仮面鍛冶士は今日も装備を作る ～Braves Beat～

74.完成、竜魂装備

「なんだね、エイト。私たちを全員集めての発表とは」

　レイがやってきてから数日後、『リーブズメモリーズ』全員が都合のつく時間に集まってもらった。

「すみませんね、フォレスト先輩。今日は皆にプレゼントがあって」

「ふむ、プレゼントか。……ああ、オリジナルアイテムコンテスト用の装備ができたと言うことか」

「話が早くて助かります。それで、一度皆に渡すので、使い勝手を試してほしいのと、装備の完成に協力してほしいわけで」

「……装備の完成？　私たちに鍛冶はできないが？」

「まあ、その辺もあとで説明します。まずは、フォレスト先輩の武器から渡しますね」

　そうしてインベントリから取り出したのは、宝石で作られたかのような弓。

　フォレスト先輩用にコンパウンドボウにしてある。

「ほほう……これは、なかなか」

「名前は『竜魂之戦弓』です。見た目もいいですが、攻撃力もなかなかですよ？」

「ほう。……確かに、攻撃力も高めだな。滅竜属性がついている以外はシンプルだが、扱いやすそうだ」

「そこはおいおい。あと、武器の固有スキルに『竜魂の一矢』というのがあるはずです」

「うむ、確かにあるな」

「それは、TPを大量に消費して攻撃力の高い滅竜属性の矢を放つスキルです。ドラゴン以外にも使えるはずですが、ドラゴン特攻スキルですよ」

「了解した。……それにしても、意地でもドラゴンを滅ぼそうとしていないか、この装備？」

　その一言には苦笑するしかない。

　コンセプトはそれだし。

「素材に秘密がありますので。次はレイかな」

「はーい！　待ってました！」

「おや、レイはこのことを知っていたのか？」

「少しだけですけど、知ってましたよ。エイト君のところに依頼をしに行ったとき、たまたま教えてもらって」

「なるほどな。レイの装備はもちろんレイピアだな？」

「そうですね。『竜魂之細剣』になります」

「おお、前に見せてもらったイメージ画と一緒だ！」

　それは当然だろう。

　このゲームは、条件を満たすイメージ画があれば、その通りに装備を仕上げることができるのだから。

　これでも、小物とか静物画には自信がある。

「刀身が白の半透明で、鍔からグリップはつや消し金色の半透明かー。きれいだねぇ」

「見惚れるのもいいが、性能も確認してくれよ。それから、固有スキルは『竜撃の一閃』だ。自分の前方に貫通効果のある衝撃波を飛ばすスキル……のはずだ」

「エイト君、そこは自信を持って言い切る場面じゃない？」

「試したことがないから仕方がないだろう。次、サイ姉さんね」

　満面の笑みを浮かべたレイを下がらせて、サイ姉さんを呼ぶ。

　サイ姉さん用はバトルアックスだ。

「サイ姉さんのバトルアックスは『竜魂之破砕斧』になります。固有スキルは『竜墜の一撃』、強力な前方攻撃です」

「ありがとう、エイト君。これだけの装備を用意してもらえるなんて、お姉さんうれしいわー」

「そう言ってもらえると、こちらもうれしいですね。ちなみに、かなりの重量になりますけど、扱えそうです？」

「多分大丈夫よ。任せておきなさい」

　バトルアックスを抱えて、サイ姉さんは席へと戻っていった。

　さて、次は……。

「お次はダン、お前な」

「了解です、ダンナ。……でも、俺までもらっていいんですか？」

「ギルドのほうを手伝ってもらってるんだから気にするな。それに、アイテムコンテストに出品する上で、ひとつでもアイテムは多く用意しておきたい」

「わかったぜ。それで、俺は双剣ですかい？」

　さすがにわかるか。

「ああ、ダンのは『竜魂之双剣』だ。固有スキルは『竜魂共鳴』、TPを消費し続ける代わりに時間経過とともに攻撃力がアップし続けるバフがかかるらしい」

「そいつはまた使いどころが難しそうですね。楽しみだ」

「ああ、うまく使いこなしてくれ」

　白と黒、一対の剣を受け取り、ダンも自分が座っていた椅子に戻っていく。

