第11話 高野の気持ち

「あのふたりならキスくらいは気にしないのは予想出来たことなのに」

高野は図書室での愛翔と桜のキスに動揺し、その場から逃げてしまったのだ。今ほど仲良くなる前にも実際に校門で頬へのキスをしているところは目撃している。それなのに自分がなぜ逃げてしまったのか分からず友人の赤坂奈津美に電話を掛けていた。

「ナツ、あたし!ひろみだけど。今時間あるかな?」

「ひーちゃん、どうしたの急に」

「ちょっと聞いて欲しい事があってさぁ」

「なになに、ひーちゃんが聞いて欲しって珍しいじゃん。何かあったの?」

「ここのところ住吉君に勉強教えてもらってたんだけど……」

事の顛末を赤坂に伝える高野。

「ちょっと出れるかな」


赤坂が誘って今はふたりの家の間にある公園のベンチに座っている。

「つまりひーちゃんとしては、住吉君と華押さんの仲がすごくいいのは分かってたけど、それを目の当りにしたら嫉妬したと」

「嫉妬なんかじゃ、ただ目の当たりにするとビックリしたというか、驚いたというか」

「それだけだったら逃げなくても良いでしょ。住吉君カッコいいし。優しいし。好きになっちゃったとしても不思議じゃないよ」

「そ、そんな好きって」

「じゃあ、なんなのかなぁ?」

「その、好きってどんな感じなの?」

「え?そこ?」

「だって分からないんだもの」

「ひょっとしてひーちゃん初恋」

「まだしたこと無いもの」

ここに来て俯く高野に赤坂は優しく微笑む。

「そっか、初恋か」

「これが恋なの?分からないんだけど」

「ひーちゃん、住吉君と一緒に居たいと思う?」

「一緒に居たい」

「じゃぁ、一緒に居てドキドキする?」

「え?それは、あんまりわからないかな」

「あれ?ん~、じゃぁ想像してみて住吉君が、あの幼馴染ふたり以外の女の子と手を繋いで楽しそうにデートしてる。どう?」

「な、なんか嫌」

「んん~、多分なんだけど、ひーちゃん住吉君の事を好きになりかけてるんじゃないかな。まだはっきりしてない感じみたいだけど」

「そ、そうなのかな。でもよくわからない」

「慌てなくてもいいと思う。自分の気持ちに向き合ってどうしたいか考えればいいよ。まだあたし達中学1年だもの。でもあたしはひーちゃんの味方だからね。何か迷ったらいつでも相談してね」

「うん、ありがとう。よく考えてみる」

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