第5話 高野ひろみ
午前中の授業が終わり昼休みの喧騒の中、給食の配膳の終わった教室で3人は机を寄せ合い昼食を食べている。
「数学って算数とだいぶ違うね」
「でも英語よりはよくない?桜。ねぇ、愛翔もそう思うでしょ?」
「ん~、オレはどっちも別に嫌じゃないな」
「あぁ、また出た。愛翔の何でもできる奴」
「でも、数学は楓に勝てないし、英語は桜のが良いだろ」
3人とも決して学業の成績は悪くないため、ごく普通に授業の感想に花が咲く。その中でも多少の得手不得手はあるようで、全体に何でもできる愛翔、桜は英語は得意でほぼ完璧だけれど、数学はやや落ちる。楓は逆に数学は完璧で英語にやや苦手意識を持っている。そこに声を掛けてくる女生徒がひとり。
小柄で少しばかり茶色い髪をショートボブにした中1としては少し派手な印象の女の子。
「あ、あの」
「ん?えと、高野さんだっけ?」
愛翔が答えると、嬉しそうにそれでも控えめに笑顔を見せる。
「う、うん。高野ひろみ、よろしく。それでね、住吉君て全体に成績いいよね」
「ガチで良いとは口が裂けても言えないけど、まぁそれなりには?」
「その、わたし中学に上がって色々てんぱっちゃって授業内容が分からなくなっちゃってて、それで、その……」
「愛翔に勉強を教えて欲しいってことかしら」
楓がじれったそうに口を挟む。
「あ、あの。はい。住吉君お願いできないかな?」
「教えるのは別にどうってことないんだけど、なんでオレ?高野さんの仲の良い子とか他にも女子とかの方が聞きやすいんじゃないかと思うんだけど」
「えと、そのね。言い難いんだけど、あたしの仲の良いグループの子ってみんなあんまり成績よくなくて。それに私ってこんな見た目でしょ。髪だって地毛なんだけど染めてるみたいに言われて他の女の子から浮いちゃってるの。それでクラスの男の子の中で女の子と比較的話をしてる住吉君ならどうかなって思って」
ピクリと反応する愛翔。イジメ関係には敏感に反応するのは桜が過去にそれで不登校直前までなったのを見ているから。そして他の生徒に聞こえないよう声を潜めて聞く。
「まさかイジメじゃないだろうね」
愛翔の心配する言葉に
「あ、そういうのではないです。単に私が近寄りがたいらしいんです」
そういう高野ひろみに
「まぁイジメじゃないなら、これ以上は詮索しないけど。勉強だっけ」
「う、うん。お願いできませんか」
「条件がある」
ドキリとした表情で愛翔を見つめる高野。
「条件って。お金とかですか」
その答えに愛翔は顔を顰める。
「そうじゃない。簡単なことだよ。その敬語をやめること。俺と高野さんはクラスメイト。敬語を使われるのは気持ち悪い」
目を見開きパチクリとさせ、ふにゃりと笑顔を見せる高野。
「わかりま……じゃなくて。わかった。住吉君よろしくね」
「じゃぁお互いのスケジュールの合う時に勉強会をするということでいいな」
「うん、お願い。スケジュールは住吉君に合わせるよ。私は部活入ってないからいつでも大丈夫だから」
「そうか、それじゃサッカー部は水曜と土日が休みだから、テストもまだ先だしとりあえず水曜日の放課後に図書室でいいか?」
「わかった、水曜の放課後は空けとく」
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