第2話 1月13日 宿酔
「あ~あ…」
結句、またやっちまった。
…言わずもがな。
いや、やっぱ言わせて。…金がない。
38歳、独身、彼女もいない、そして、あぁ、金がない。
それなりに働いていて、それなりに貰っているのに、
だのに、だのに!
あぁ、金が、無い。
いや、解っている。
そんだけ使っているんだ、後先何も考えていないんだ。
そう、解ってはいる!
でも、やめられない…。
昨日は休日出社をし、ある程度先だって仕事を片付け、
余裕を持って今週に挑む。
ここまでは良かった。
全財産、6千円。それで来週の金曜日、所謂給料日まで
やりくりしなくちゃいけねぇのに…。
はぁ…。
仕事終わり、同僚と一人の女性を誘い、
飯を食いに行き、一杯、ではなく、目一杯酒を飲み、
その足で前回記述したダイニングバーの新年会に顔を出す始末…。
おまけに終電を逃し、会社に泊まる…。
俺は何をやっているんだ…。
でも、でも!
すげぇ楽しかったぁ~!
…最低だ。
唯一悲しかったことは、その女性と
ダイニングバーで待っていたもう一人の女性と共に
六本木のクラブへ行けなかったことだ…。
何言ってんだ俺!
明日からどうすんだ!
金無いんだぞ!?
あと二週間もあるんだぞ!?
あ、そうだ。
ゲームソフトを売ろう。
職業柄、研究がてらに毎月十数本のゲームをプレイする。
そして、売る。
今回、本当についていたことは、まだ二本、
手元にゲームソフトがあったということだ。
…どんな38歳だよ…。
最近の中学生でももっとちゃんとしてるぞ!
甥っ子にも
「あなたのようにはなりたくありません。」
と、言われる始末。
まあ、こんなクズが一人いたことろで
今日も世界は残酷に回り続けている。
どうってこたぁない。
このゲームソフト二本を売れば、きっと5千円にはなるはずだ!
よしよしよし。
5千円で二週間!
一か月1万円生活なんてTV番組があったくらいだ!
俺なら出来る!
…あれ、ちょっと待てよ。
中国人に身体を擦られて6千円…?
否否否!
それはそれだ!
過去は振り返らない!
明日にはもっと良いことが起きる!
俺は生きている!
それだけで幸せだ!
ああ、そうだ。
うん、生きている。
人間生きていればどうにかなるし、それだけで幸せというものだ。
もうこの歳になると、悲しくも
「死」というものに疎くもなる。
家族だけではない。
友人や知人、そして後輩など。
多くの「死」を目の当たりにしてきた。
俺は生きている!
これだけで十分だ!
しかし、しかし!
…もそっと金があれば…。
ああ、あの女性ともデートしたい…。
キャバクラにも行きたい…。
ガールズバーにも、美味しい居酒屋にも行きたい!
…まあ、禊というやつか。
って自分を正当化するなタコ助!
お前38歳なんだぞ?
何やってんだよ!
しっかりしろよ!
だから彼女も出来ねぇんだよ!
野良猫何て誰だって嫌だろう!
…ふぅ、まあ、いっか。
破滅型だ、無頼派だ、だの、よく耳にするが、
俺はまっとうに生きて愛する人と一緒に笑いあって暮らしたいんだ!
俺だって人と同じような幸せの中に居たいんだ!
いや、それを自らかなぐり捨てているだけか…。
好き好んでこんな野良猫みたいな真似をしている訳じゃないが、
結句、こうなってしまっているんだから自分の責任なのだろう。
今日も暁光は眩しく、紺碧の晴空は、
優しくも厳しく、俺を包み込む。
ことなんてせずに罵倒してきやがる!ちくしょう!
絶対ぇめげねぇし、諦めねぇ!
俺は誰よりも幸せに生きてやる!
ということで、百均の缶詰と
もやしでも買いに行くかな。
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