桜の枝に真昼の月が 1【ジャンルは……SF?】
一人で過ごす静かな午後。
暖かい春の日差しを楽しもうと、京子はウッドテラスのチェアーに座った。
テーブルに湯気の立つコーヒーとスマホを無造作に置いて、まずは庭の桜の木に柔らかい視線を送る。
この桜は初めての子供が生まれた記念に植えたものだ。
ちょうどこんなふうに花が満開の時期に生まれたから、名前も櫻子と付けた。少し古風かなと思わなくもないが、毎年この花を見るたびに娘の誕生日を思い出せるのがいい。
京子には二人の子供がいる。二十歳の
微かにそよぐ風が、数枚の花びらを散らす。桜の枝の先に、白く淡い半月がぼんやりと浮かんでいた。
京子はコーヒーの入ったマグカップに手を伸ばした。
京子は取り立てて言うほどの特徴もない、ごく普通の主婦だ。
歳を知った人は見た目の若さに目を見張るけれど、顔はそんなに美人の部類には入らないので目立つこともない。
それにあまり外に出ず、昼間はこうして一人きりで過ごすことが多い。
そんな京子だが、見た目では分からないけれどたった一つだけ、普通とは違うところがあった。
実は彼女は地球人ではなく、月の民なのだ。
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