6.ゲーム同好会_1
本日3話公開の2話目
前話をお読みでない方はそちらからどうぞ
////
「相変わらず賑やかだね、葉月。……それで、そっちのふたりは?」
「《Braves Beat》のプレイヤーです! ええと、こっちの人が木場君で、そっちの人が笹木君です!」
「そうか、そういうことを聞きたかったわけじゃないんだけど……まあ、入口で話すのもなんだし、部室に入りなよ」
「はい、失礼します!」
先に部室内にいた女子生徒に促されて、水鏡さんは部室に入っていく。
……これは俺たちも入らなくちゃいけない流れかな。
「どうするよ、琉斗」
「どうするもなぁ。入るしかないんじゃないか?」
「だよなぁ。昼飯、遅くなっちまうな」
和也が気にするのはそこなのか。
小声で話していたところ、室内から先程の女子生徒の声がした。
「男子ふたりも突っ立ってないでお入りよ。別にとって食うわけじゃないからさ」
「……入るか」
「そうしよう」
ゲーム同好会の部室に入ると、そこには水鏡さんを含め四人の生徒がいた。
制服のネクタイを見る限り、一年生は水鏡さんだけで、ほかの三人は先輩方だ。
今日入学したはずの水鏡さんが、ゲーム同好会のことを知っているとかちょっと気になるけど、とりあえずおいておこう。
「ようこそ、新入生諸君。私はこの同好会の会長、
先程、水鏡さんの相手をしていた女子生徒が自己紹介をしてくれる。
……この人も背が高いな。
「あ、ええと」
「ああ、君らの自己紹介はあとで構わないよ。先に私たちゲーム同好会のメンバーから自己紹介させてもらおう。次、雨山な」
「はいはい。私は
「次は俺だな。俺は
先に部室にいた先輩方が自己紹介を終えると、会長の三海先輩が続けて状況を説明してくれる。
「……今日いるのはこの三人だな。ほかにも何人か所属しているメンバーはいるが……まあ、ゲーム同好会だ。部活よりもゲームに時間を割きたいというメンバーがほとんどでね」
「まあ、俺たちも入学式しかない日だったから、早く帰るつもりだったんだが、妹がなぁ……」
「妹?」
そういえば、水鏡って同じ名字だけど……。
「そ。君を引っぱってきた葉月は俺の妹。……で、なんで引っぱって連れてこられたんだ?」
「……それ、俺も聞きたいです」
「……また、葉月の悪い癖が出たか。なんか、申し訳ない」
軽く頭を下げる水鏡先輩。
……で、結局、なんで俺は手を引っぱられながらここに連れてこられたんだろう。
「で、葉月ちゃん。なんであの子の手を引っぱりながらここまできたの?」
水鏡さんに雨山先輩が事情を聞いていた。
「うーん、特に理由はないです。教室で話をしていた流れで?」
「……葉月ちゃん」
雨山先輩も少し呆れている様子。
階段を引っぱられながら降りるのは、なかなかスリルがあったよ。
「……なんか本当に、妹が済まないな」
「いえ、もう済んだことですし」
「そっか、それじゃあ、この話は終わりだな。で、なんでこのふたりを連れてきたんだ、葉月?」
そう、なんで俺たちがここに連れてこられなきゃならなかったのか。
その話を振られた水鏡さんは、自信満々に答える。
「さっきも言ったけど、このふたりも《Braves Beat》のプレイヤーさんなんだよ。それも、木場君のほうはとっても有名人なんだから!」
……そんなに俺って有名人なのか?
単なる引きこもり職人なんだけど。
「……へえ、それは本当かい?」
三海先輩が興味を持ったようで俺のことを見つめてくる。
ただ、俺の身長が大分低いせいで、見下ろすような角度になっているが。
「……失礼なことを聞くけど、君って本当に高校生男子だよね? 女子だと言っても通りそうな身長だけど」
「……よく言われます。いまだに、小学生に間違われることもあるので」
「確かに、童顔だし服装次第では小学生でも通りそうだ。……いや、失礼」
実際、間違われることなんて多々あるし、気にはしない。
……いや、ちょっとは気にするけど。
「話を戻そうか。君はそんなに有名なプレイヤーなのかい?」
「そんなことはないと思うんですけど……」
「なに言ってるの、木場君! エイト=ダタラって言えば知る人ぞ知る鍛冶士じゃない!」
水鏡さんの一言で俺に注目が集まる。
「……ほう、君がエイト=ダタラか。確かに低身長のプレイヤーと言う噂には当てはまるが……本当かな?」
「ええ、まあ。っていうか、どんな噂ですか?」
「自分の話も知らないのかい?」
「基本、ゲーム中は工房に篭もりきりなので。あとは、職人専用掲示板をのぞくくらいしか」
「なるほど。それは情報に疎そうだ」
三海先輩は大げさに肩をすくめる仕草をしてから、話を続ける。
「エイト=ダタラと言えば、
「……噂って、無責任ですね」
「私もそう思う。それで、噂はどこまで正確なんだい?」
「伝説級のレシピなんて持ってませんよ。そもそも、そんなの実装されているんですかね?」
「さあ? 噂は噂、尾ひれ背びれがついて面白いほうがよく伝わるさね」
俺の知らないところで随分と話が盛られているようだ。
前三つはほぼ事実だけど。
「それにしても、ユニーク装備も作製できるとは驚いたよ。……さて、そろそろ君たちの自己紹介もしてもらおうか」
「あ、そういえばしてませんでしたね」
というわけで、俺と和也も自己紹介をすることに。
水鏡さんのおかげで、あまり緊張せずに自己紹介できたかな。
「ふむ、木場君は正式版開始時点からプレイしていたのか。……こう言ってはなんだが、高校受験は大丈夫だったのかい? うちの高校はそれなり以上にランクが高い高校だったはずだが」
「そこはなんとか。普段から予習と復習をしていれば、問題なかったですよ」
「なるほど。笹木君が《Braves Beat》を始められなかった理由とは真逆というわけだ」
「そうなんですよ。コイツ、特別勉強ばっかりしているわけじゃないのに成績がめっちゃ良くて」
「まあ、そういう人間はいるさ。私もそうだからな」
「へ?」
三海先輩も俺と同類か。
驚いた様子の和也に、水鏡先輩から追撃が入る。
「三海は学年順位五位以内から落ちたことがないんだよ。……まったく、塾通いとかもしてないくせに」
「そこは要領よくできるかどうかの差じゃないかな? なあ、木場君?」
「そうですね。その通りだと思います」
「……勉強ができる奴らはこれだから」
「本当っすね、水鏡先輩」
なんか、和也と水鏡先輩が意気投合している。
……水鏡先輩もあまり成績は良くないのかな?
「お、そうだ。俺のことは絢斗先輩でいいぞ? 葉月もいることだし、水鏡じゃわかりにくいからな」
「あ、それじゃあ、私のことも葉月でいいよ。私も名前で呼ばせてもらうから。よろしくね、琉斗君、和也君」
「え、ああ、よろしく」
「うーん、まあ、いいか。よろしく、葉月さん」
なにやらトントン拍子に話が進んでいって状況について行けないけど、なにがどうなっているんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます