知識で世間は渡れますか?―最弱少女の下剋上?―

ユメハ

眠れる才能

その1 お医者様より雪が効きます⁉

ソフィア、少し体起こせる?」

「うん」

 母さんにぐったりとした体を支えてもらいながら起こしてもらう。もう何日も熱が続いたからすごくだるい。少し頭が動いただけで、頭が割れるように痛い。

 王様が送ってくれたお医者さんの手がひんやりとした不思議な形の金属の棒を頬やお腹、背中にそっと当てていく。最後に、その金属の棒を私の額に当てながら、きいぃぃんと細い棒で打って音を鳴らした。

「我々の出来ることはここまでですな。後は神様に祈りながら、少しでも体を休めるように。」

 白い服を着た眼鏡のお医者さんはそう言うと、不思議な道具をカバンにしまい、立ち上がった。

「ありがとうございます」

「お医者様、娘をみてくださってありがとうございます。」

「いえ、次の家へ向かいますので、これで。」

「それでは私がお送りします。どうぞこっちです。」

 軽く会釈をすると、たまらずベッドにもぐりこんだ。母さんは見送りに行ってくるとお医者さんと部屋を出ていく。

「あんなんで治るのかぁ」

 この三か月くらいの間に、しつこい風邪が流行っていた。

 なかなか熱が下がらなくて、寒気と激しい頭痛、食欲がなくなる。若い人はなんとか元気になる方が多かったけれど、お年寄りやまだ小さい子は何人もお葬式をすることになった。冬の寒い時期のお葬式は寒いだけでなくて、なんというか、いつもより心にくるものがある。

 できるだけ窓のすき間を粘土で埋めたり、着こんでみたりしたけれど、なかなか流行は終わらなかった。流れの商人の人たちが言うには、私たちの町はまだいい方で、もうほとんどの人が亡くなった村もあるらしい。南の方で最初広がって、そのままずっと広がり続けているんだって。あまりの流行に王様がお抱えのお医者様の一部に街をまわらせて治療をしてくれている。私たちの町は国の北の方だから流行るのも遅かったけれどお医者様がくるのも遅い。今日やっと、お医者様が来て、母さんは大喜びしていた。


 寝るにしても、頭が痛くて眠れない。今は雪の塊を布でくるんだものを当てて、少しでも気を紛らわそうとしてる。昨日、父さんが帰ってきたときに冷たい手を当てたのが気持ちよかったから。父さんはあの後母さんになんであったかくしないといけないのに冷たい手を当てるんだってしこたまおこられてたけど。溶けちゃえば分かんないからって、小さい塊をいくつか作って布にくるんだのを朝、出かける前に作って行ってくれた。溶けてきてだめそう、って思ったら枕元の桶に入れちゃえばいいって。多分母さんにはバレてるけど、少しは気がまぎれるからやめない。前髪をびちょびちょにしながら、いつになったらさっきのお医者様のは効くんだろう、治ったら森に行って何しよう、あ、でもまだ春になってないから家にいないと、なんてことを考えているうちに気が付けば眠っていた。

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