三題噺。
メロ
You &I。
・テーマ 「雨」 「鈴」 「下半期」
ザー、ザーと雨が降る。
梅雨。それは、一年をちょうど半分に区切るかのようにやってくる雨の季節。まるで上半期の憂いを洗い流すかのように──
雨の音は好きだ。
ありふれた答えだけど、聞いていると落ち着く。特に、傘の中にポツポツと鳴り響く音が落ち着く。
だが、雨の日は嫌いだ。
靴はグショグショに濡れ、歩くたびに靴下から水が溢れ不快感を感じる。あれが最高に嫌いだ。
けど、それよりも嫌いなのが、
「昨日見た番組でさー、上半期を振り返って──」
バカがマシンガンのようにやかましくなることだ。
こいつとは幼稚園からの付き合いで、いわゆる幼馴染だ。
僕とこいつは真逆の存在だ。
こいつは体を動かすことが好きで、明るい性格。僕は体を動かすのは嫌いだし、友人と呼べるクラスメイトがこいつしかいないあたりお察しである。
晴れの日だと、こいつは友人とボールを片手に校庭へ出かける。もう中三だというのに元気なことだ。その若さには感心する。
で、雨の日はご覧の通り体ではなく口を動かす。
「──で、思ったんだよな。 その通りだって。 だからさー」
本当にやかましい。貴重な休み時間に毎度やってきて、ベラベラとおしゃべり。まさに笹の葉に鈴だ。
「おい、聞いてるかー?」
「聞いてない」
「ったく、しょうがねぇなぁ。 じゃあ、手短かにまとめて」
それが出来るなら最初からやれ、と心の中でぼやく。
「一年の半分はもう終わった! で、これからはイベントたくさんの下半期がはじまる! なぁ、ワクワクするだろ!」
はぁ、何を言い出すかと思えば……。何がイベントだ。そんなのは今まで通りで何もワクワクしない。今までなら。
「めーいっぱい遊ぼうな! 今年は野球部負けちまって暇だからさ!」
ふん、と鼻で笑う。
こいつは、残りの半分を遊ぶ気でいる。僕たちはこれから──いや、もうとっくに勉強をしなければいけない時期だというのに。とんだキリギリスだ。
せいぜい残された時間を楽しむといい。冬にやってくる雨の日まで。
その時は──
「りんご飴。 忘れてないからな」
「分かってるって、ちゃーんと買ってやるから」
「なっ、買ってやるからじゃないだろ! お前が去年射的で負けたのに奢らなかったんだろ!」
「はて、そうだっけか?」
「く、このヤローっ!」
ザー、ザーと雨が降る。
下半期も憂いを流すために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます