性闘士セイヤ
@hey-g
第1話:性教育は突然に
「セッ○スしたい」
いや、つぶやいたと言うよりは自然に口から転がり出ていたのだ。
その証拠に陣太自身が今の台詞に戸惑い、誰かに聞かれてはいないか前後左右を確認した。
幸い、夜の住宅街に人気はなかった。
「あ~、セッ○スしてえ~」
もう一度、今度は自覚的に口にする。周囲に人がいないことは確認済みなので遠慮はいらない。
最後に異性と付き合っていたのは3年近く前。
風俗店の類いも1年以上ご無沙汰だった。
「なんか、すげえムラムラするな。」
陣太は26歳の会社員。まだまだ性欲が衰えるには早いから、欲求不満からおかしなことを口走ったとしても決して不思議ではない。
恋人やその手の店こそご無沙汰だが、自慰行為は時折(おおよそ週1回~2回)行い性欲を発散させている。
しかし、今まさに体中を駆け巡る衝動は普段のそれとはレベルが違った。
「オ○ニーじゃダメだ。生身の、本物の女体じゃなきゃ」
わなわなと身震いしそうになりながら、陣太はつぶやく。
目は血走り、欲望にまみれた視線が周囲をくまなく走った。
誤解のないように言っておくが、痴漢や婦女暴行の対象、あるいは取り込み忘れた女性用下着の類いを探しているわけではない。
陣太はドノーマルの純愛好きであり、痴漢、強姦、リョナ、NTR、下着への異常な執着などの業の深い性癖にはまだ目覚めていないからだ。
ただ、万が一、億が一、今まさに熱情に潤んだ瞳を自分に向けている妙齢かつ肉感的な美女がいるかもしれないではないか。
「くそ、今から風俗に行くか。」
そうは言ったものの、理性がそれを打ち消しにかかる。
「いや、明日も仕事だ。もう遅いし、社会人としては早く帰ってさっさと寝るべきだ。それに飯食って風呂入って布団に入っちまえば案外この性欲も収まるかもしれないぞ」
明日に向けて身体を休めるべきだし、こんな訳の変わらない一過性の欲望に決して安くない金をかけることはない。
そう結論づけ、アパートに向けて歩行を再開しようとする陣太だったが、どうしたことか。
足がまったく動かないのだ。
「く、ぐお。うぐぐぐぐうお」
うなり、歯を食いしばりながら足を動かそうとする。だと言うのに、意思に反して足が言うことをきかない。
一見すると異常事態だが、そうではない。
なぜなら、そもそも下半身を完全に制御できる男など存在しないからだ。
下半身は男の意思とは無関係に動く。そう言い切っても間違いではあるまい。
ただ、意思で下半身を制御することはできないが、下半身が意思に影響することは多々ある。
頭と下半身、どちらか主人か分からないのである。
そんなわけで、夜道で汗だくになりながら言うことを聞かない下半身と苦闘すること十数秒。
ふいに陣太の動きが止まった。
食いしばった歯の間から漏れるうなり声も止んでいる。
「しゃあねえ。行くか。風俗!」
瞬間、陣太の瞳がまばゆい輝きを放った。
それは心、理性、本能が完全に一致した証拠。言うなれば真の人間性の発露だった。
きびすを返し、一歩踏み出す。
先ほどまでのことが嘘のように陣太の足は軽々と動いた。まるで羽のようだ。
気がつけば、陣太は夜の街に向けて走り始めていた。
「うはははっははははははははははははははは」
意味もなく、笑いが湧き上がり、気分が高揚していく。
行くと決めた今、一分、一秒が惜しい。
一刻も早く最寄りの風俗店に駆け込まねばならない。
それは既に使命、あるいは強迫観念の域に達しようとしていた。
言うまでもなく、股間は臨戦態勢である。
サイズは並の陣太Jr.だが、今や肉体の限界を超えて硬くなっている。
まさに剛直。いや、金剛棍である。
それに同調するように、心身にも変化が現れていた。
顔面は紅潮し、息は荒く、全身の毛穴からは濃厚な雄のフェロモンが分泌される。頭の中はエロ一色である。
そんな風に、オ〇ニー覚えたばかりの中学生よりも性に敏感になっていた陣太の足が突如として止まった。
場所は新興住宅街の外れ。民家が途切れた薄ら寂しい一角だった。
もちろん、風俗店はまだ遠い。
なのに、何故足を止めたのか。
それは、陣太の耳がとある物音を捉えたからだ。
「……そこかッ!!」
野獣のごとき陣太の眼光が、音の発生源を求めて夜の闇を切り裂く。
視線の先には木に囲まれた公園があった。
先ほどの物音が再び陣太の元に届く。
湿り、くぐもった、声。そして荒い息づかい。
陣太の
(ヤロウ、青姦だと!?おのれ、許せん!!)
