第136話 帝国軍VS王国騎士団








 史上最強の騎士アルフレートは、目の前の戦況を確認して満足そうに一つ頷いた。





 確かに敵が使う未知の兵器は驚異的だった。しかし同時に弓矢や魔法、投石といった機知の遠距離攻撃と同じような対処法で対処できると考えたアルフレートの予想も概ね当たっていたのだ。





 ならば慌てる必要は無い。アルフレートはそっと微笑む。





 彼ら王国騎士団は少数精鋭で数々の大国を相手取って勝利を収めてきた。もちろん対遠距離の戦い方も十分習熟している。





 そして接近戦になれば騎士団に勝てる軍団などいないのだ。もはやこうなってしまっては騎士団の勝ちは揺るがない・・・アルフレートが必勝を確信していると敵軍が予想外の行動に出てきた。





 騎士団の接近を見て後方に下がっていた例の遠距離兵器を持つ部隊が再び前線に出てきたのだ。そしてアルフレートは敵軍の指揮官の何かを覚悟した表情を見た瞬間に全てを悟った。敵は最後の手段に出てくると。





(まさかこのタイミングで? 判断が早すぎる・・・まだ歩兵戦が始まったばかりだぞ!?)





 アルフレートは慌てて戦っている部下達に大声で指示を飛ばす。





「例の攻撃が来るぞ! 守りを固めろ!」





 流石は世界最強の騎士団と言ったところか。その短い指示だけで何が起こったのかを悟った騎士達は戦闘を放棄して慌てて盾を構え始める。





 しかし、少し遅かったのだが・・・。





「撃てぃ!」





 敵軍の指揮官の怒鳴り声が戦場に響き渡る。同時に鳴り響く歯帝国軍の所有する未知の遠距離兵器達の発砲音。





 打ち出された無数の鉄の塊は、戦っていた帝国軍の歩兵をも巻き込んで一斉に騎士達に襲いかかった。





 構えた大盾の影に身を隠しながらアルフレートは悔しさのあまり唇を強く噛みしめる。誤算だった。まさか敵将がこれほどまで早く自軍を切り捨てる決断を下すとは。





 敵軍の遠距離攻撃が終わり、盾から顔を出して周囲の状況を確認する。





 味方の死者は全体の三分の一・・・負傷者はもう少しいるようだ。不意をつかれたとはいえ、王国騎士団が戦闘においてここまでの犠牲を出したのはこれが初めての事だった。相手の遠距離攻撃が矢や投石であればここまでの被害は出なかっただろう。





 新兵器の凄まじい威力に身震いをする。





 その脅威が分かったからこそもうこれ以上兵器を使わせてはいけない・・・幸いにも敵軍の歩兵部隊はほぼ壊滅状態、目の前に障害となるモノは無い。





「全軍突撃! もうあの兵器を使わせる隙を与えるな!」











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