第7話 お姉さんと私
「ただいまー!!」
と姉の声がする。
「おかえりなさいー!!」
私は慌てて玄関に行く。
「今日は少し遅かったね。珍しくお父さんも帰ってるよ。皆、ご飯食べずに待ってたのよ。連絡してくれれば良かったのに…。」
皆の心配をよそに、マイペースを保ってる
彼女は、なかなか連絡することはしないタイプだ。
「少し心配してたのよ。」
と母さんが言った。
「ごめん、ごめん、待った?!」
「携帯持ってるんだから連絡してよ。」
「はいはい、わかりました。」
周りなど、気にせず姉はさっさと食卓
に座った。
「いただきまーす。お腹すいていたわ。」
というと彼女がパクパクと食べだした。
「いただきまーす、もうペコペコだわ。」
と私も目の前にある煮物を箸でつまんだ。
いつもとかわらない食卓だが、父と母だけ
が黙り込んでいた。
テレビの音がにぎやかなせいで、食卓も
賑わっているように思えた。
でもあきらかに父の顔は深刻だった。
私は
「父さん、どうしたの?このギョーザ美味しくないの?まずい?」
ときくようにたずねる。
「そんな事、ないよ…。」
という返事に
「そうなの…。もう少し美味しそうに食べてよ。」
暑い空気の中、父は黙々と食べていた。
少しだけ眉を下げて、いろいろと思案してるように見えた。
それから、重苦しい時間が過ぎた。
父が箸を置くと皆に向かって言った。
「皆に話があるんだ…。」
父は動揺を隠せない様子だ。
「まぁ、よく聞いてくれ。僕の会社は有名な会社であちこちに支社もあるし工場も沢山ある。小さい時から君達は転勤しては家を移っていた。今回も又、すまんが引っ越しする事になりそうなんだ。ここに住まわせてもらっている家があるだろ…これが取り壊す計画がある。広くて住みやすい家が十二軒ほどあるが、取り壊してマンションにするそうだ。早急には引っ越さなくてもいいが、来年の二月頃には隣町の西宮市に引っ越す事になるだろう…。
残念だがもう決まった話だ。ミユの高校は通えると思うが、トモは中学校を変わらんといかんな…。」
と無情にも聞こえる父の声。
父の表情を見つめる中、
暗闇に流れ落ちていく。
嘘だ!!!!!
私は、何か大変な事態にこの家族は
陥ってる様に思えた。
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