突如として燃え上がった怒りとともに。公園へと突入する。
別に、公序良俗に反するとか、よい子の公園でおんどりゃなにしくさっとるんじゃ。などとは考えてはいない。
ただ、「俺がこんなにムラムラしてんのに何をお前ら気持ちよがっとんねん。」と怒っているのである。
ただただ妬ましいから、他人のセッ○スをぶち壊したいのだ。
人としてはかなり最低だが、今の陣太は性欲に支配され理性を失った
問題(しか)ない。
「あば、あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!」
不審人物が奇声をあげながら公園の中、カップルのそばを縦横無尽に走り回る。
無論、陣太(主人公)だ。
「うわ、なんだお前!?」
「きゃぁー!!」
恋人たちの困惑混じりの悲鳴が上がる。
その声がさらに不審者の勢いを加速させた。
相手のいない陣太は知るよしもなかったが、この公園は地元ではそこそこ有名な青姦スポットだったのだ。
つまり、カップルは一組にあらず。不審人物の獲物はまだまだ豊富だった。
「お前たち-、和姦ですか~!?」
「ぎゃ~!!」
20代、大学生と思われる男女には強姦の疑いをかけ。
「合意があれば何でもできる!!」
「いやぁー!!」
首輪をつけた熟年カップルのマニアックプレイを華麗なステップで邪魔する。
「ゴムがなければ、子供ができる!!」
「ぐわぁ~!!」
高校生かと思われる10代の少年には優しくコンドーム(0.02mm)をさしだしてやった。
「イくぞ~!!い~ち、に~、さ~ん、ハッ〇ルハ〇スルー!!アババババッババババババババババババババッバババ!!」
「どわぁ~!!」
まさに
陣太は妨害に成功し、カップルたちは性交に失敗した。
一通り、騒ぎが落ち着いた頃、陣太はようやくわずかばかりの理性を取り戻す。
「……さて、けっこう時間食っちまったな。はやく風俗行かないと。」
そう言いながら、小さくため息を1つ。
時間を無駄にしたとでも言わんばかりの表情で公園を後にした。
兵どもがゆめの跡。
一瞬の狂乱の過ぎ去った公園にはかすかな
おそらく陣太の
だが、忘れてはならないのは、カップルの妨害など陣太の本来の目的ではないと言うことだ。
その証拠にただでさえあふれかえった性欲はさらに勢いを増し、股間はギンギン。
全身性感帯。もはやチ○コが俺なのか、俺がチ○コなのか(哲学)といった有様だった。
みなぎる精力に背中押されるように、歩を進める。
どの店にしようとか、どんな子を指名しようとかそんなことは考えていない。
ただ下半身に導かれるまま、歩いているだけだ。
陣太には確信があった。この限界を超えて屹立した己がチ○コと研ぎ澄まされた
故事にも曰く「
だが、しかし残酷なる運命は主人公である陣太に平穏を許しはしない。
まるで、性欲の解消を妨害するかのごとく、さらなるトラブルを彼の元へと運んでくるのだ。
きっかけはなんてことのないもの。
風俗店へと急ぐ陣太の横を1台のワンボックスカーが通り抜けていく。それだけのことだ。
ちなみに黒塗りのハイ○ースであり、窓には濃いスモークが施されていた。
積み込みやすく、下ろしやすい、そのうえ中の様子は外から見えない。
どう見ても○〇○仕様の車である。
賢明なる読者諸兄であれば、既に先の展開に見当がついたかもしれない。
おそらくその予想は当たっているので、口外するのはしばし控えていただきたいところである。
読者諸兄とは違い、それほど賢くはない陣太ではあるが、今や彼は
ワンボックスカーからかすかに漏れた
瞬間、陣太の心身は戦闘態勢に移行した。
(この波動は!?)
