第11話 休日の過ごし方
第11話 休日の過ごし方
温泉デートの翌日のこと。
俺は自室でごろごろしていた。
好きな音楽を聞いたり、漫画や小説を読んだり。
しかし、今日はどうにも落ち着かない。
最近の結衣の変化のせいかもしれない。
(なんていうか、ほんとに変わったよなあ)
以前のどこか堅かった表情も豊かになっているし
からかいを受け流せる余裕ができたように思う。
しかし、あいつが積極的になっているのに
俺が受け身気味なのは少し情けない。
(よし)
思い立って、結衣にLI○Eでメッセージを送った。
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「いらっしゃい」
「お邪魔します」
あいつは休日は家でのんびり過ごしていることが多い。
そこで、あいつの家に様子を見に行くことにしたのだった。
「それで、どうしたの?」
「いや、どうってこともないけどな。少し一緒に居たいなと」
「そう。ありがと。部屋、来る?」
「ああ」
そうして、結衣の部屋に通される。
時々様子を見に来ることはあったが、
あまり変わっていない。
一言で言うなら、簡素だ。
部屋の半分を占める本棚に、ベッド。
勉強机にクローゼット。
「相変わらず、さっぱりしてるなあ」
「そうね」
結衣が用意してくれた座布団に座る。
「それで、何かする?」
「特に何か考えてきたわけじゃないんだが…お。これ」
「ああ、これね」
俺が指差したのは、人気ライトノベルの新刊だ。
結衣は小説や漫画、ノンフィクションを問わず活字を読むのが好きだ。
俺は結衣ほどじゃないけど、影響を受けてそこそこ読むようになっていた。
「読んでいいか?」
「どうぞ」
仮想現実をテーマにした大ヒット作で、現在で20巻以上が出ている。
気がついたら、結衣がいるのを忘れて、すっかり読みふけってしまっていた。
読み終えて、ふと気がつくと、結衣がじっと俺のことを見つめていた。
「面白かった?」
「ああ、相変わらずこの作者の文体はいいな。ってスマンな」
「?」
「いや、おまえのことそっちのけで」
「気にしなくていいわよ。それが私達のいつもどおりでしょ」
「そうだな」
考えてみれば、付き合うまではこうやって、思い思いの時間を過ごすことが
多かったように思う。
最初は結衣が意識し過ぎていたが、今度は俺が意識しすぎて居たようだ。
「あ。そういえば、スマ○ラ。一緒にやろうぜ」
「いいわね」
いったん自室に戻って、ソフトを取ってくる。
それは、人気の対戦型ゲームの最新作で、オンライン対戦もできるのがウリだ。
「おまえ、カー○ィ好きだなあ」
「可愛いじゃない。それに、使い勝手も悪くないわ」
「そうかなあ」
言い合いながら、様々なステージで対戦する。
10戦して、6勝4敗といったところで、やや勝っている。
「昴はハメ技がうまいのよね」
「結衣がストレート過ぎると思うんだけどな」
結衣は決して下手ではないが、絡め手に弱い。
他にも、置いてある漫画を読んだり、YouTu○e動画を見たり。
インドアな一日を過ごしたのだった。
夜になってそろそろ帰ろうという頃合いになった。
「じゃ、そろそろ帰るわ」
「うん。おやすみなさい」
「まだ早いだろ。でも、今日はのんびりしたなあ
「そうね。こういうのも、やっぱりいいわね」
「ああ」
外にデートに行くのもいいけど、こういうのんびりした一日もあっている。
こんな穏やかな一日も悪くない。
そう思ったのだった。
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