淡き8歳の初恋
銀河革変
君のことが忘れられない
1月の第二月曜日、成人の日。
式が終わり、俺は彼女を必死に探した。成人記念のパーティーにも参加し必死に探した。連絡先もSNSでの繋がりもない。幼き日の淡くなっていく記憶から引っ張り出した彼女の顔をなんとか思い出しながら……
20歳になる僕はただ、ただ君のことが忘れることが出来なかった。
小学2年生の時、君は僕にウインクをした。ウインクをしてきた意味がわからなかった。当時の僕はというと恋愛なんて全然わからず、習い事に打ち込む生活をしていた。大抵の7~8歳の子どもなんて恋心がわからないもの。彼女はかなりのおませさんだったと言える。今思えば君が初恋の人だったと断言出来よう。
彼女は
僕は何も言わず寄り添った。学習机の下に引きこもる彼女は
「どうして私なんか相手にするの? 」
僕は言葉が返せない。この時の僕は口下手で何も答えることが出来なかった。でも僕は目の前にいる子が放っておくことが出来ないからただ、寄り添った。
ある日、僕は担任の先生に呼ばれた。
「私じゃ抑え切れないから君に彼女をお願いしたいの。」
彼女が癇癪を起こす度、二人きりになってただ、寄り添った。隣にずっといた。やがて彼女の癇癪を起こす頻度は減っていた。
時は巡り、小学生三年生になった。クラス替えが起こったが彼女とまた同じクラス、隣の席になった。段々と彼女のことに対して好意的だった僕は嬉しかった。
それからわからないことを教え教えられ、教科書を忘れたときはシェアしたりと楽しい日々を送っていた。
ある夏の日のこと。
あの時のことは一生忘れないだろう。
授業中時、彼女が突然教科書を立てた。
「ねぇ」
チュッ (唇にキスをしてきた。)
「えっ?」
「誰にも言わないでね。一生の秘密だよ♪」
数秒ほど思考停止した。キスなんてテレビでしか観たことがないものを目の前でされた。皆がいる教室で。誰にも気付かれなかったが、彼女は気付かれないタイミングを見計らって実行したのだろうか。
あれから一週間後。彼女の転校が決まった。彼女がお別れの挨拶の際に僕の方を向いて挨拶をして微笑んだ。去り際に僕に小声で
「ありがとう」
と一言を言った。
それから好きになった人はいたが、彼女とのあの場面がフラッシュバックした。僕の恋愛にかなりの影響を与えたキスシーンはずっと離れることがなかった。それが原因でうまくいかなかったこともある。だけど僕は彼女を責めるつもりはない。
なんとなくの考えで成人式に再会出来ると思ったから探したが、無駄だった。女の子は化粧でいくらでも綺麗になる。だから気付かなかったのかも知れない。
あの時に近い状況の曲、初音ミクの「サマータイムレコード」を聞きながら僕は途方に暮れる。
諦めかけたその時。パーティー会場から出てきたのは忘れるはずもない、彼女の姿だった。全く変わっていない姿に堪らず僕は駆ける。そして彼女に声をかけた。
「あのっ、貴方は…… 」
覚えているだろうか。あれから僕は身長は高くなったし、男だから声変わりもして髭が生えるようになった。
「……? あっ、もしかして◯◯くん? 」
どうやら覚えてくれていたようだ。それから別れた後のことを話して意気投合、連絡先まで貰ってしまった。彼女は大学生らしいので社会人の僕とは予定が合わないだろう。しかし、彼女は僕の為に合わせてくれるという。
結果、来月デートをする運びとなった。久々の女性とのデートは楽しみだ。
時は経ち数年後、桜散る頃……。
僕は彼女にプロポーズした。彼女からも「宜しくお願い致します」と返答を頂き、僕の初恋桜は散ることなく、薔薇になった。
僕はただ思う。君を忘れなくて良かったと……。
淡き8歳の初恋 銀河革変 @kakuhenginga
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