展望台で

車をグングン走らせて

郊外の展望台にのぼった


漠然と眺める町の風景


山と川と 丘と林

道路と畑と 河原と空き地


漠然と眺めているうちに

ピースがひとつずつ 鮮明になって


橋や鉄塔 学校や球場

ジオラマのような防風林

ところどころに民家が見える


赤い屋根の連なりが

緑の畑に映えてかわいい


豆粒ほどの黒い物

ゆるゆるゆると移動して


あれは車?


広い広い大地に 小さな小さな人の営み



こんなところに Wi-Fiが飛んでるらしい


いつも文字だけでつながっているあの人に

この景色を送ろうか


それとも いきなり電話しちゃう?


LINEの受話器のマークに

ワクワクと いたずら心が湧き上がる


まだ 声も知らないあの人なのに



青い空には 昼下がりの薄い半月

不器用に吊るされた舞台の大道具みたいに

ゆらゆらゆらと揺れている


風に吹かれて 私も揺れる


かあかあかあとカラスが鳴いて

頭上をかすめて飛んでった


動いているものと 根づいているものと

移ろっているものと 動じないものと


この大地とくうの中に

私がいて すべてがある



もう一度 風が吹き抜けていった

私はここに 立っている


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