姫乃華奈

第1話

僕は翼の無い鳥


でも飛べない鳥とは違う


飛べない鳥は翼があるのに飛べない


僕は翼が無いから飛べ無い



え?言い訳だって?


そんな事は無い


現に僕には翼なんてもの生えて無い


いいかい?


鳥とは翼が有るから飛ぶ事が出来る様になる


僕にはその元が無い


だから翼が有るのに飛べない鳥は


自身の能力に気付かない


愚かな宝の持ち腐れなのさ


有る事に気付かず


有る事への有難味を忘れ


飛べないと嘆くだけの


愚かな鳥さ



あれ?


でも僕みたいな翼の無い鳥に


大空を優雅に羽ばたく鳥達が


仕切りに僕を呼ぶ


彼等は馬鹿かい?


僕は翼の無い鳥なのに


大空を優雅に羽ばたく一羽の鳥が


僕の前に降り立ち告げた


君には翼が有る


君は飛べるんだよ


ふとその言葉に自分の背中を見ようとする


けれど背中を見る事は出来ない


翼なんて大きいもの


有れば見える筈だ


見えないのはやはり無いからだ



唐突に鏡を向けられた


そこには後ろでもう一つ鏡を持つ鳥がいた


その中に小さく折り畳まれた、小さな


確かに僕から生えている


飛ぶ事の出来る翼が有る


気付いた瞬間


僕の折り畳まれた


小さな小さな翼は


誰よりも大きく羽を広げ


羽ばたき始めた


僕は直ぐに大空を優雅に羽ばたく


一羽の鳥達の一員になった


誰にも負けない大きな大きな翼



嗚呼、もしかしたら


いや、もしかしなくても


愚かな宝の持ち腐れは


僕の方だったんだ…



そして僕は


今日も大空を優雅に羽ばたきながら


翼のない鳥と飛べない鳥に


地上から温かな手を差し伸べる


自分の翼を大きく広げながら


君にも有るよ


飛ぶ事の出来る優秀な翼が



気付いて


気付いた瞬間


未来は大きく開くから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

姫乃華奈 @hime837

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