エピローグ①:灰戸鋭介
陣太一行が去ってからおよそ12時間後。
灰戸鋭介は強烈な違和感とともに意識を取り戻した。
頭にじんわりとした鈍痛。節々もこわばって痛む。
「ぐ…、痛。ちくしょう。」
うめき声を漏らしながらなんとか立ち上がり、自分の愛車へと向かう。
身体の不調に加え、衣服、特にズボンが妙にずり下がってきて非常に歩きずらかった。
「あのヤロウ。殺してやる。いや、ただ殺すだけじゃ気がすまねえ。絶望のどん底に叩き落してから、なぶり殺してやる」
自らの感じる痛みや不快感を陣太に対する憎しみに変換しながら、なんとか自身のハイ○ースに到達。
そこで灰戸鋭介は驚愕した。
「な、なんだぁこりゃあ!?」
鏡のようにペカぺカに磨き上げられたハイ○ースの車体、そこに映る自分の姿。
小さく、そして華奢。なんと顔まで変わっている。
驚異的なダウンサイジングにくわえて大幅なモデルチェンジが実施されていたのだ。
灰戸鋭介は知るよしもないことだが、コレこそが清谷陣太の放った絶技、ナッツクラッシャー百式の効果である。
百発の拳により相手の身体を徹底的に破壊し、同時に打ち込まれた強力な性闘力によって相手の生命力を活性化、各種ホルモンを異常分泌させることによって、強制的に相手の身体を作り替えるのだ。
その際、莫大なエネルギーが必要となるため、攻撃を食らった相手の身体の中では脂肪、筋肉のみならず、骨までが消費され、結果としてダウンサイジングするのである。
まさに、無慈悲なる断罪の技。
今の灰戸鋭介の見た目は10代前半の子供。それも少女と見まがわんばかりに華奢である。
尚、男性器はついているが、生殖能力は完全に失われている。
一言で言えば、男の娘であった。
「ま、まさかコレが俺なのか?」
現実を受け止めきれず、呆然と立ちすくむ灰戸鋭介。
不意に、その肩が荒々しく掴まれた。
「ぶひぃい」
「な!?」
驚愕とともに振り返れば、そこにいたのはかつての仲間。
九院麗華と下部恵夢の技により、理性を失い性欲の豚と化した元ハイ○ーサーたちであった。
「ヒィッ」
豚どもの醸し出す不穏な空気に身体の芯から震えが湧き上がってくる。
そう、それは恐怖。
最初は漠としたモノだったそれが、確固たるモノになったのは、豚どもの股間がまがまがしく屹立していることに気がついた瞬間だった。
「な、なんだお前ら。や、やめろ?!」
肩をつかむ手を振り切り、逃げようとするもののすでに遅きに失した。
何本ものむくつけき腕、いや、豚の前足が細い四肢をつかみ、華奢な身体を地面に引き倒す。
「いや、やめ、やめろ、いやだああああああああああああ!!」
そこから繰り広げられるのは、灰戸鋭介にとってもおなじみの陵辱劇。
「ぶひ、ぶひ、ブヒイイイイイイイイ!!」
豚の雄叫びと、か細く甲高い悲鳴が荒野の暗闇に呑まれて消える。
以来、灰戸鋭介の姿を見た者はいない。
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