頭で考える前に身体が動き出す。
気がついたときには車両を追って走り出していた。
自動車対徒歩。
通常であればどれほど懸命に走ったとしても。数秒後には見失ってしまうだろう。
だがしかし、そうはならなかった。
身体の中心で屹立し、一歩ごとに振り子のごとく左右に揺れるイチモツ。
それが陣太の走行フォームを劇的に改善した。
振り子の動きに合わせてストライドは大きく、速く。また、理想的な体重移動は疲労を軽減させた。
結果、瞬く間にワンボックスに肉薄。併走する。
運転席の男と目が合った。痩せた不健康そうな男だ。
「!?」
それほどスピードを出していないとはいえ、自動車に併走しているスーツ姿の男に運転席の男は困惑し、2度見する。
無論、相手が落ち着くのを待ってやる理由など陣太には存在しない。
思い切りよく陣太は跳躍し、研ぎ澄まされた足刀をヌキ放った。
「とう!ダイナミックインサート!!」
助手席側のドアがあたかもトイレットペーパーであるかのように破壊され、その勢いのまま運転席の男の顎が打ち抜かれる。
男は声もなく失神し、ハンドルにうつ伏せになる。
鳴り響くクラクション。
ワンボックスカーは減速しながらも左右に揺れ、ガードレールに衝突を繰り返した。
衝撃と悲鳴に満ちる車内。
しかし、その中にあってさえ陣太の目は冷徹に状況を分析していた。
車両後方にいたのは4人。
男が3人、女が1人。女はまだ少女と言っても過言でない年に見えた。
半端にずり下ろされた男のズボン。少女の着衣の乱れ。殴られたのか、切れて血のにじむ唇に直感が確信に変わった。
陣太の心中で激しい怒りがマグマのように噴き上がる。
その激しさは青姦公園でカップルに対して感じた憤怒のおよそ1.5倍に達した。
陣太が状況を把握するのを見計らったように、車が完全に停止する。
行きがけの駄賃とばかりに運転席の男を車外に蹴り出し、やかましいクラクションを止める。
そのまま助手席と運転席の上にまたがる姿勢で車両後部を見下ろした。
訳の分からない闖入者に対し、レイパーズがフラつきながら声を上げる。
「痛ってぇ、ちくしょう」
「何だてめえ。」
「くっそ、ふざけんなよ。」
陣太には彼らの質問に答える気も、回復の時間を与えてやるつもりもなかった。
「親しき仲でも、レイプなし。よろこべ、お前らに道徳と性教育を与えてやる。」
ただ、静かに死刑宣告をする。
「なに訳分かんねえこと」
犬畜生にも劣る屑の言葉など最後まで聞くに値しない。レイパーAの発言を完全に無視して陣太が踏み込む。
大型のワンボックカーとはいえ、自動車内である。しかし、陣太の体捌きはそんな窮屈さは感じさせない。
「喰らえ!!バイオレンスフィストファック!!」
「ギャアアアアアアアア!!」
車内を吹き荒れる鉄拳の嵐がレイパーズに襲いかかる。
性教育を与えると言い、初手がフィストファックである。はっきり言ってイカレている。
「まだだ!!ハードコアピストン!!」
「ぐぁあああああああああ!!」
前後左右、縦横無尽に繰り出される蹴撃がレイパーズから抵抗の力と意思を最後の一片に至るまで奪い去る。
「これでとどめだ。フィニッシュプルアウトメソッド!!」
「ぎええええええええええええ!!」
ダメ押しとばかりに繰り出された
(※貼山靠:別名、
車内には半ば意識を失っている被害者女性がいるのみ。
性欲ギンギンの男の前に着衣が乱れ肌もあらわな少女がいるわけだが、陣太は相手のケガの具合を確認するとすぐさま車を降りた。
いかにたまっていても、陣太の性的嗜好はまったく揺るがない。
純愛が至高。
最悪、愛はなくてもいい、ただ合意は絶対必要なのだ。
レイパーの1人のポケットからスマホを抜き取り、緊急画面から110番に通報する。
それからレイパーズの服を剥ぎ取ると、少女の肌を隠すようにかけてやる。
猿以下の存在に衣服など必要ない。
少女にしてみればレイパーズの服では嫌だろうが、あいにく他にないのだ。
陣太は心の中で謝った。
ここまですれば、後の仕事は1つだけ。
ワンボックスカーの周りに転がったレイパーズへの性教育の最終段階。
「イエス、セックス。ノー、レイプ。断罪・ナッツクラッシャー!!」
飛翔。そして振り下ろされるかかとはまさに裁きの鉄槌。
正確無比な4連撃がレイパー4人(運転手と車両後部の3人)、都合8個の金の玉を情け容赦なく踏み潰した。
既に気絶していたレイパーズが激しく痙攣し、泡を吹く。
「新宿二丁目から出直しな。」
近づいてくるパトカーのサイレンをBGMにして、陣太は再び夜の闇の中へと消えていった。
無論、行き先は風俗店。依然として股間はギンギンである。
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