第2話  今日の僕に訪れた謎の出来事

「それ……それってどういう意味で言ってるの、烏丸さんー?」

さっきの言葉、具体的にどう解釈すればいいのかと戸惑っている僕であるので、そう聞いたんだが、

「簡単だよ、広司くん。私達の今の姿がまるで、男子そのものに見えるように想像すればいいだけ。」

ええーー!?なにそれー?絶対に無理だと思うよーー!だって、君達ってどう見ても女子じゃんー?目の前にいる人を脳内で別のものへと変換して想像するの絶対苦労するってーー。

「まあ、まあ、ものは試しということで、さっそく行こうよ、アフロ少年君~~~~。」

「えーー?ああ!ちょっとーー!なにするのーー?」

そう。今、あろうことか、強引にも日向さんが人懐こいニヤケ面しながら積極的になって僕の右脇に寄って、腋の下に自分の腕で絡ませてきて、それでもって僕をここから引っ張ろうとするーー!

あははっーーー!くすぐったいよーー日向さんーー!それになんか柔らかい感触がしてーー?え?というか、教室に残ってる二人の男子からすごい睨まれてるんだけど、僕なにかやっちゃったのかなーー??

「ちょーー!日向さんーー!?何するのーー?離せよーー!周りが見てるしーー!」

「にしし~~~。離せないよーー?今日はなんとしてもあたし達とお昼、同席してもらわなくちゃ~~~。」

「あはは………。ごめんね、広司くんー?こうと決めた日向さんは頑固すぎるから、私でも止められないよー?だから、今日一回だけ、長谷川くんおらずの屋上にてお昼を共にしてくれると………嬉しいなぁーーと思うのー。」

なんか烏丸さん、僕から目を逸らして頬を真っ赤にしてる様子だけど、心配になったので、日向さんに引っ張られてドキドキしてるやら熱くなってるやらになってるまま聞こうー。


「あの……熱でもあるのかな、烏丸さん?」

「ん?あ!いいえ、私はただ、広司くんが一緒にお昼に行ってくれるの楽しくて、少しだけ子供のように舞い上がってしまってるだけだよー?」

「そうー?それならいいけど……ひっひっーー!はっ!日向さんー?あまり強く引っ張らないでよー?くすぐったくて転んじゃいそうだー。」

「にしし!なら、あたし達と絶対にお昼を共にするのを誓ってくれると離すよー?どうする?」

もうー!仕方ないなー。このままじゃ、股間のあれにもやばくなってしまいそうなんで、大惨事を晒してしまう前にこの悪戯好きな小悪魔的な少女の言うことに従う以外道がないようである。


で、屋上に着いた僕達3人ではあるが……

「はむはむ………」

「……………」

これはどういう状況だよーー!?地面に座ってるんだけど、僕の真正面にいる日向さんは餡パンに夢中で僕と会話を交わせなくなってるし、右隣に正座で腰を降ろしてる烏丸さんもなんか頬を赤らめて無口となって、僕に声をかけなくなっただけじゃなくて、俯いていて僕と目を合わせようともしなくなったので、マジで居た堪れない気持ちになってるんだけどーー?

「………あの……烏丸さんー?」

場の雰囲気に呑み込まれそうな僕は堪えられないばかりに先に彼女に向かって声をかけてみるけど、すると、

「………ん?はーはひっー!なんでしゅか~?」

おうー!僕の呼びかけにびくっとなって舌かんでしまったなー、烏丸さん!初めて見たよ、それ!

「いや…その……なんか、急に前の咀嚼音以外は静か過ぎるかなーと思っちゃったので、なんとなく君の名前を呼んでしまったんだけど、驚かせてしまって悪かったなー。」

「いいえーー!全然ーーだよ!私はただ物思いに耽ってしまっただけだったので、気にしないで下さい。ごめんね、さっき誘ってあげたのに、いざ男子一人となった広司くんとお昼を共にすると、なんか緊張しちゃうというかーー。あははは……」

それをいう彼女だったが、でも僕達の他に日向さんが前にいるよねーー?二人っきりじゃないし、少しは落ち着いていてもいいのではないでしょうか?

「まあ、烏丸さん、落ち着いて下さいね?ほら、そこに日向さんもいるじゃないか?...って、今度はタルト食うのに夢中で聞いてないかーー。」

そう。今の僕らの正面にいる日向さんは幸せそうな顔でタルトを頬張ってる最中で、こちらの話に全然意識を向けてない様子である。


「あの……広司くん。その……」

ん?なにか言いかけようとする烏丸さんなんだけど、何?というか、声が小さいんだけど。

「え?」

今度はあろうことか、僕の近くまで身体が密着しちゃいそうな距離にきて、いきなり僕の黒い手をその白い手で握ってきたよ?

「うおー?」

今度は指を絡めて強引に手のひらを開かせてくる烏丸さんー!あう!これ、ちょっと気持ちいいなー。って、くすぐったくもあるよー?というか、女子からこんなに触られたことなかったよ、僕ー?どうしたのかな、烏丸さんー?

「えいー。」

そんな可愛い声が彼女の口から聞こえてきたので、それと同時に握られている手の中になんか紙切れのような感触がしたー!

「その……ポケットにしまって下さいね。えっと……放課後になるまでに、絶対に見ちゃ駄目だよー。」

至近距離でそれを囁いてきたので、ドキドキがとまらずに頭も熱くなってしまった僕は「うん!」と返事するしかなかった。というか、烏丸さんって、こんなに大胆な子だったのー?もっと慎み深い性格してるのかと思った。

「わはー!ご馳走様でしたー!って、あれ?どうしちゃったの、二人とも~~?顔色真っ赤だけど、何かあった~~?

「「いや、なんでもない……」」

タルトを食い終えた日向さんにそう聞かれたので、仲良く同じ言葉で答えた僕ら。


で、放課後になったら、教室にて帰り支度を済ませた僕は烏丸さんに軽く挨拶してもらったから、直ぐに彼女が出て行くのを見届けた。 慌てている様子なんだが、それも当然だな。だって、彼女は女子ばかりが集う文学部に所属してるので、それで急いで部活動へと行ったのだが、日向さんはというと、

「にししー。どうだった、アフロ少年君ー? さっきの明菜ちゃん、何か手渡したんでしょーー?この、このー!」

変な笑い方と共に明るい表情を浮かべたそのオレンジ色の髪をしている美少女はまたも遠慮なく僕に軽い肘つきしてきたんだけど、ん?って、どうしてそれ知ってるのー?さっきは食うのに夢中だったじゃんかーー??


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