75.赤竜フレアドラゴン

「全色竜の討伐か。なかなか骨の折れそうな作業だな」


 フォレスト先輩は色竜の強さがわかっているのか、少し及び腰だな。


「まあ、そんなこともないと思いますよ。この装備を使えば、割とさくさくいけると思います」

「だといいのだが……エイトも参加するのだよな?」

「もちろん。俺も自分の刀がありますので」


 俺の刀も竜魂装備のひとつだ。

 要するに、色竜を討伐しないといけない。


「ふむ、そうなると、色竜討伐に竜墜砲は使えないか」

「ああ、多分使えますよ。理論上、一撃でも色竜に攻撃を加えていればいいはずなので」


 さすがにオリジナル武器のことだから、試してみないとわからないことだらけだ。

 とはいえ、最初に行く竜はそこまで強くもないし、二周することになってもなんとかなるだろう。


「そういうことならば、なんとかなるだろう。だが、さすがに色竜ともなるとあまり余裕はないからな」

「大丈夫ですって。この装備があればなんとかなります」

「装備頼りというのも恐ろしいが……行ってみるとするか。どこから行くかは決めているのかね?」


 どこから行くのか、これは重要だよな。

 一言で色竜とひとくくりにしても、強さの質は大分異なっているわけだし。

 でも、俺は自信満々にこう言った。


「最初の獲物は決まっています。赤竜フレアドラゴンです!」


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「ここがフレアドラゴンのフィールド……とってもあっついね」


 レイがやや気だるそうに言葉を放つ。

 フレアドラゴンのボスバトルフィールドは、一面をマグマに覆われた岩場の上で行われる。

 マグマの中を移動することもあるのだが、そのときは継続ダメージを受ける仕様だ。

 あと、火属性耐性がない場合も継続ダメージが入る。

 そのため、ブルー先輩とサイ姉さん以外は紅玉幻竜装備、ブルー先輩とサイ姉さんはアクセサリーで耐性をつけている。


「それにしても、本当に最初がフレアドラゴンでよかったのかね、エイト。フレアドラゴンは攻撃力がかなり高いと聞いているが」


 フォレスト先輩が不安そうに聞いてくるが、今回はこれで間違いがないのだ。


「大丈夫ですよ。フレアドラゴンは攻撃力こそ高いですが、ほかの数値、とりわけHPと防御力は低めです。なので、一気に攻めてしまえばこちらにも勝機は十分にあります」

「短期決戦が重要という訳か。作戦はどうするのだね?」

「まずは基本ですが、ブルー先輩にタゲをとってもらいます。そのあとは全員で攻撃。ある程度ダメージを与えたら、ダウンをとれるはずなので、そのときに一気に大技をたたみ込む感じですかね」

「……大雑把だが、大丈夫か?」

「大丈夫、大丈夫。さあ、行きますよ」


 普段と違い心配そうなフォレスト先輩を押し切り、バトルフィールドに足を踏み入れる。

 すると、マグマの中からフレアドラゴンが飛び出してきた。

 さあ、狩りの始まりだ!


「まずは私だねー。いくよー」


 ブルー先輩が、移動しながら塔盾の固有スキルを発動する。

 その効果によってフレアドラゴンはつり出され、いい感じにつり出されていった。


「ここからは私たちの出番だね! さあ、新しい武器の効果、試させてもらうよ!」

「私も頑張っちゃおうかしら。せっかくの新しい斧だしね」

「ダンナの武器だし、ハズレはないはずですが、切れ味試させてもらいますぜ」


 近接陣がそれぞれフレアドラゴンの後ろ足に向けて攻撃を始めた。

 フォレスト先輩もコンパウンドボウを取り出して射撃を始めたし、俺もブルー先輩を回復できる位置からボウガンで攻撃をする。

 弱点は喉元の逆鱗らしいけど、いまは狙えないから目を狙っての射撃だ。


「っと、拡散ブレスか。これはこの位置だと避けられないから、ガードしなくちゃ」


 フレアドラゴンを含めて、色竜には何種類かのブレスがある。

 今回の予備動作から使ってくるブレスは、拡散ブレスと呼ばれるもので、前方扇状に広く攻撃してくるものだ。

 タンクは、ちゃんとガードすればそこまでダメージを受けないパターンの攻撃でもある。


 短い予備動作から放たれるブレスは、俺とブルー先輩を飲み込んでいった。

 それぞれ、ダメージを受けたが……俺が受けたのは四千ほど、ブルー先輩は二千くらいしか受けていない。

 ブルー先輩は少し首をかしげる動作をしたが、自分でポーションを使って回復を行い戦闘を再開した。

 俺も、回復しておかないとな。


「エイト、なんでお前まで拡散ブレスを受けて平然としていられる?」

「ああ、フォレスト先輩。このボウガンのガード機能ですけど?」


 このボウガン、竜墜砲の名前は伊達じゃない。

 竜を倒すための装備だけあって、ガード機能もそのための特注品だ。


「これのガード機能って、ドラゴンブレスを受けるために作ったものなんですよ。おかげで、拡散ブレスくらいのダメージならピンピンしていられます」

「……そのようだが、お前までブレスの有効範囲にいる必要はなかったのではないか?」


 あー、そのことか。


「まあ、範囲外にいることもできるんですけど、ブルー先輩を回復するって視点からだとめんどくさいんですよね。だったら、拡散ブレスを防げたほうがいいと思って」

「つまり、この状況まで計算して作った装備だと」

「そう言うことです。……あ、ブルー先輩! テイルプレスがきます! 後ろに下がってください!」


 フォレスト先輩と話している間に、フレアドラゴンの強攻撃がくるところだった。

 その名前の通り、尻尾をたたきつけて攻撃してくるテイルプレスも理論上は耐えられるのだが、結構ギリギリなので回避してもらったほうが安全だ。

 ブルー先輩は少しかすってしまったようだが、なんとか尻尾の直撃は避けられたようだ。


「さあ、まだ戦闘は続きますよ」

「だな。言いたいことはあるが、それはまた今度にしよう」


 その後、吹きつけブレスと呼ばれる特殊行動を行う前の隙に逆鱗を打ち抜くことができ、ダウンを奪うことができた。

 フレアドラゴンがダウンしている間に、竜魂之刀を装備して連閃で一気にダメージを与えていく。

 滅竜属性の乗った連続攻撃は、一撃ごとに威力を増していき、かなりのダメージを積み上げることができた。

 そして、ダウンから立ち直ったフレアドラゴンだが、もう瀕死と呼べる状況になっており、全員の一斉攻撃で倒されることとなった。


「おー! 本当に色竜を倒すことができたよ!」

「ダンナを疑っていたわけじゃないが、本当に強いなこの武器」

「やっぱり、武器が違うとここまで強くなれるのねぇ……」

「……この鎧すごいなぁ。ここまで頑丈だなんてー」

「……いや、一撃の威力が高い弓がほしいと言ったのは私だが……本当に作ってくるか?」


 それぞれが勝利の余韻をかみしめているようだが、お楽しみはこれからだ。

 俺の予想が当たっていれば……来た!


「っ! なんだ!」


 全員の竜魂装備が赤い光を放つ。

 光が収まったときには、半透明だった竜魂装備の内側に赤い光の玉が漂っていた。


「やった! 赤竜の竜魂ゲット!」

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