第40話 : 片桐 理名の日記(裏話)
生まれた事を後悔してしまう程の痛みが、この世界には存在する。私はそれを、身を持って味わった。
何をされたか。それを語るには、まず一本の剣について語る必要があるだろう。
まず、私が持っていた
それは、
しかし伝承とは、何かしらの元となるエピソードが存在する事が多いが、私が持っていた剣はまさに、それに近い現象を引き起こした。
言葉にすれば、身を焼かれ、腐り、そして新たな神を産みだす生贄となる。そんな所だと思う。
まず、身体からは炎が上がり、神経を一本残らず焼き尽くす痛みが訪れる。しかし、肉体は神となる為に強靭さが追加され、焼かれる端から異常な
耐えられる痛みではないが、それだけなら、まだ良かったかもしれない。
次に訪れたのは、肉体が腐り、
これを見た瞬間、心が頭の奥に吸い込まれるような、耳が遠くなり、視界が
多分、心が壊れたのだと思う。
肌の下から
しかし、私の身体に宿った新しい力は、心が壊れる事を、許しはしなかった。
次の瞬間には目が覚めて、現状に関する正しい記憶が、頭に直接インストールされる。
思い出すと、今でも気分が悪くなる。
痛い。
死ねない。
終われない。
嫌だ。
もう無理。
無理。
無理――。
この世に、これ以上の地獄なんてない。
産まれて来た事を、今日までに死ななかった事を、私は後悔していた。
死にたい。誰か、殺して欲しい。
――そんな時に、私を救ってくれたのは、冷様だった。
あの
例えどんな事があろうとも、あの人の為に、この命を捧げたい。信念も、何もかもを。持てる全ての力を使って、冷様を支えていきたい。
きっと、今まで特殊な環境で育った私の持つ知識や経験は、この時の為にあったのだと、そう思う。
まだ一回しか会っていないけど、新しい生をくれた冷様こそ、私にとっての唯一神であり、全てを捧げる主君なのだと。
私は初めて、忠義という感情を、理解したのだと思う。
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