世にも奇妙なG

浜こーすけ

本編

 物事には、そこから連想させるという力が備わっている。桜といえば、春。怪獣といえば、特撮。UFOといえば、宇宙人。といった具合に。それは人によって多種多様な表現がなされ、そこに独創性を生むのである。

 「今日も、変わらず美人だな~」

 「グフッ、もう、目が潤う」

 六月、初夏。都立とりつ宗々そうそう高等こうとう学校がっこう。四階まである教室棟の三階は、二年生が主に使う階だ。そこの廊下ではとある女子生徒が通るだけで涙ぐむ、という珍現象が起きていた。

 (はぁやべー、昨日ドラマ観すぎて超ねみぃ。今日はアレだ、寝るな、100%)

 そんなことを気にも止めず、昨晩に夜更よふかししたことを後悔しつつあくびをする青年が一人。廊下側からは反対の、体育館の見える端の列の一番後ろ。日差しがよく当たり、一層の眠気をそそる。山口やまぐち優人ゆうと。それが、この世に生を受けた彼の名前だ。

 「よっ山口! 昨日のドラマ、観たか?」

 「あぁ、観た観た。おかげで今日は寝不足だよぉ~……ふぅ」

 語尾には、小さくあくびがつく。まだ眠気はとれていない。

 「お、優人もあのドラマ観たのか? アレスッゲー良かったよな!」

 「だよな~。山口がハマるって、相当だぜ」

 「いやー珍しいことも、あるもんだなー。いやマジで」

 「おい、どういう意味だよそれ」

 見る人が見ればけだるそうな優人だが、だからといって友人がいないということはない。予鈴前の休み時間にも、こうして談笑をする。それが、二人から三人へ。三人から五人へ。次第にその人数は増え、会話の輪も広がる。時に笑い、時に冗談を言う。そして笑い、また笑う。意外と話題の中心にいたりする男なのだ。

 ただ、そんな彼にも隠していることが一つある。家族にも、今話していた学友にも。ほとんどの者が知らないであろう、とある事実。

 ピコンッ。

 LINEの通知音が鳴る。それと同時に予鈴も鳴り、生徒らは自身の席に戻りりとなる。

 (誰からだろ……?)

 優人は机の下でこっそりと、メッセージを見た。

 【放課後、二階の図書室前廊下で】 

 そう記された文だけを見て、優人はスマホの電源を切った。

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