006.厚めの大胸筋に胸熱です!
腹黒殿下もとい、お義兄様の命令と言う事で、毎日私とアロウラス様はお茶をする時間を持たせてもらっている。気がきくわ!
絶対何かを倍で返さなくちゃいけなくなると思うけど、義務と権利……違うわね、タダより高いものはないものね。
最初は一緒にいられるだけで幸せと思っていたけど、なにしろ夢にまで見た理想のバディが目の前にいる訳で。
私の欲求不満度はぐんぐん伸びていって、今じゃ天井に届く勢い。ああっ、触りたい、触れば、触る時!
大体アロウラス様はこれまでずっと恋人もいなかったんだから、もっと貪欲に来るべきなんじゃ?!
キスとか、抱きしめるとか、色々!
とは言え、ぐいぐい行き過ぎてひかれたら元も子もない。……この前全力で追いかけ回したけど。
笑顔を向けると、アロウラス様の耳が赤くなる。
それだけできゅんとしてしまう!
「リサ殿……」
「何ですか?」
アロウラス様への笑顔は8割増よ。私に出来る最高の笑顔を常に向けているわ。他の人達? 愛想笑いでも許されるわよね? 営業スマイルで良いならいくらでもあげるわよ?
私もそんなに交際経験がある訳じゃないけど、多分アロウラス様よりはあると思うのよね。だから、私が引っ張っていけばいけば良いの。
そうやってもっと肉体的距離を縮めて、早く触れたいあの大胸筋!!
「名を、呼んでいただけないだろうか」
「…………っ!」
ちょっと今、脳が瞬間沸騰するかと思ったわ! ヤバかったわ、本当に!!
少し恥ずかしそうな、不安げな表情がまたイイ! 耳がまた赤いのも可愛い!
可愛い可愛い可愛い……!
「駄目、だろうか……」
……はっ! 目の前にアロウラス様がいるのに、あまりの可愛さに思考が暴走しかけてたわ。
アロウラス様、と呼んではいるけど、これは家名だものね。
「レオニード様」
何度聞いてもステキな名前……うっとり。
アロウラス様もとい、レオニード様はちょっと俯きがちに、「出来たら、レオ、と呼んで欲しい」とおっしゃって、完全に俯いた。
ずきゅーーーーん!!
あまりの可愛さに思わず立ち上がって抱き付きそうになった私の腕をアイリスが掴んだ。
「自制して下さいませ、リサ様…っ!(小声)」
相思相愛なんだし、もう良いんじゃないかしら?! 婚約者だし、ね?!
俯いてらっしゃるから、僧帽筋がよく見えるったらないわ! お願い触らせて!
「暴走して嫌われたらどうなさるんですかっ(小声)」
「!」
嫌われる……!?
……そうだったわ……!
信用とか信頼を裏切るのは一瞬なのよ……!
深呼吸を何度かする。
夢にまで見たマッシブマッチョメンのパートナーになるって心に決めたのよ!!
必死に自制して、優しく名を呼ぶ。
「レオ様」
レオニード様は顔を上げて私を見る。赤い顔をしている。あっ、ちょっと、やっぱり触りたい。むぎゅむぎゅしたい! したいしたいしたい!
アイリスの手が私を掴む。
なんなのコレ! なんのプレイなの!
「……レオ、と」
言ってからまた俯くレオニード様に我慢が出来なくなり、立ち上がった所をまた、アイリスに止められた。
ちょっ、羽交い締めしなくたって?!
「アロウラス様がもし、控えめな女性がお好みだったらどうなさるんですか……っ!(小声)」
「!!」
控えめって、今私がやろうとしてる事の対極にいる女性の事よね……?
大人しく座り直すと、アイリスの拘束が解けた。
そうね。
最終的にぐいぐい行くにしても、まだちょっと忍耐の時かも知れないわ。どうしようもなくなったら、既成事実あるのみ……! 腹黒殿下の助力があればいける筈!
「……レオ」
俯いたままなのに、レオニード様の顔が真っ赤に染まっていくのが分かった。だって、僧帽筋まで赤くなってる!
この人、一体どれぐらい私を刺激すれば気が済むのかしら?! 試され過ぎじゃない?!
振り返ってアイリスを見る。お願いオッケー出して! オッケーって言ってくれるだけで良いから……!
目を閉じて首を横に振るアイリス。
「いつまで我慢すれば良いの、コレ……っ!(小声)」
アイリスにこそっと問いかけると、「婚姻を結ぶまで、ですわ」と、鬼のような答えが。
「早く結婚したいわ……」
「早く結婚したい……」
失敗したわ……!
レオ様(レオと脳内で呼ぶだけでも悶絶しそうになるから、敢えての様付けよ)に夢中になりすぎて、私の事もリサと呼んで下さいとお願いするのを忘れるなんて!
明日のお茶会で絶対言うわ!
レオ様はお声が低い。まぁ、あの身体で高音だと、ちょっとね、申し訳ないけど百年の恋も冷めそう。
……うん? ちょっと可愛いかも?
