後日譚 その3 聖帝軍
「ジョゼ兄さん、蒼大陸北西部で大規模なスタンビートが起こったそうだ」
「もう報告は受けてるよシャル。皆の準備が出来たら出発するからそのつもりで。今回のケースは少し特殊だから慎重に行動しよう」
ジョゼフ、シャルル兄弟が相談しているのは、蒼大陸の1辛ダンジョンからモンスターが溢れ出したスタンビート。
人魔窟と言われるダンジョンで人型モンスターの巣窟である。
「てめえら、気合い入れてカチ込むぞ。バギーの準備は出来てるかぁ!」
『ヒャッハー! もちろんでさジョゼフ様ぁ!』
100人程の集団なのだが、全員が蛮族スタイルである。
そんな見た目の改造バギーに乗った集団が被災地に到着すれば……
「貴様らは何者だ。この地で略奪なんかさせてたまるか!冒険者よ、ここが正念場だ。武器をかか……がべらっっ」
「ウザイ。帝王の道を塞ぐものは全て汚物である」
紫のタンクトップを着てオールバックにしたジョゼフ君が、対峙する集団の指揮官風な男をバギーからジャンプして鳳翼天翔っぽい技でぶっ飛ばしたと思ったら……
『汚物は消毒だあぁぁぁぁぁ』
むさ苦しい蛮族の集団が
「貴様らの穢れた手で怪我人を介抱すれば、感染症になる者も出るだろう。怪我人の保護は任せろ」
何を言われているか分からない冒険者達なのだが……
「特攻隊、溢れかえったダンジョンモンスターなんざ粉砕して回れ。衛生隊、怪我人の治療は任せた。工作兵、簡易城壁と堀の作成だぁ」
袖の無い革ジャンに身を包むシャルル君の指揮で、それぞれに蛮族達が散らばって行く。
「女性には」『紳士的に』「子供には」『優しく』
「老人達は」『敬って』「男共には……」
『気合いを入れろ! ヒャッハー!』
見た目には略奪を働こうとしている蛮族にしか見えない。しかし向かう方向にはダンジョンモンスターの集団。
工作兵達が魔法を使って作り上げた空堀と岩の城壁内を拠点に、何度も何度も繰り返しバギーを操って出撃する特攻隊なのだが、指揮官はジョゼフ君である。
「てめえらダンジョンモンスター如きに帝王の道を塞ぐ権利など欠片も無いわ! 路傍の塵となれ」
『ジョゼフ様ぁぁ! あっしらもお供致しやすぜぇ! ٩*(゚∀。)وヒャッハアアアァァァァァアア!!!!!』
何度も瀕死になる程の怪我を負っても、城壁内に避難して治療された後に突撃を仕掛ける特攻隊。
「近隣の生き残りは全員保護しやした、シャルル様ぁぁ! あっしらもデッパツしましょうぜ!」
「衛生隊、工作兵。にゃん族を残して兄上の援護だ!気合い入れろ!」
シャルル君がバギーに立って残っている蛮族に向かって。
「飢饉には食料を、疫病にはワクチンを、汚れた水には綺麗な井戸を、水害には堤防を、地震が起きたら復興支援を! スタンビートには暴力を! 野郎共!かかれっ! ヒャッハァァァァァ!」
『闘魂注入だぁぁぁぁぁぁぁ!』
それが全員突撃の合図のようだ。
ボウガンや有刺鉄線の巻き付いた木製バットで武装した衛生隊や工作兵もバギーやバイクに跨って出撃していく。
そんなこんなで
「この地の代表はどなただ? 私は災害支援NPO法人【聖帝軍】の対外交渉担当のハンスと言う者だが、代表者をお願いしたい。」
ちょっと疲れた顔をしている元フェルセン侯爵、今はただのハンスさんが、この後に支援する食料や雑貨などの相談を、スタンビートが起こったダンジョン都市の代表者と交渉を始める。
数ヶ月後に復興の支援も終わり、スタンビートの影響が完全に無くなって、元のダンジョン都市としての機能が戻った頃には……
スキンヘッドの肩パットが付いてる袖の無い革ジャンを着込んだ村人や、モヒカンや、ポマードでビシッと撫で付けたオールバック等の奇抜な髪型の町人が増えていたりする。
『闘魂注入だぁぁぁぁぁぁぁ!』を合言葉に。
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