第8話 第3階層リッチ

ダンジョンの2階を攻略した俺達は地下3階を目指した


 既に3階の偵察は終わっていた


 3階はいよいよ物理攻撃が効きにくい魔物が増えてきた


 基本スケルトンが主だが、ところどころにバンパイアがいる


 休息の間の前のボスはリッチだった


 スケルトン、アンデッドの魔物。倒すのはそれ程難しくは無い魔物だ


昨日のキラーラビットと違って銃も剣も当てやすい。面白い様に倒せた


西野は剣で戦い始めた。どうも彼は剣で戦いたい様だ


そもそも彼はラノベやゲームでRPGを好む、当然剣で戦いたいのだろう


『瞬』


『瞬歩』で有利な位置に移動すると俺は射撃を開始した


『ガン・ガン・ガン』


胸に2発、頭に1発とセオリー通りだ


 西野は剣で戦う為、少し離れる必要があった


 当然彼に銃弾が当たらない様射撃場所は良く考えた


『ガン・ガン・ガン』


「快感」


思わず口走る


「高野、マジそれ言わ無い方がいいぞ。ちょっとやばい人だぞ」


西野は悪態をつくが、俺は気にしない


どうせ俺と西野しかいないんだ。気をつける意味は無い


 西野に群がるスケルトンがやや増えた。後続のスケルトンが皆


 西野に向かってしまったのだ。俺は援護射撃した


『ガン・ガン・ガン・ガン・ガン・ガン』


2体程スケルトンを倒す


「サンキュー」


西野は礼を言うとたちまちスケルトンを3体程倒した


 この階にはスケルトンとバンパイアばかりだった。


 少々、数が多いので大変だったが、キラーラビットの時ほど疲労感は無い


 魔力のこもった弾丸も剣もしっかり効いている。


 面白い様に倒せた。西野に至っては島村並みに剣を扱える様になっていた


「ずいぶん剣上手くなったね」


「いや、キラーラビットに比べたらこいつら遅いから楽勝だよ。


 キラーラビットとの戦いはかなり役にたったよ


 だいぶ無駄な動きが無くなった」


「だけど、お前、少しは短剣で戦う練習もした方がいいぞ」


「なんで?」


「銃が使えない環境ってあるだろ?」


「今は魔力弾で戦えるから」


「音はどうする?


 音で魔物を呼び寄せてしまう環境になったら?


