とあるS級冒険者は勇者パーティーに入る。

長島ブロッコリー

勇者パーティーに誘われた

 帝都グラーリン ギルド本部にて


「マルタさん!仲間になってください!」


 は?

 どういうことだ?えぇ?

 ひょっとして人違いなんじゃ...

 いや、待てよ?マルタ・ハーネリットっていってたし...

 まぁ、困惑してても進まねぇか。

 一旦は状況整理が大切だってばあちゃんが言ってた気がするしな。状況整理だ。


 俺、マルタ・ハーネリット。 S級冒険者、29歳。

 クエストを終わらせたら勇者タケル・ミヤガワに仲間になってくれと言われた。

 で、俺は絶賛困惑中。


 よし、完璧だ。でもどうすればいいんだよ。

 あー、でも馬鹿じゃなければ分かるんだろうな。

 クソー!


「どうしました?マルタさん」

「あぁ、いや、なんでもねぇ。」


 ええっと、どうする?

 考えろ!考えろ!考えろ!

 俺には妻もいないし、必要な物は全部持って来た。

 しかも勇者パーティーに入ったら強い勇者が守ってくれる!

 あれ?よくよく考えたら良い事づくめじゃねかよ!おし!


「仲間になるぜ。タケル!」

「ん?あ、はい!」


 本当に勇者パーティーに入ったのかよ...

 まだ実感がねぇけど、最高だぜ!美人もいるらしいし行くしかないよな!


「マルタさん。来てください。私の家に行きます」


 お、家案内か。だがその前に...


「喋り方丁寧すぎねぇか?もっと気楽にしてもいいんだぜ?俺らもう仲間なんだからよ」

「え?あ、そうか!もう敬語じゃなくていいんだよな?」

「あぁ、いいぜ!じゃあ改めてよろしくな!タケル!」

「あぁ。マルタ!」


 おう。これだよこれ。こんな感じがパーティーメンバーってやつだからな!


「じゃあついて来いよ。」


 そう言うとタケルはギルドの外に出て路地裏に向かって歩き始めた。

 俺も付いていった方がいいよな。

 路地裏の方に家があんのか?

 まさかとは思うが...騙されてるんじゃねえよな。

 一旦殺気飛ばしてみるかね。勇者なら慣れてるだろうし。よっと。

 殺気を飛ばすとタケルは笑顔でこちらに振り向いた。


「なんかしたか?」


 とんでもなく強い殺気を込めた声でタケルが言った。

 ハ、ハハハ...やっぱ勇者かよ...

 それにしてもこのマルタを怖がらせるとはすげぇ殺気だな...

 だが、それでも俺は言う。


「い、いやぁ、悪かったよ!俺が悪かった!悪気はなかったんだが...騙されてるんじゃあねぇなと思ってよ...」

「何だ。そういう事なら良いんだ。でも...」

「なんだよ。悪かったって...ハハハ。」

「ーー次やったら、命は無いぞ。」

「あ、あぁ!もうしねぇよ...ハハハッ。」


 そんなやりとりをしていると、俺らの前には豪邸があった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とあるS級冒険者は勇者パーティーに入る。 長島ブロッコリー @neganoken

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