第2話フクロウが住んでいた頃
私の家には大きな納屋が幾つくありました。一階には田畑を耕すトラクターが入っており、二階は農具や工具、もう使わなくなった古いタンスだとかが置かれています。きっかけなんて忘れてしまいましたが、二階の納屋の窓をずっと開けるようになり、いつの間にかそこにフクロウがやって来て子育てをするようになりました。
納屋はフクロウにとってみれば最高の環境です。その納屋は階段があるわけではないので、梯子を使える人間以外は上がってこないからです。空いている窓以外からは雨風は入ってこないので、自然の驚異から守られていました。更に言うなら、広い部屋なので飛ぶ練習や遊びに適しています。
私たち家族は、フクロウが住み着いた事を微笑ましいことだと思い、数年に渡りやって来るフクロウとのちょっとした交流を続けていました。ちょっとしたといって、今思うとづけづけ入り込んでいたと思います。わざわざ、食用マウスを買い込んでレンジやオーブンでチンをしたら、親フクロウに襲われる覚悟で餌をあげに行ってました。
親フクロウには結構、当たり外れがあって、まぁ…子を守る親としては当然なんですが、重い鉄の扉を開けて梯子を掛けた瞬間に爪や嘴で攻撃されて、頭やらをケガするなんてのがありました。私の頭皮を啄んで食っているフクロウの姿、未だにハッキリ覚えています。中にはね、どうぞどうぞ餌を下さい。可愛がってくださいな親もいるんですけどね。
そんな日がねずっと続けばなと思っていたんですが、ある日、お爺ちゃんが二階に農具を取りに行ったんです。その時の親フクロウは結構、攻撃的でお爺ちゃんを見かけるなり、音もなく飛びかかって来たそうです。「物取りに来ただけだ!」と通じませんが頑張るお爺ちゃん。その時、たまたま振った手が親フクロウの体にヒットし
打ち所が悪かったせいでなんと死んでしまいました。
その晩、我が家では家族会議が行われました。あのフクロウたちはどうしよう、生かすべき?それとも…。あれこれ話して出た答えは、まずもう納屋の窓は閉めてもう開けない。次にフクロウを自分たちで育て上げ、自然に返す事でした。
三匹のフクロウを納屋から降ろし一生懸命育てました。だけど、一匹は親が居ない事や環境の激変からストレスで長く生きれませんでした。悪気は無かったんだけど、親を殺してごめん…という気持ちになりました。その後悲しんでられないと、二匹は頑張って育て上げました。そして、一匹はある日の晩に開けた窓から飛びだって自然にかえりました。だけど、残り一匹だけ何時までも飛んで行ってくれませんでした。飛べないわけじゃありません。家の中をバサバサと飛んでいます。贔屓したわけでもなく、一定の距離を保ちながらでしたが懐いてしまったようです。
このままではいけないと強制的に玄関へ出し、鳴くフクロウの声を無視する生活をしました。その間は、コッソリと別のドアから外出していました。フクロウは、三日間も家の前でずっと鳴いており、三日目は立ってられなくて倒れたまま鳴いていました。フクロウの体力も、見て見ぬふりする私たちの精神も限界で「もう、可哀想や…飼ったろう…。」とお父さんが言った事で、そのフクロウを飼うことに決めました。
最終的に、フクロウは鳥が好きなお兄ちゃんがメインで飼うことになりお兄ちゃんが婿で向こうへ行く時も、お別れせずに一緒に出ていきました。向こうの家に行った時にまだフクロウは元気に飛んでいます。フクロウってしっかり育てると40年は生きるらしいです。たまに会う程度だから忘れちゃってるだろうなと思ったりするのですが、覚えてくれてるのか、優しく肩に乗っかってくれます。
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