第5章 恋のキューピッド?

第24話 親友の恋と相談

 正月が明けてしばらくしたある日の放課後。

 今日は、同じクラスの加藤と倫太郎を加えた4人で遊んでいた。


 事の発端は昨夜だ。

 LI〇Eで、倫太郎からメッセージがあったのだ。


【久しぶりに、4人で遊ばない?】


 思えば、結衣と付き合うようになってから4人でつるむことが減っていた気がする。

 ちょっと倫太郎のことを蔑ろにしていたかもしれない。


 というわけで、4人で遊びに行くことになったのだった。

 とはいえ、放課後で日の落ちるのも早い冬となれば、行先は限られる。

 そこで、地元のゲーセンに行くことになったのだった。


 東京だともっと違うのがあるらしいが、あいにくとここは地方都市。


 まずは、昔ながらの有名対戦格闘ゲームに興じることにした。


 総当たり戦で行こうということで、俺と結衣、倫太郎、加藤がそれぞれ

 1セットずつ対戦することになった。

 

 最初の結人との対戦はというと。


「うぐ。なかなかヒットしないな」

「出だしがわかっていれば、対処は簡単よ」


 空中からの飛び込みに昇竜〇でカウンターを当てようとするのだが、

 なかなか当たらない。


 それならば、と、画面の隅に追い詰めて、弱キック強キックと交えて崩してみる。

 すると、先ほどの対処が嘘のように弱くなる。

 

「それはちょっと卑怯と思うのよね」

「これも立派な戦術だ」


 早い話、とにかく手数で押し込めば結衣は嘘のように弱くなるタイプだった。

 結局、初戦は完勝。


「もうちょっと上手くならないと」


 人には向き不向きがあると思うぞ。


 次は倫太郎との一戦。

 

 こいつはなかなかの強敵で、必殺技でのカウンターも食らわないし、

 隅に追い込んでハメ殺そうにもうまく行かない。

 逆にこちらが必殺技でのカウンターを食らうことが多かった。


「さすがに倫太郎は強いな」

「いやあ、普通じゃないかな」


 倫太郎はサッカー部所属で、ゲーセンで時間をつぶしていることは多くなかったはずだ。

 コツを掴むのがうまいということなのだろう。


 結果、1勝は出来たが倫太郎の勝利。


 最後は加藤との一戦。


 加藤は基本的な必殺技は打てるものの、使いどころがうまくなくて、

 接近戦でいきなり波動〇を打ってガードされたり、

 大キックがガードされたりと隙が多い。


 結果、加藤は完封することができた。


「にゃはは。昴きゅんは強いにゃー」

「お前が弱すぎるんだって」


 加藤は頭が悪い方ではないけど、あんまり上達にこだわっていないように思える。

 なんとなく楽しめればいいのだろう。


 全員が1戦ずつ終わったので、次は別のゲームにしようということになった。


 その後は、電車でG〇!、クイズゲーム、レーシングゲーム、クレーンゲームと色々楽しんだ。

 少しお小遣いを使い過ぎてしまったが。


「そろそろ、休憩しない?」


 倫太郎の一言。

 確かに、そろそろ夕方も近づいてきてるし、ちょうどいいかもしれない。


 結果、揃ってゲーセン近くのファストフードチェーンに入ることになった。

 自宅でのご飯があるので、ドリンクにポテトと、少々控えめだ。


「そういえばさ」

「ん?」

 

 急にどうしたのか。


「昴きゅんと結衣にゃんのお付き合いはどうなのかにゃーと」

「僕も少し気になるな」


 そういえば、そのことについてあんまりいったことはなかったかもしれない。


「まあ、順調だと思うぞ。というか、おまえらも見てればわかるだろ」

「それはそうにゃんだけどね。昴君と結衣にゃん、エッチなこと、した?」


 二人して、ドリンクを吹き出しそうになった。

 いきなりそういうことを聞いてくるか。


「ご想像にお任せするわ」


 少し顔が赤いけど、受け流す結衣。


「まあ、色々あったな、うん」


 曖昧に答える俺。


「その反応は、確実にあったね?昴きゅんには今度詳しく聞かせてもらうから」

「いや、女子同士、結衣にしろよ」

「結衣にゃんだとちょっと……」


 最近は変わってきたとはいえ、オーバーヒートしないかが心配なのだろう。


「ところで。お前たちはどうなんだ?」

「私?今のところ、そういう話はないかにゃー」

「加藤さんだったら、すぐにいい人ができると思うわ」

「私は当分独り身でいいや」

「そうか」

「僕もまあ特に……」

「倫太郎君はモテると思うのだけど」

「そうそう。倫太郎君、いっつも断っちゃうんだよね」


 ん?以前、気になっている人が言ってたような。

 

 その後、日も暮れてきたので、団地が近い俺と結衣、そうじゃない倫太郎と加藤に

 分かれて解散することにした。


 帰宅後。


【倫太郎。放課後のときなんだけど、ちょとt聞いてもいいか?】

【いや、おまえ、好きな人はいないって前に言ってただろ。うまく行かなかったのか?】

【そういうわけじゃないんだけど……】


 そういえば、あの場には加藤がいたことを思い出して、聞いてみた。


【ひょっとして、お相手は加藤か?】

【……】

【秘密は守るから】

【わかった。昴の言う通り、由紀子ちゃんが気になっていてね】

【お前ら、いつもつるんでるじゃないか。思い切って告白したらどうだ?】

【彼女がどう思ってるかわからないんだよね】


 少し煮え切れない言葉。


【よし、わかった。俺が加藤からそれとなく聞いてやるから】

【昴が?どういう風の吹き回しだい?】

【結衣とのときは世話になったからな。恩返しとでも思ってくれ】

【ありがとう】

【ところで、良ければ、結衣にも話しておきたいんだけど、どうだ?】


 結衣のことだから、明後日の方向に頑張りそうな気もするけど

 伏せておくとかえって不審がられそうだ。


【まあ、結衣ちゃんになら】

【じゃあ、伝えとく】


 そうして、友達同士をくっつける、恋のキューピッド作戦が始まったのだった。

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