野良猫宿酔懺悔録 ~黄昏て38歳独身男~
あつ
第1話 1月11日 宿酔
「…やっちまった~」
相変わらず宿酔の中目覚める私、38歳、独身、男、彼女無し。
着の身着のままで寝間着ですらないことに気が付く。
「…全然記憶がねぇ」
ある意味私は病気なのだろう。
酔うと気が大きくなり、とことん散財し
酒と女性に溺れてしまうのだ。
昨日は金曜日。
全財産は3万4千円。勿論、預貯金など無く、借金が沢山ある。
そして、初めてじゃないア〇ムに8万借入中。よし、後2万はいける。
でもでもでも、
おかしくならない様に出勤前にあらゆるカードを家においてゆく。
よしよしよし。
手持ちは4千円に抑えた。
よしよしよし。
明後日、日曜日は休日出勤なのだが、その後に知人のダイニングバーで
新年会が行われる。
もしかしたら素敵な女性と知り合えるチャンスなのかもと
淡い期待を胸に抱き、
この金曜は散財しないように準備万全で挑んだのであった。
が、しかし…
「…え~っと、どこで何やってたっけ。
まずはあいつといつもの居酒屋で飲んで、そこで大分酔ってたよなぁ。
最後のほう記憶が飛んでる…。」
昨日は金曜日ということもあり、早めに仕事を切り上げ
馴染みの居酒屋へ仲の良い同僚
(といっても10年以上付き合っている相棒のような奴だ)
と二人で新年の挨拶がてら一杯飲みに行くことを約束していた。
楽しく二人で美味い酒と料理を楽しみ、
下らない話で大いに盛り上がり、とここまでは良かったのだが…
そこから何故かガールズバーへ…。
まあ、ここまでもいつものコースか。
最近はとあるアイリッシュパブでのナンパも飽きてきたころなので
手軽に比較的安価で飲めるガールズバーへと通うのであった。
居酒屋の会計は私が殆ど出したので
ここは相棒に出してもらう。
が、それなりの額。
「まあまあ、日曜は俺出すからさ!」
「しゃーねぇーなぁ…」
相棒、サンキュー!
と、ここまでは何となく記憶もあるのだが、
話した内容は覚えていない…。
そして相棒を駅まで見送ると…
ああ、オゾマシイ。
私の悪癖が出てしまったのだ。
何を隠そう私の住んでいるマンションは
この繁華街から歩いて数分のところにあるのだ。
歩いて帰宅し、カードを颯爽とポケットに入れ、
再出発!…じゃねぇよ莫迦野郎。
そして先程のガールズバーに戻ったのだが
ここでも記憶は途切れ途切れ
とにかく気に入っていた女性はあがっており、
そもそもすごい混み合いになっていた。
店長はいつも優しく、(といってもまあ太客なのだから当たり前か)
「あつさん!ごめんなさい、このままじゃ女の子付きませんね…。
お代金結構なんで、このまま今日は帰られたほうが
宜しいのではないですかね?」
「おお、そうかそうか!
了解、いつもあんがとね。まあ、ブラブラしてっからさ、
何かありゃあ連絡ちょうだいよ。」
…いや、ブラブラすんなって。
「はい!ありがとうございます!また宜しくお願いいたします!」
そこのガールズバーが入っている雑居ビルは面白い作りになっており
1階・キャバクラ
2階・大人向けのラウンジ
3階・ガールズバー ←今ここ!
4階・ガールズバー
となっていた。
ボーイがエレベーターまで送ってくれると
私は1階ではなく、4階を押した。
「あれ?あつさん上行くんですか?」
「おう、もいっぱい飲んでくらぁ」
…頼む、帰ってくれよ…お前!
この時点ではきっと消費者金融のお世話にもなっておらず、
さらには3万円が預金口座に入っていたに違いない。
そして上に行って…
ああ…ここも記憶が曖昧だ…。
「よし…。」
意を決して私は枕元に無残に転がっていた
スマホを恐る恐る覗き込んだ。
すると…、
先程のガールズバーで飲んでいた女性からのお礼と
何故かどこぞのキャバ嬢へと連絡している痕跡があるではないか。
キャバ嬢「すごい暇(涙絵文字)」
私「今ガールズバー」
キャバ嬢「早く出ておいでよ(涙絵文字)待ってるから~(涙絵文字)」
私「んじゃ野良猫行くわ笑」
笑うな!そして行くな!帰れ!何やってんだ莫迦野郎!
