第6話 香水

一樹と別れた次の日。


絢は一つ決心したことがある。


それは、

「一樹と同じ香水を探すこと。」




今までも何度も考えたけど、

いろんな香水が世の中に流通している現在いま

探し出せるわけがない…



そう思っていた。



だが、昨日、一樹がふと口にした。



俺、○○で香水買ってるんだ。

次新しい香水、カミさんが一緒に探しに行こうって言ってて。



奥さんのことを口にするのは癪だけど、

香水を買っているお店をちょっとでも知れたことは、

大きな成果だ。



早速、その香水が売っているであろうお店に向かった。



店内に入り、まずエスカレータ横の店内案内図を確認する。



香水売り場は…


3階か。





絢は少し小走りに向かった。


早くあの香りの側に行きたい…

毎日あの香りが近くにあったら…



気持ちがやや焦った状態で

3階に着いた。




香水売り場はエスカレータを降りた目の前だ。


男性向けの香水を物色している女だと思われるのが嫌で、

私は右手薬指にしていた指輪をわざと左手薬指に付けなおし、

スマホを見るふりをしながら、一心不乱に一樹と同じ香りを探した。



これかな?と感じたものを

片っ端から嗅いでいく。



でも香水って何度も嗅いでしまうと

香りが分からなくなってしまうのだ。


なので、あらかじめネットで男性向けの香水について下調べをしていった。


35〜40代

男性


香りは柑橘系ではない



など。


思い当たる点を必死になって探した。



それに、絢は、香水の知識なんて今まで全くなかったから、

香水についても詳しく調べた。



すると、香水には3段階の香り立ちがあることを知った。


絢は、この記事を読んですぐ思った。



私が、一樹と仕事帰りに飲みに行く時間帯は、香水をつけてから

およそ12時間は経っているはず…



とすると、香水のラストノートの部分の香りを思い出して、

選んだらいいんだ。


そんなことさえも考えていた。



ふと手にしたブランド品の香水。


いろんな種類の香水がある。



陳列棚の一番右の香水から順に確かめる。



これは違う。




これも違う…




…。



これだ…。





そう、絢は一樹と同じ香りであろう香水を見つけたのだ。



…。あった…。



一樹の香り…。




香りを確かめた瞬間、隣に一樹がいるかのように

心がすーっと軽くなったような気がした。



でも、ほんのちょっと一樹の香りとは違う。


それもそうだ。

一樹は愛煙家で、たばこのにおいを纏っているのだ。



それに、一樹自身の香りだってあるだろうし…。




それに最近、一樹は、たばこの銘柄を変えたことさえ絢は知っている。



俺は、この銘柄しか吸わないんだ。



そういうことさえ言っていたのに…。




とりあえず、一樹と同じ香りの香水を探し出せた絢は

迷いなくレジへと向かった。





…。




ありがとうございましたー。




レジをあとにし、絢は家へと帰っていった。

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