「リサ様をお止めしているうちに、私もアロウラス様のように筋肉がつきそうです」
私の影響を受けて、すっかり筋肉という単語を覚えたアイリス。良い傾向ね。
「あら、アイリス、淑女は筋肉控えめで良いのよ?」
「リサ様の所為ですっ!」
私の暴走を止めてくれてありがたいけど、ちょっとぐらい見逃してくれても良いんじゃないかなーと思うのよね。
ちょっとぐらい許して欲しい……本当に。触りたい。撫でたい。頬擦りとか。凝った筋肉をほぐす為に揉んだりとか……ああああああ、見てるだけじゃ我慢出来ない!
「それにしても、アロウラス様はリサ様のおっしゃる通り、お優しい方なのですね」
私とレオ様のお茶会に付き添うアイリスは、考えを改めてくれたみたい。でも、レオ様はあげないわよ?
……レオ様って、どんな女性がお好みなのかしら? 明日お会いした時に問い詰めなくっちゃ。
「レオ様のお好みのタイプって、どんな方かしらね」
「その事でお引き止めしておいてなんですが、全くお気になさらなくて大丈夫だと思います」
「そんな事は分からないわ」
「絶対に大丈夫です」
「その自信は何処から来るのよ?」
「むしろ何処を心配なさるのですか?」
笑顔に惚れたとは言われたけど、それはレオ様がこれまで女子に優しくされていなかったからであって。有り難みみたいなもので私に好意を抱いている可能性は否定出来ないのよね。そうなると、他の女子に目がいくかも知れないって事なのよ。
これまで恋愛経験のなかった人が幸運にもパートナーが出来た途端に自信を持って、アレ? もしかしてオレ(私)、もっと上を狙えるんじゃ? って思い違いをして、浮気しちゃうアレよ。
それは絶対に避けたい!
だからこそ知りたい、レオ様の理想!
そう伝えたら、アイリスが目を細めた。
「ありえませんわ。そんな事をなさったら本当にただのケダモノですわ」
いくら獣人っぽいマッチョな肉体だからって、ケダモノは言い過ぎよ、アイリス!
お茶会で早速、レオ様の理想を尋ねる。途端にレオ様の顔が赤くなる。
「いや、その……」
「どんな方ですか? 私、レオ様の理想に近付きたいのです! 教えて下さい!」
赤い顔のまま、口を真一文字にして私を見る。可愛いわねコンチクショウ!
マッシブマッチョメンでセクシーな上に可愛いとか! なんて罪な人なの!
「リサ殿は、そのままで、十分魅力的だと思う」
模範解答ね! 素晴らしい! でも違うのよ! 私を喜ばせようとか、安心させようとする言葉は嬉しいけど、もっと現実的な話をしたいの!
「駄目ですわ、レオ様。私、レオ様に愛されたいのです。その為の努力なら惜しまないつもりです。どうぞ遠慮なさらずにおっしゃって下さい」
「そ、そんな……」
赤い顔を両手で隠してしまう。
アラッ?! 理想を言うのが恥ずかしいのかしら? なんかちょっと難しいとか? 性癖剥き出しな理想とか?
指と指の間からチラッとこっちを見るので、笑顔を向けると、また顔を手で隠されてしまった。
なにかしら、本当に、言えない系なのかしら?!
顔から手を離すと、目を閉じて深呼吸するレオ様を、じっと見つめる。
「リサ殿は、どんな男が理想なんだろうか?」
「レオ様!」
「?!」
「レオ様は私の理想そのものです!」
またしてもレオ様が顔を両手で隠す。
「レオ様?」
顔を覗き込もうとするも、びっちり指が閉じられていて顔が見えない。
「レオ様……?」
心配するふりして上腕二頭筋に触れる。
きゃーーっ! 凄い凄い! 何て言う固さ! あぁ……頬擦りしたい……出来れば脱いだ状態で……。
指と指の間から覗く目と、私の目が合う。
このままレオ様が硬直したらどうしよう? 触り放題って事で良いかしら?
そんな事を考えていたら、レオ様の手が顔から離れた。
「私の理想は……私を想って下さる方です。だから、私を理想だと言ってくれるリサ殿は、私の理想の女性です」
真っ赤な顔で一生懸命におっしゃってくれる言葉に、心臓がきゅんきゅんする! きゅんきゅんが止まりません!
もう駄目! 我慢できません!
「レオ様!」
感極まった風を装ってレオ様の胸に飛び込んで、大胸筋に頬擦りする。
「りっ、リサ様!!」
アイリスの叫ぶ声が聞こえたけど、無視です、無視!
騎士服の上からも分かるこの厚み! 固い筋肉!
胸熱です……!!
「リサ様!」
アイリスの叫び再び。
「アロウラス様が、意識を失ってらっしゃいます!」
え……っ?
身体を離してみると、レオ様は硬直を通り越して気絶していた。
「れっ、レオ様ーーっ?!」
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