第138話 帝国軍VS王国騎士団
”沈まぬ太陽の剣”(サント・ルス)
アルフレートの持つ、王より賜りし聖剣の一振り。金色の柄に白銀の刀身を持つ美しきその剣をアルフレートはピタリと正眼に構える。
その威風堂々とした姿を見て、レイ将軍は嫌な予感を覚えた。
敵軍は崩壊。こちらの遠距離部隊は先ほどの謎の光線で犠牲が出たとはいえまだ半数以上残っている。
どう見ても戦況は帝国側の有利、しかしどうにも勝ちを確信できない・・・目の前に佇む騎士がそうさせてくれない。
「・・・っく! スマッシャー部隊構え! 史上最強の男とはいえども敵は一人だ! 弾幕で押しつぶせ!」
レイ将軍の指示で、スマッシャー部隊は次弾を装填してその銃口を一斉にアルフレートへと向ける。
しかし当のアルフレートは剣を静かに構えたまま動く様子も見せず、それどころか静かにその瞳を閉じた。
(・・・何を狙っている? ・・・否、踊らされてはならない、戦況はこちらが圧倒的に有利なのだから)
将軍はぶるりと強く顔を振って不安を振り払う。キッと鋭い目線でアルフレートを睨み付けてスマッシャー部隊へと指示を出した。
「撃てぃ!」
放たれる無数の弾。
やがてそれらは正面に立つアルフレートの肉体を抉って肉片へと変えるだろう。
アルフレートは迫り来る驚異に、しかし慌てる事無く静かに構えた剣を上段に構える。白銀の刀身にポッと炎が点った。
カッと目を見開くアルフレート。全身の筋肉を収縮させてグッと力を溜める。聖剣の刀身に宿った炎がその明るさを増した。
「燃え上がれ・・・”沈まぬ太陽の剣”!」
振り下ろされる聖剣の一撃。
剣の刀身から生み出された灼熱の炎が、巨大な波となって迫り来る弾丸を飲み込み、勢いが衰えぬまま帝国軍を飲み込まんと進行する。
レイ将軍は迫り来る巨大な炎の波を見据えて、悔しそうな顔でギリリと歯を食いしばった。
「・・・ここまでか」
そして波が帝国軍を飲み込む直前、将軍は懐から取り出した謎の球体を地面に叩きつけてその場から姿を消したのだった。
「申し訳ありません陛下・・・我が配下の王国騎士団、全滅致しました」
ボロボロのアルフレートは国王の前に出て深々と頭を下げた。それはアルフレートが騎士団長に任命されてから初めての大失態だ。
王国騎士団は国王の直属の部隊、王の刃である。それを全滅させてしまった責任は何よりも重い。
どんな罰でも受け入れる覚悟で深く頭を下げたアルフレートに、フスティシア王国第十二代国王セサル・フエルテ・フスティシアは大きくため息をついてから首を横に振った。
「頭を上げよアルフレート・・・余はお主を責める気はない。帝国の有する新兵器が想像以上であった・・・それを撃退できただけでも幸運だと思わなくては」
帝国の用いた新兵器は恐るべきモノであった・・・。もしあの兵器が量産可能であったのなら・・・今はまだ大丈夫でも、近い将来必ず王国は帝国に敗北するだろう。
「しかし、帝国側も最高戦力であるレイ・ヴァハフント将軍を失った事は大きな痛手だろう。しばらくは攻めてこないと見て良い・・・その間に例の兵器について対策をしなくてはなるまいな」
苦い顔をするセサルにアルフレートは静かに頷いた。
アルフレートが最大出力の聖剣の一撃で敵軍を焼いてしまったため、敵軍が用いていた新兵器を回収する事ができなかった。
手痛い失敗だ。回収することができていたのなら解析もできただろうに。
「・・・それで陛下、戦の前に話がでていた勇者の探索についてはいかが致しましょうか? 騎士団を失った今、私が王国を離れる事は得策ではないと考えますが」
アルフレートの言葉に、セサルは少し考えるような様子を見せてから口を開く。
「・・・・・いや、前言は撤回せぬ。アルフレートよ、お主は勇者探索に向かうと良い」
「陛下・・・しかし・・・」
「いいのだ。勇者探索の任も急を要する。それに先ほども言ったように帝国の件についてはしばらく時間があるだろうからな」
王の刃たる騎士団が失われたのは痛いが、それでも先の戦いで温存していた軍はまだ健在だ。ならばすぐに国がどうにかなる心配もないだろう。
「アルフレートよ、勇者を見つけ出して見事世界を救ってくるのだ」
「はっ、陛下の仰せのままに」
◇
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