分水嶺

みねね

分水嶺①

 気づくと僕は、いつも分水嶺の上を歩いている。


 右足を包む水は後ろから流れ、右斜め前へと進んでゆく。左足を通り抜ける水は左斜め前だ。両足の間には、水を左右に分ける境目がずっと長く伸びている。

 一般的なT字型の分水嶺と違い、Y字型とでもいうべきか。不思議と右と左の水系のあいだには、どこまで行っても跨げるほどの細い境しかない。しかし大きな境だ。左足に流れる水は、二度と右足に流れる水にはなれない。逆もしかり。広い広い海に出て混ざり合ってしまったとき、はじめて再開を果たすのだろう。それが明日のことか、一か月後のことか、そもそも水路は行き止まりで、起りえないことなのか僕にはわからない。


 ぱっと見分水嶺とは思えない水流に足を浸していることもある。T字の横棒と縦棒との交点にある一般的な分水嶺、その点が無限に細長く伸びている感覚だ。


 そういうときは、右と左の足を流れてゆく水流の違いを感じる。この感覚のみで、細長く流れる水たちが、近い将来違う水系に属することを知る。


 とにかく大事なことは、足を冷やす水は進路が決まっているということだ。両方に片足ずつを浸す僕はまだ決まっていない。

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