　さて、最後は。

「ブルー先輩、お待たせしました」

「本当だよー。忘れられたのかと思ったじゃない」

「ブルー先輩のは数が多いので、最後にさせてもらいました」

　ブルー先輩だけは三つだものな。

　説明も増やさなきゃだし大変だ。

「それで、私にはどんな武器なのー？」

「そうですね。まずは武器から渡しましょうか。『竜魂之戦槌』です。固有スキルは『竜の血潮』、しばらくの間HPが継続回復するようになります」

「私のだけ攻撃系のスキルじゃないんだねー」

「攻撃系のスキルがよかったですか？」

「ううん、こっちのほうが役に立ちそうでいいよー」

「ならよかった」

　まずは、メイスを渡す。

　ブルー先輩は、数回振ってバランスを試してからインベントリにしまった。

「さて、ブルー先輩にとってはここからが本命ですね」

「おー、ということは、防具もあるんだー」

「ええ、金属装備なので鎧と塔盾も準備させてもらいました」

「さっすがー。それで、鎧と塔盾は？」

「まずは塔盾から見せますね」

　俺はインベントリから塔盾を出す。

　俺の身長よりも高い塔盾は、作ってても苦労したよ。

「名前ですが『竜魂之塔盾』になります。固有スキルは『竜の咆吼』、敵の注意を引きつけると同時に自分の防御力がアップするバフがかかります」

「それはすごいねー。形も取り回しやすそうでいい感じだよー」

　盾のほうはお気に召してもらえたらしい。

　さて、本命の全身鎧だな。

「次が最後ですね。全身鎧になります」

「はーい。どんな感じなのー」

「ええと、こんな感じになります」

　取り出した全身鎧は、どちらかというと金属鎧よりも革鎧に近いイメージの鎧だった。

　全身を包み込むのは変わらないが、ゴツゴツした印象は大分薄れている。

　さて、ブルー先輩のお気に召してもらえるといいのだが……。

「ブルー先輩、デザインのほうはどうですか？」

「え、うん、いい感じだねー！　全身鎧っぽくないけど、これでも全身鎧なんでしょー？」

「そうですね。素材が特殊なので、金属よりも革に近い質感を再現できました。あと、デザインを起こしたのは、布装備を作っているエミルなので、デザインもバッチリだと思いますが」

「うんうん、普段はゴツゴツした鎧しか装備できないから、新鮮だよー。ありがとうね、エイト君」

　これだけ感謝されると、苦労したかいがあるというものだ。

　さて、残りの機能も説明しないと。

「鎧の名前ですが『竜魂之姫鎧』です。女性用として仕上げたので、この名前にしました。あと、固有スキルなんですが……」

「なにか問題があるのー？」

「問題というか……固有スキル名は『竜鱗の守護』TP一万を消費して五秒間完全無敵になります」

「それはすごいね！」

「まあ、その分、反動もすごいというか。スキルを発動してから十秒間、どんな方法でもTPが回復しないそうです」

「……それは大変だね」

「なので使うタイミングは間違わないでください」

「うん、わかったよー。すごい装備をありがとうねー」

　さて、これで全員に装備が行き渡ったな。

　……と思ったら、レイがうらやましそうにブルー先輩をみていた。

「レイ、どうかしたのか？」

「エイト君、私たちには防具ってないの？」

　……ああ、そこか。

「正直、作る時間が足りなかったから作ってない。あと、試しに髪飾りを作ってみたけど、性能がそこまで高くないから、急いで作る必要もないかなって」

「……そういうことなら仕方がないか」

「さて、全員分の装備はそろったな。それで、これでも装備はまだ完成していないんだな？」

　フォレスト先輩の確認にうなずく。

「まだ器だけできた、と言うところですかね」

「器だけ？　どういう意味だ？」

「これから魂を込めに行かなくちゃいけないってことですよ」

「……なるほど、私たちに手伝ってほしいこととはそういうことか。それで、なにをすればいいんだ？」

「わかりやすく言ってしまいますね。これらの装備を使っての全部の色竜の討伐です」