そしてここでの会計時に何かもめたような…
唯一覚えているのが
女性店員に何か言われ
「怖いよ~」と私が言って困らせていたような内容だった。
この時、23時58分である。
19時40分頃から飲み始め、この段階で記憶にある限り
ビールをジョッキで2杯、レモンサワーを…何杯飲んだんだろ…
(居酒屋では一升瓶の麦焼酎をキープしてあるので、
どんだけ飲んだかいつも曖昧だ)
そしてガールズバーでビールを…う~ん、何杯飲んだんだろ…
多分沢山…。
そして帰宅して、店に戻ってまたビールを…数杯?
からの、上の階でまたまたビールを数杯…。
…死ぬか、ああ、お前死ぬぞきっと!タコ助!
きっとこの時点ではまだ消費者金融の世話にもなっておらず、
1万は使っていないはずであろう。…うん、そのはず。
で、キャバクラへ向かう。…ああー!頼む!向かうな!
このキャバクラも店長と仲が良く、サービスも良い。
しかし所詮はキャバクラだ。
女性を隣につけて1時間居れば1万円はかかる。
でだ、あの女性と何の話をしたんだっけか…。
この店にまだ勤務しているある女性に岡惚れした話や
生まれて初めて告白した、
何てこっぱずかしい話もしたようなしていないような…。
とにかく、結句ここがターニングポイントであろう。
絶対に3万はここで使った。うん、そうだ。
この私がワンセットで帰るわけがない!
…なんの自慢にもならない。
ここからどうやって帰ったのか、謎だ。本当に謎だ。
あ、何か変な個室で中国人の女性に身体やたらと触られていた…
…うわぁ、それだけ覚えている。
いくつものカーテンで仕切られている真っ暗な部屋で
マッサージとも言えない、服の上から身体を擦るだけのそれでもって
3千円、さらに延長してもう3千円…。
なんで6千円も使ったんだよ!お前!つーか何延長してんだよ!
何一つ卑猥なことも違法なことも無かっただろうに何やってんだよ!
そして、どうしようもなく空しい気持ちになり、
普段連絡をしない私はさっきのキャバ嬢にメールを送った。
…らしき痕跡。
「アフター行くかー。腹減った。」
「ええーー!もっと早くに言ってよ!もう帰っちゃったよ!
行きたかったのにー!(涙絵文字)」
これも送った記憶がなく、スマホを確認して気が付いたことであった。
この時、午前4時10分。
…朝じゃねぇか。
…もうね、ほんとこんなクズいる?
生まれてきてごめんなさいレベルだろ!
人の営み解ってなさすぎるだろう!
あ、そうだった。
腹が減った俺は、安心安定のお蕎麦チェーン店に入り、
蕎麦&カツカレーセットをしっかりと食べてから家路に着いたんだった…。
そりゃあ朝起きたとき腹痛ぇわ…。
散々酒で満たした腹へ、最後にそんなにへヴィーな物を入れたのだから…。
そして今さっきコンビニへ行って驚愕した。
預貯金残高、800と数十円。
消費者金融、借入可能額…0円。
…え?
0円。
ええええええええええええええええええええ!?
今手元にはおよそ7千円ある。
あと二週間を7千円で過ごさなければいけなくなってしまった38歳。
涙も枯れ果ててしまった、どん底クズの野良猫、38歳、男、独身。
でもまあ、いっか。
どうにかなるだろうし、何よりも生きているじゃないか!
つーか、ごめんなさい!身体さん、内臓さん、本当にごめんなさい!
どうかこれからも見捨てずに病気に何かならないように
私の傍にいてください!
本当にごめんなさい!マジで気を付けます!
ああ、金はどうでもいい、女性らもどうでもいい。
ただし、身体だけは健康でいなくちゃね!
みなさんもくれぐれも健康には気を付けましょう!
ふぅ、明日の新年会はキャンセルするかな。
缶詰ともやし生活の始まりだ…。
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