【短編】すごく眩しい

室ヶ丘

第1話ナースコールは鳴らさなかった

「優しそうな人で良かったわ。これからよろしくお願いするわね。」


2人部屋の病室はこぢんまりとして私たちの距離を詰めた。心配はなさそうだ。

でも私は最後に起こる悪夢の様な日々なんて未だ知らないし、この出会いに期待の念すら抱いていた。


彼女は「私は小春。呼び捨てでも良いわ。みんなから春って呼ばれてるの。」といい向かいのベッドに座る。

荷物は少なく病状も安定して見えた。後で知ったことだが彼女は循環器が悪いらしい、詳しくは教えてはくれなかった。


「よろしく。私は瑞稀。私のことも呼び捨てで良いよ。」


そこから三週間、順風満帆だったが。事件が起きた。話している時、彼女がいきなり過呼吸になる。私は慌ててナースコールを押そうとした、が。


「…だ、大丈夫…よ…。発作だから…。」


私は循環器に詳しくもないし学もなかった。彼女の心境、病状ともに理解すれば良かったと今は後悔している。


朝のことだった彼女は目を覚さなかった。私がおはよう。食事が来たよ。と言っても、うんともすんとも言わない。


あぁ、私は人を殺してしまったのかもしれない…。

あの時ナースコールを押していれば…。

仏の顔は二度と振り返らない。

私はシワの無くなった新品のシーツを撫でながら後悔する。彼女のいたシーツはもう洗われているのだろうか?



目を擦り、雲一つもないない冬の空を見上げた。凄く眩しい。

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【短編】すごく眩しい 室ヶ丘 @nekoyoyo773

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