冒険者パーティー《マリア・ハル》として王都では有名だそうです。
正直とってもその名前を聞くと恥ずかしくなります。
兄さんは意地悪です!
「コハル。兄さんが行ってる間に私は近くの魔物を狩るつもりだけど一緒に来る?王都の学園に入るのも近いし。」
「私はいいよ〜。今このゲームのラスボスを倒してる途中だから〜。」
今、コハルがやってるのは兄さんが作ったゲーム。
いつからか、コハルはそれに没頭するようになりました。
「そんなことしてたら太っちゃうよ?」
「大丈夫〜私太らない体質だし〜、それにお姉ちゃんも太らないんだから一緒に遊ぼうよ〜。」
そう言って私につぶらな瞳を送ってきます。
「うっ!コハル、私をこれ以上誘惑したら、お姉ちゃん止められませんよ?」
そんな忠告を知ってか知らずか、コハルは両手を広げてこう言います。
「お姉ちゃんなら・・・来ていいよ。」
「ん、んーーー!!!」
私は抑えられなくなった衝動で妹をもみくちゃにします。
「はあぁ。コハル〜可愛いの〜、ここがええのかここが!」
「はぅわ!お姉ちゃん、そこはダメだよ〜。」
決して家族の境界線は破りません。私は今、コハルの頭を撫でているだけです!でも、長年コハルの頭を撫でてきた私なら、コハルがどこを触って喜ぶのか全て分かります!
「はわわわわわ」
「ここがええんか?ここが!!」
「お、お姉ちゃん、ら、らめぇ〜。」
その声でさらに興奮した私はさらにコハルをよしよしよしよしします。しばらくそれが続いたのですがーー
「ここか!?ここがか、ここ・・・はっ!ご、ごめん!コハル!」
と、ここで私は我に返ります。
「お、お姉ちゃんもっと・・・はっ!いや、大丈夫だよ。」
あれ、今コハル何て?いや、それはいいです。
早く兄さんが帰ってくる前に行かないと!
「じゃあ行ってくるね!」
「あっ!お姉、ちゃん。うぅ、もう少しだけやって欲しかったな・・・。」
そんなコハルの声は勢いよく扉を閉めて、外へ出た私には聞こえませんでした。
「「「「ガゥボゥ!!」」」」
「はぁ!!」
森の中、二つのモノたちの衝突音が響く。
「キャイン!!」
「14!」
「「ガバゥ!!」」
スパスパ!!
「「ギャゥ!!」」
「16!!はぁー、せい!!」
「ギャィィ!!」
「17・・・。」
しばらくして、私は今回の成果を眺めます。
「ふぅ、まぁワイルドウルフはこんなものでしょう。そろそろ兄さんがいつかに倒してたビックボアを倒しに行こうかしら?」
マリアルの前にはワイルドウルフの群れが倒れていた。その全てを倒した彼女は、自身の手を見る。
「まだまだ・・・か。」
マリアルはそう言うが、ワイルドウルフの討伐ランクはD級。
群れを成すと、C級上位に入る討伐ランクになり、12歳直前の恩恵を授かっていない少女が、倒せるモノじゃない。
ただ、事実。マリアルはこのワイルドウルフを10歳の頃から、討伐の訓練として倒してきていた。
その訳は一途にユマの存在である。
マリアルは約5年前から、この森に入っては、自身を鍛えたり、魔物を訓練代わりに倒したりと、様々なことをしていた。
「こんなのじゃあ、いつまで経っても
もう一度同じような事を言うが、彼女の才能は化け物と言ってもいいほどである。
いくら、幼少期から訓練をしていたとしても、恩恵がないと誰しも限界があり、強くなるのはある程度までなのだ。
その理由は、恩恵がない人間はゴブリンと同じほどの下級の魔物とも言える弱さという事実だ。
本来、成人がウルフなどのD級の魔物を倒す時の必要なLvは20と言われているが、恩恵を持たない人間が、D級の魔物を倒すには、Lvがその倍はないといけない。
だからこそ、魔物を倒し、Lvを上げるというのは非効率なのだ。
恩恵によって、 スキルなどで強くなっていき、魔物を倒してLvを上げる。
だが、ここに例外が存在する。
その例外、マリアルは、それ無しで、未だに強くなっていた。
マリアル Lv19(11歳)
ステータス
体力2850
攻撃930
防御510
素早さ1400
知能270
魔力510
魔防510
気力1320
幸運A
才能SS+
成長スキルポイント2Lv×1獲得
