第5話 真の試練ダンジョン第1階層

ダンジョンの中で立ち尽くしてしまった俺達だったが、


 いつまでもそうしている訳にもいかず


 取り敢えず、ダンジョンの中を探索する事にした


 それにあてがあった


 ゴーレムで探索した時に休息の空間を見つけた


 休息の空間とはダンジョンのところどころにある安全地帯だ


 試練の塔にもあちこちあった


 俺は今まで秘密にしていた銃の事を西野に話した


 今使わないでいつ使うかという事だった


 西野は驚いたが、安堵もしてくれた。


 かなりの戦力アップだ


 少なくともこの階の魔物には銃は有効と思われた


 倉庫から銃を出す


「ジェリコ941か!お前、その銃好きだったもんな」


西野も俺と同じミリタリーオタクだった


「それにしてもどこから出したんだ? 」 


倉庫だよ。銃だけじゃ無い。食料やポーションもある


「そ、それって、収納魔法じゃ!」


俺と同じくラノベファンの西野は直ぐに理解した


「お前、すごいな。すっかり美人になったし」


「それはむしろ、困っている。自分が美人でも、何も出来ん」


「はあ、まあお前は人生の勝者になったよ。気がついてるだろ?」


「みんな。お前に気を使ってる


 美人のお前に気を使ってるんだ。自覚あるだろ?」


「ああ、世の中理不尽なものだと思ったよ


 見てくれだけでこんなに変わるなんて......」


「まあ、今のお前、南より可愛いぞ


 何より金髪に赤い目のロリ少女はほとんど反則だよ」


「いや、俺は南の方が可愛いと思うよ」


「それはお前が南の事好きだからだろ?」


俺は黙り込んだ。俺は南の事が好きだった。


 無論、てんで釣り合わ無かったが


 俺達コミュ障の会話は短い。会話は直ぐに途絶えた


 そして、次の部屋に入った。隼の偵察でオークがいる事が分かっている


 銃のセーフティロックを解除する。銃を構えて俺は次の部屋に飛び込んだ


 目に飛び込んだオークを撃つ。胸に2 発、頭に1発。それを4回繰り返した


 つまり4匹のオークを葬った。俺が4匹倒している間、西野も1 匹仕留めた


 一番奥にいた奴を弓で倒した。しかし、西野はオークに5本もの矢を使っていた


「魔法なら簡単なんだが」


「でも、魔法だと俺達は一日5回位しか使えないよ


 使いどころで使わないと、戦闘中にマインドダウンは冗談じゃ無いよ」


「まあ、確かにそうだな。地味に矢で倒すしか無いな」


しかしゴーレム隼の情報だと休息の間の前の部屋にいる魔物


 イービルアイには多分、銃は効かない


 剣より魔法が有効な魔物だよ。おそらく物理攻撃の銃は役に立たない


「魔法は温存か」


俺達は試練の塔で手に入れた魔導書の火の攻撃魔法『フレアアロー』が使えた


 この魔法は詠唱不要で便利この上無いが、魔術系のスキルを持たない俺達では


 直ぐに魔力が尽きてマインドダウンしてしまう


 だいたい俺達は一日5回位しか使え無い


 ゴーレム隼で偵察しながら進んだ。そしてなんとか銃でしのいだ


 銃の効かない魔物イービルアイはおそらくこの先の部屋、


 安息の部屋の前にいすわるだけだ


 俺達は最後の戦いになるかもしれなかった


 もし、この魔物に勝てなければ、永遠にこのダンジョンから抜けられ無い


 それどころか、この階で数日で力尽きるだろう


 このダンジョンでは毎日魔物が新たに現れる


 例え1度倒しても、明日又新たな魔物が発生するのだ


 休まなければ、いつか死ぬ


「行くぞ」 


西野がリーダーシップをとる


 部屋へ入ると。いた、イービルアイ。俺は奇襲攻撃をかけた


 『瞬歩』で西野と別れるとそこから射撃を開始した


『ガン・ガン・ガン』


銃声がこだまする。銃弾はイービルアイに吸い込まれる。


 しかし、効果は無さそうだ。イービルアイの中心の目が赤く光る


「来るぞ。避けろよ!」


西野が叫ぶ


俺は『瞬歩』で高速移動した。そこへ


『ギン』


嫌な音と共に光線が発せられる。


 イービルアイの怪光線だ。当たったら、先ず死ね


 俺は間一髪避けた。この隙に西野が攻撃をしかけた


『フレアアロー』


炎の矢がイービルアイを襲う。イービルアイは不協和音で叫ぶ。効いている


『フレアアロー』


俺も魔法を発動した


 あれ?


 イービルアイが激しく嘶く。効いている


 西野の魔法の時より。何故だ?


 俺も西野も魔法の威力はほとんど変わらない筈だ


 だが、イービルアイは明らかに俺の魔法を嫌がっている


 違いは、俺は銃弾をこちらから浴びせていた


 西野の方には銃弾は届いていない。もしかして


 俺は一計を講じだ。勝てるかもしれない


 俺は再びイービルアイに銃弾を浴びせた


「何やってるんだ?


 打ち合わせと違うぞ?」


「西野、俺を信じてくれ。多分、倒せる。援護を頼む」


「分かった。信用する」


西野は魔法と弓でイービルアイの注意を逸らす。


 その隙に俺は銃弾を徹底的に浴びせる


 既に100発は叩き込んだろう。そして最後の弾丸が放たれる


『カシャ』


銃の弾丸が尽きた。もう残弾は無い


俺は魔力防御が減ったイービルアイに向かって、フレアアローを放った。


『フレアアロー』


イービルアイが怒りの咆哮をあげる


だが、まだだ。まだイービルアイは消滅していない


『フレアアロー』


『フレアアロー』


俺の意識は途絶えそうだった。もう次の魔法が最後だ


『フレアアロー』


そして最後の炎の矢がイービルアイを貫く


イービルアイが消えて行く


「か、勝った」


俺は勝利を確信して意識を失った

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