やっぱり平和っていいよねっ!!
グレオネ
第一話 唸れ風神剣っ!悲しみを乗り越えてっ!!
お菓子倶楽部
惨劇は舞台を選ばない。ここ弥勒高校にも強い輝きを求め招かれざる客が敷居を跨ぐ。
放課後・・・ここは食堂の一角にあるお菓子倶楽部の部室。部員のすずふみとのえるは完成したばかりの色とりどりなケーキを並べてあるトレーに盛りつけている。鼻唄を歌いながら・・・。
それは楽しそうで幸せいっぱいという感じだ。
盛りつけが終わった二人は、それぞれのトレーを持って席に着くと手をあわす。
『いっただきまーすっ!!』
二人の声がハモり、試食の時間を告げる。
『うわっ、マジうまいよこれっ !』
『ほんとだねっ、今までで一番上手くいったかもっ!』
女生徒達はお互いに顔を見合わせながら歓喜に声をあげる。ケーキを役半分くらい食したところでのえるが口を開いた。
『ねぇ、すず』
『ん、どうしたのえる?』
ケーキを口に運ぶ動作をやめ、すずふみはのえるに視線をむける。
『・・・そろそろアイツらくる時間じゃない?』
すずふみは部屋にある壁がけ時計に視線を移すと笑顔でのえるに振りかえる。
『ふふっ、そうだねっ』
『える~っ』
『すず~っ』
遠くの方から、聞き覚えのある可愛い二つの音色が響く。のえるの表情にも無意識のうちに笑顔がこぼれる。
『おっ、噂をすれば・・・』
可愛い二人の訪問者の姿を思い浮かべならのえるとずずふみは部室の入り口に視線をむける。
ガラガラガラー
『こんにちわー』
『遊びにきたよーっ』
引き戸の開く音とともに元気な声が部屋中に響きわたる。のえるの家の近所に住んでいるじぇねといふだ。この二人はまるで双子のように仲がよく、行動するときはいつも一緒だ。
・・・テーブルの上にのせてあるケーキに目を奪われ子供のように目を輝かせる。そのとたんに賑やかになる部室。
『うわぁ、ケーキだぁ』
『うまそう・・・じゅる』
『いらっしゃいっ、いふ、じぇね』
『お、きたね』
笑顔で二人を迎いれる。すずふみとのえる。
『今日はケーキ作ったんだぁ』
『ねねっ、たべていい?』
期待に満ちた二人の視線が、すずふみに向けられる。
『ふふっ、いいよたべて』
(かわいいなぁ・・・もぅっ)
『やったーっ!』
『わぁ~いっ!』
跳び跳ねて喜ぶ二人。空いている椅子に腰掛ける・・・勿論隣どうしで。
『いま、お皿にのせてあげるから、ちょっと待っててねっ』
『はーいっ!!』
すずふみは二枚トレーを用意すると嬉しそうに
ケーキをのせていく。
・・・可愛い娘たちにおやつをあげる母親の心境
優しい気持ちで心がみたされるようだった。
『はいっ いふ』カチャ
『やったっ!』
『はいっ、じぇね』カチャ
『二人ともちょっとまったっ』
すずふみ、いふ、じぇねの三人は声のした方を一斉に振り向く。のえるだった。
『どうしたの、のえる?』
『もぅ、すずもだめだよ』
『えっ、わたしなにかまずいことしたかな?』
『じぇね、いふ、二人とも手、洗ってないでしょ?・・・洗ってきなさい』
のえるは、今おやつを目の前にし、幸せの絶頂にいる二人に向かって過ちを指摘する。
面倒見のよい姉御肌な、のえるの性格が表れた瞬間といえよう。
『あっ、そういえばあらってない・・・。』
『やい、あらってこようよ』
『うん、そうしよ』
流し台に向かう妹のような二人の見送るのえるの顔も、すずふみと同じように優しさに満ちていた。
やがて手を洗ってきた二人は元の席に戻ると待ちに待った至福の時に胸を躍らせる。
・・・始めの一口
『うんま~い!』
といふ。
『うう~ん・・・しあわせ』
とじぇね。
二人ともかなりお気に召したのだろう。ケーキを口に運ぶ動作がどんどん早くなる。
『ふふっ、もう、そんなに急いで食べなくて大丈夫だよ。誰もとったりしないよ』
『そうそう、すずのいうとおり。のどに詰まらせてもしらないよ?』
その光景は、妹達をあたたかく見守る姉達をという家族絵図を連想させる。
『ごちそうさまでした。』
『あぁ、おいしかった。』
カチャッ
いふとじぇねは使用した食器をそれぞれが手に取ると、流し台にに向かう。なかなかしっかり
しているようだ。
・・・歳から考えればあたり前のことのようにも感じるが、今の世の中にはそれをできない若者が多いのが現状だ。
二人は洗い終わった食器を棚に戻すと、のえるすずふみにお礼をいい、それから部活(バレー部)に向かう。
その後ろ姿を見送ったのえるは隣にいるすずふみに視線をむけるとおもむろに口を開く。
『二人ともだんだんしっかりしてきたよね』
『うん、そうだね。わたしもそうおもうよ』
『でも、子供っぽいのはあいかわらずだけど』
いふとじぇねの姿を思い浮かべるのえる。ケーキを食べているときの、幸せいっぱいの愛らしい笑顔。出会ったばかりのことを思い出す。
(あは、ほんと変わらないよあの二人)
『ふふっ、ほんとかわいいよね二人とも』
『そうね』
そういうすずふみにのえるも頷く。
(かわいい・・・っか・・・性格もだけど、見た目も可愛いよね。近いうちとかには彼氏とかできるんだろうな・・・
じぇねもいふもひとを疑うことをしないから、へんな男にひっかからなきゃいいけど・・・ちょっと心配だな)
『あれ、える・・・どうかしたの?』
『ん、ごめんね。ちょっと考えごと』
『あっ、そうなんだ・・・でも、悩みごととかあったら私にいってね。だれか他のひとにいうと楽になるっていうから』
『うん、ありがとうすず』
チャラランッ
のえるはテーブルの上に置いてある携帯電話を手にとり、メール受信を確認する。
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