優しい友達

美咲

第1話 親友

〜親友〜


「私ね、好きな人が出来たんだ!!」

そう嬉しそうな顔で親友の恵美は

私の部屋のベッドに腰をかけながら言う。


ズキッとした心と表しようのない不快な感情に襲われつつ、一瞬で表情を作り、笑顔で「良かったね!どんな人なの??」と質問すると、


「尚先輩!!」と彼女は即答した。

相変わらずキラキラした目で話す恵美は

私のこの気持ちに気付くはずもなくそのまま

話を続けた。


「尚先輩、カッコいいし優しいし、頭も良いし

バトミントンも上手だし尊敬出来るところしか

ないもん!!」


恵美は、今年バトミントン部に入部して、1つ学年が上の尚先輩に優しく接して貰っているうちに

どうやら彼に惚れてしまったようだ。

文武両道で身長も185センチあり、顔もそこそこ良く、性格の明るさも兼ね備えているあの男は

女子たちの間で絶大な人気を誇っている。

でも、私は知っている。彼がどういう人間かを。


「尚先輩、モテるし、ライバル多そうじゃない...??」


私がそう言うと、恵美はむっとした顔をして反論する。

「それはそうだけど!!!でも、私今度、デートに誘われたもん!!」


''デート''その言葉に私は思考が一瞬停止する。

「ど、どこにデートに行くの??」


自分でも少し動揺しすぎたかな?と思ったが

尚先輩にデートに誘われて浮かれている恵美は

私の変化には全く気付かない。


「今度の日曜日、お昼ご飯を食べに行って、その後は尚先輩の家で、一緒に映画みるの!!」


初デートが家...??

密室で2人っきり...。

男と女である限り、何もないことはないだろう。

恵美だって、先輩の家にいくこと=そういうこと

だって期待しているはずだ。


「そっか。楽しんで来てね!」


心の中の黒い感情を上手く隠して、私は目の前にいる彼女にそう告げる。


「また、尚先輩とのデートが終わったら

琴葉に報告するから!

じゃぁ、また学校でね!」



言いたいことを言い終えて満足したのか恵美は立ち上がり、ベットの下に置いてあった自分の

スークルバックを持ち、私の部屋を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る