 弾丸を節約したい時は?」


「考えて無かった。分かった。次の部屋では短剣で戦う」


「よし、剣と短剣の時の連携の練習にもなるな」


「次はバンパイアだね」


俺と西野は剣と短剣でバンパイアと戦った


 銃に比べると、苦戦したがなんとか勝てた


 何度か西野に助けられた


 西野はすっかり剣の扱いが上手くなった


「この3階層最後の魔物だな」


「うん、リッチ。元はプリーストか魔法使いが魔法でアンデッドになった奴だね」


「物理攻撃は効かないな」


「うん」


「じゃ、覚悟を決めて行くか」


「うん」


俺達がリッチの部屋に入ると、いた、リッチ


リッチはゆっくりとこちらを向くと呪文を詠唱し始めた


「行くぞ!」


西野が叫ぶ


「もちろん!」


俺は西野に答える


 先ずは先制の銃撃を喰らわす


『ガン・ガン・ガン・ガン・ガン・ガン』


6連射



あまり効いてない


「西野、リッチの魔法防御硬い!」


「ああ、だが、その前にリッチの呪文、来るぞ」


『アローレイン』


リッチの水属性の呪文が来る


俺達のフレアアローの様な単体攻撃魔法では無く、範囲攻撃魔法だ


『瞬』


『瞬歩』で移動し、『跳躍』


しかし、


「く!」


リッチのアローレインの1本が俺に向かってくる


「やっ!」


俺は『空間跳躍』で空中で無理やり軌道を変える


かろうじてかわす


「どうする?」


「どうするって、イービルアイと同じだ


 先ずは魔法防御を引っ剥がす」


「分かった」


俺は引き続き銃弾をリッチに撃ち込んだ


 西野は弓矢でリッチを攻撃する


 矢じりの方が弾丸より大きいせいか、弾丸より効果がある様だ


 でも、負けずに俺も弾丸を撃ち込む


 途中、リッチの攻撃魔法に2回程邪魔されたが、


 俺と西野の攻撃はかなり効いている。リッチは呪文を唱えられなくなった


 西野が動いた。最後の弓を射ると、剣を持ち、リッチに対峙した。


「であ!」


『フレアアロー』


剣で魔法防御を切り裂くと魔法を叩き込んだ


「駄目だ!」


「逃げて」


リッチにフレアアローは効かなかった


「何故だ?」


俺は混乱したが、1つ思いついた事があった


 フレアアローが効かない理由は分から無いが効きそうな攻撃方法がある


「西野、もう一度リッチの魔法防御を剣で切り裂いて!」


「わかった」


西野は一度リッチから跳び逃げたが、再びリッチの直前に現れた


 リッチは瘴気を纏う。接近戦は最小限にする必要がある


 西野に続き、瞬歩と空間跳躍でフェイントをかけて、


 リッチの直前に俺も現れる


 西野がリッチを切り裂く、リッチが呻く、


 そこへ俺は倉庫から出したエリクシールをリッチにぶっかけた


『グ、グァー』


リッチが人外の叫びを声をあげる


 効果はてきめんだった。リッチはあっという間に消えていった


「高野、何を投げたんだ?」


「エリクシールだよ。アンデッドには効くと思ったんだ」


「なるほど、座学で聞いた。対アンデッド用の聖水は


 ポーションやエリクシールと基本、同じものだったな」


「そうだよ。多分、ヒール叩き込んでも同じ効果あると思う」


「そっか、多分、対アンデッドの攻撃魔法ホーリーとハイヒール、


 基本は同じなんだろな


 確か、南さんが同時に覚えたと言ってた」


「うん、多分」 


「俺達、だいぶ戦い慣れてきたな」


「うん。俺、帰れるかもしれないと思い始めて来たよ」


「ああ、必ず帰れるよ」


俺達はいつものように魔法陣に入った。この魔法陣では3つの魔法を覚えた


 それも魔導書グリモアでだ。俺達は無詠唱で『アローレイン』、『ハイヒール』、『ホーリー』を唱えらる様になった


 その後、休息の間で俺達は疲れを癒した


「それにしても、何故リッチにフレアアローが効か無かったんだろう?


 普通、アンデッドには火属性魔法は鉄板の筈なのに」


「う〜ん。想像なんだけど、あのリッチ、明らかに元プリーストだったんだと思うんだ


 水の攻撃魔法使ってたし、ご褒美のヒールやホーリーも水属性だ


プ リーストって水属性の魔法が得意な人が多い訳だから、


 彼も水属性の魔法のスキル持ちだったんじゃ無いかな」


「なるほど、火属性は水属性に弱い、逆に言うと、


 火属性の攻撃は水属性の魔物にはあまり効果無い、という事か


 アンデッドなのにな」


「いや、リッチは100パー霊体だから、


 火が特効と思った事自体が間違いかもしれないよ」


「そういえば、スケルトンには魔力剣凄い効果あったけど、


 バンパイアには無かった」


「うん。俺が込めた魔力はフレアアローと同じ火属性のものだから、


 多分、バンパイアには魔力しか効果が無かったんだよ


 スケルトンは単に燃え易いから効果が大きいんじゃ無いかな」


「そうかもな。そういえば、お前、魔力火を込めたって言ってたけど、


 水の魔力も込められる様になったって事か?」


「うん。そうだよ。魔力込める時『フレアアロー』のイメージで、込めてたんだ


 使えない属性の魔力はイメージ出来無くて実際無理だ


 でも、『アローレイン』のおかげでイメージができる」


「じゃ、水属性だけじゃ無くて、アンデッド特効の『ホーリー』弾も作れるじゃ無いか?」


「あ!


 そうだね。単に水属性だけじゃ無くて、アンデッドに特化した弾丸も作れる


 弾丸だけじゃなくて剣や矢も作れる」


「俺も分もか?」


「でも、矢じりはともかく剣はそんなにたくさん持ち歩け無いぞ」


「俺の収納魔法があるよ」


「そっか、お前、便利だな」


「うん。でも、これで土と風属性の魔力が込められればね


 全属性に対応出来るんだけど」


「出来るかもしれないぞ」


「え?」


「どうやって?」


「お前はアルケミストだから全属性網羅してるんだろうけど、


 レンジャーの俺は大地の土と大気である風に強いんだ


 攻撃魔法は使えないけど、土や風属性の魔法は少し使える」


「じゃ、土と風属性の弾丸も」


「俺が協力すれば多分作れる」


「やった!」


その後、俺達は黙々と弾丸を作り、矢じりや剣を作った


「本当にお前、銃関係の時いい顔するな」


「銃以外の時、そんなに酷いの?」


「うん。何考えてるかわかんない顔だ」


「ひでぇー」


「ところで、俺達だいぶレベルアップしたんじゃ無いか?」


「そうだね。2人だけであれだけたくさんの魔物を倒したんだから」


「お前、最近ステータスウィンドウ見たか?」


「最近見てない。見ても状況が変わる訳じゃ無いから」


「それはそうだけど、見ておこう、客観的に強さを把握した方がいい」


「そうだね」


頷くと俺達はそれぞれのステータスウィンドウを見た


 ウィンドウはスキルがある人間にのみに見る事が可能な、そうゲームのステータスとか確認するやつだ


「あ!


 敏捷性と魔力が凄い上がってる。レベルは25」


「俺もレベル25、俺は力と技がたくさん上がってる」


「これだと、俺、フレアアロー100回射ってもマインドダウンしないかも」


「俺の方は勇者島村より剣はもう上手いかも、魔力剣あるし」


「多分、そうだよ。島村たちだって、リッチやイービルアイには勝てないよ


 キラーラビットだって、あんなにいっぱいいっぺんに来たら、多分全滅する」


「俺達、強くなったな」


「本当だ。ありがとうね」


「なんだよ、急に、気持ち悪いな」


「いや、西野がいなかったら、俺、死んでたし、精神的にも参ったと思う


 1人じゃなくて本当に良かった」


「お前らしくないな。可愛い過ぎる」


「お前こそ変な事言うなよ」


ちょっと顔を赤くして俺は抗議する


「ところで、西野、お前、俺に変な事しようとか思わないのか? 」


俺は思いきって言ってみた。正直、かなり最初の方で犯られるかもしれないと思った


 若い男女が2人っきりなんだから


「変な事したら撃たれるだろ!」


「撃たないよ。お前が死んだら、俺ひとりぼっちになるじゃないか」


「お前、本当に馬鹿だな!


 嘘でも撃つって言っておけば、抑止になるのに」


「ごめん」


「いや、困るのはお前で俺じゃない


 まあ、気持ちは嬉しかったよ」


「うん。本当にありがとう」


こうして3日目が終わった。俺達は疲れ果ててぐっすり眠った

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