殺人者の孤独

三人殺した


世間では無差別殺人だと騒がれている


赤の他人を殺した理由……?


違う、そうじゃないんだ


手当たり次第に人を刺したわけじゃないんだ






僕は無職


両親は死んだ


恋人はいないし


昔の友達とは縁が切れた


どこにも通っていないから


独りぼっちで実家に引きこもっている






外出するのは


金を下ろすため


各種手続きをするため


食料を確保するため


だから銀行に行く


だから市役所に行く


だからスーパーに行く






三人殺した


僕より幸せそうな彼らが許せなかったから


一人目は銀行の窓口でたまに顔を合わせる女の人


二人目は役所の福祉課で僕の応対をした男の人


三人目はレジ打ちの人


僕にとっては数少ない社会とのつながりだった






それなのに






警察はそれを「無差別」と呼んだ


ニュースキャスターはそれを「無差別」と読んだ


誰でもよかった――わけがない


僕は選んだ


けど世間は、僕と被害者の関係を認めてくれなかった


誰を殺しても無差別殺人になるんだ――






……窓の外からパトカーのサイレンの音が聞こえる


迎えに来てくれたのかな


早く来て 僕は社会とつながりたい


容疑者として 


三人の人間を手にかけた凶悪犯として


さあ、玄関の扉を開いて僕を逮捕してくれ


インターホンは鳴らさなくていい






鍵は開けておくから

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