二人暮らしは元カノと。月並みラブストーリー
らむにくん
元カノ
8時30分
家の前に元カノが座っていた。
「ごめんね。雄二くん。今日泊めて?」
冬の寒さに震えながら涙目でそう訴えかけられた。
いくら大分前に別れた元カノとはいえ寒さに震えながら涙目で待っていたであろう彼女を追い払うことはできなかった。
僕は彼女の事情を知っている。
「まあ入れよ。」
僕の気持ちを悟られないように。
そう思いぶっきらぼうに言いはなった言葉は彼女の胸にどう届いたのだろう?
僕にはわからない。
「ありがとう。」
ふんわりと笑ったその顔をとてもキレイだとまだ思ってしまう。もう別れたのに。
「久しぶりだ。雄二くんの部屋。」
自炊や洗濯は面倒だが、こう行くときに一人暮らしで良かったと感じる。
家族と暮らしていたらとても女の子を家に泊めるだなんて出来やしないから。
「今は汚いんだね、部屋。」
「君が来るって知らなかったから片付けなんてしていない。」
「あのときは片付けしてたんだ。」
彼女はそう言ってクスクスと笑った。
そんな笑顔もやはりキレイなのだった。
「風呂、どうする?」
「入りたい。」
「そうじゃなくて。いつ入るかだよ。」
「いつでもいいよ。」
「俺の後か先か?」
「どっちでもいい」
「じゃあ先に入ってろ。」
「わかった。」
風呂へいった彼女を見ると、いつかを思い出せる。
彼女の両親は離婚していた。
彼女は母親に引き取られたものの、捨てられて家には帰れない。
どこかに住んでいる父親が学費などのお金を入れているため、学校に通えている。
けれど、彼女の父親と彼女は連絡をとることも出来ず、それ以上のお金は貰えない。
それどころか彼女が母の家から追い出されているとこすら知らない。
もうずっと家に帰れていないはずだ。
前に彼女と付き合っていた時僕はその事実を知らなかった。
きっと彼女の触れてほしくないことにいっぱいふれていただろう。
彼女は以前と変わっていた。
前はもう少し図々しいというか、遠慮なんてしなかった。
きっとさっきのようにお風呂について聞かれても即座に先に入ると言うだろう。
僕と別れた後、遠慮しなければいけない環境にいたのかもしれない。
実家には帰ってないはずだし...
そんなことを考えていたら彼女はお風呂から出ていた。
「いいよ。お風呂。」
彼女は制服を着ていた。
「着替えは?」
彼女は困ったように笑って
「ないんだ。」
と言った。
一瞬曇った瞳に彼女の気持ちが出ている気がした。
「着ていいよ。僕の。」
「え。あり、ありがと。」
タンスの中からグレーのスエットをだす。
「雄二くんがお風呂入ってる時に着ておくね。」
「ん」
9時 風呂上がり
なんかのラブコメで見たことがある気がする。
彼氏の服を彼女が着るシーン。
別に僕らにそんな関係はないのだがブカブカの俺のスエットを着る彼女を見るとドキドキしてしまう自分がいた。
「雄二くんの匂い、するね。」
そういいながら上目遣いをする彼女。
少し恋人のような雰囲気で少し気まずい。
「て、テレビでも見るか」
そんな気まずい雰囲気をぬぐうようにテレビをつけたのだがついた番組は恋愛ドラマだった。
しかもキスシーン。
気まずい。気まずすぎる。
そんな気まずさに耐えかねたのか、それともただ眠いだけなのか、いつのまにか彼女は寝ていた。
そこでおれは考えた...
彼女をどうしよう?どこで眠らそう?
まさか昔みたいに一緒に寝るわけにはいかないし。
女の子に床で寝かすのか?
あいにく僕の部屋にはソファーもない。
床かベッドか。
仕方ない。
彼女をベッドに運び、僕は床で寝ることにした。
持ち上げた彼女はおもったよりもずっと軽くて、ずっとキレイだった。
「おやすみなさい。」
寝ている彼女にそう言って、早いけど僕も眠ることにした。
6時
ピピピ、ピピ、ピピピ
いつもどうり携帯のアラームで目覚める。
顔を洗い、歯を磨き、弁当と朝食を作る。
玉子焼きを作っていたところ、彼女が目覚めた。
「おはよう雄二くん。」
いつものふんわりした笑顔。
「おはよう」
優しげな声。
大好きなものなのに、今聞くと昔を思い出してしまう。
彼女は床に広げられた毛布を見て
「もしかして、床で寝たの?ごめんね。私がベッド使っちゃって。一緒に寝れば良かったね。」
「いいよ、別に。」
一緒に寝れるわけがない。
「それ玉子焼き?やっぱ料理、上手だね。」
「君のお弁当にいれとく」
「お弁当、私の分も作ってくれたの?ありがと」
そう言って目に涙を浮かべて笑う。何かがあったんだろう。聞きたいけれど彼女のためにも聞かないでおく。詮索されるのは心地いいことじゃないのは知っている。
「飯、食おう。」
「ありがと」
ご飯と味噌汁を食べる。
「美味しい。」
そう言ってくれるのは嬉しかったし辛かった。
7時
別々に家を出た。
僕が先に言って、彼女が後に出る。
家と学校が近いため誰かに会うかも知れないからだ。
登校しながらぼんやりと彼女のことを考えた。
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