異世界信長7

「私が明智家家老、斎藤利三さいとうとしみつである」


 見ず知らずの怪しい男に連れられた先は、やたらと眼光の鋭い爺さんの前だった。

 斎藤利三、知っている。明智光秀の重臣だ。光秀が処刑され、本能寺の変が防がれたこの世界でも生きていたのか。


「織田信長を本能寺にて討つ。それが言われなき汚名を着せられた光秀様への弔いである。貴殿にはその未来について、占っていただきたい」


 占い、未来を知っていることについて、そう思われても仕方がない。しかしその未来はもう、おそらくどんな未来人でもわからないものへと変わっている。


「協力するならば良し。さもなくば、他の者と同じく、この世界の骸となるべし」


「……占えば、良いんですね」


「うむ」


 俺はもう、やけになってその占いとやらをやった。あーとかうーとか言いながら白目を剥いて、未来を見通した。


「整いました」


「して、その心は」


「明智家の大勝利にて信長は本能寺の灰となるでしょう」


「うむ、であろう。ならば貴殿はこれより我が軍師として従い、信長の最期を見届けるがよかろう」


 事態が手に負えないところにきていることに、ここで気づいた。


「出陣である」


「あの、元の世界に戻る方法とは」


「武士の嘘は知略と申す」


 このド畜生。

 俺はつまり、明智家残党の一員として、明日、信長を討つ。



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