スキルポイント24(二分の一成長比例)
スキル
なし
オートスキル
【超成長】恩恵に囚われず、自信が育ちたい方向へ、ひたすら限界なく成長する。
称号
なし
恩恵
【???】
彼女の才能はSS+。かつて、魔王を倒した勇者の才能SSよりも上の、神にも届きうる才能を彼女は秘めていた。
「兄さんはもっともっと強い。私ももっと強くならなくちゃ。兄さんの隣に立てるように!」
彼女は走る。止まることは一切ない。ただひたすらに。
それほどに、彼女の才能もより輝くから。
その時家の方角から強い巨大な光が放たれる。
だが、マリアルはそれを全く気にしていなかった。
「コハルもあんな才能があるんだから訓練すればいいのに。」
そう言って、その原因であろう人間に宛をつけ、ビックボアを探しに行くのだった。
sideコハル
ユマたちの家の一室でカチカチとリモコンを操作するコハルは、ただユマの作ったゲームに没頭する。
ただ、そんな時に部屋の窓が軽くたたかれる。
「もう誰〜?私今レベリングちゅ、あ、スラちゃ〜ん!」
そこには少し大きめなピンク色のスライムがいた。スライムは手のようなものを上げて、コハルに合図を送ると、窓の僅かな隙間から家に入ってコハルの元へやってくる。
そして彼女の膝の上に乗って顔を擦り付ける。
「もう、くすぐったいよ〜。」
そう言いながらもコハルは嬉しそうにスライムを撫でる。
「スラちゃん、私ちょっとこの技やってみたいんだけど、どうかな?」
そうやってゲーム画面の主人公が放つ技をスライムに見せる。
『プルルン!』
「うん。スラちゃんもそう思う?じゃあやってみるね〜。」
スライムはただプルプル震えただけだったがコハルはそれを見て準備を始めた。ーーーー家で。
「我が手に集え、英雄の霊魂よ。我が前に道を開け。エターナルローッド!!」
爆音!そして、爆発!コハルが向けた先の先まで原因不明な光が進み、大山にあたり、そして弾けた。
「ありゃ?」
『ぶるぶるぶるぶる!!』
スライムはあまりの驚きに全身を震わせる。
ユマの作った家の一部が弾け飛び、放たれた部屋はもはや見る影もない。
「失敗失敗。え〜っとこういう時は〜・・・
時よ。全ての根源である時よ。過ちを、犯した罪の痕跡を巻き戻したまえ!バッククロック!!」
そうコハルが言うと、家がまるで時間が巻き戻るように、修復されていく。ゆっくり、ゆっくりと。
「お姉ちゃんにバレたら怒られちゃうしね。」
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ーーーー
ーーーゆっくり、ゆっくり。
やがて、全てが直るころには辺りは暗くなっていた。
「う〜長い!こんなことになるなら、今度からはお外でやろ〜っと。」
『ぷるぷるぅ。』
やれやれと言った具合に、スライムはため息をするような仕草をとる。
だが、その事よりも、このコハルも、とてつもない才能を秘めているのは間違いなかった。
コハル Lv1(11歳)
ステータス
体力120
攻撃5
防御3
素早さ10
知能300
魔力1000000
魔防1000000
気力3
幸運S
才能(特殊)S+
成長スキルポイント2Lv×1獲得
スキルポイント24(二分の一成長比例)
スキル
【創造】作りたいと思ったモノをある程度まで再現する。
オートスキル
称号
なし
恩恵
【神獣??】
やってみたかったというだけ。それも、誰も知らない魔法をたった一度で完成させるスキルなど、賢者すら、恩恵すら超えている。
そして、その内に眠る魔力量も桁違い。
本来あのような大規模な魔法を連発すれば、恐らく国の宮廷魔導師だとしても、一つ打てば、廃人になることだろう。
それをコハルは疲れた素振りもせず、ただまた寝っ転がる。
ある意味彼女ら双子は、似ていた。
この5年、片方は兄の隣に立つためと、才能をひたすら伸ばし続け、もう片方はその才能(想像)をある意味年中広げ続けた。
そして、もう一つの才能も、この5年。ただ
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