カンタ君を考察してみる
地球生まれの微生物さん達、惑星パンツに馴染んでから半年くらい過ぎた。
あれからそんなに変わった事も無くて、聖域の皆で協力してバイクの部品作りに明け暮れてる。と言いたいんだけど色々変化があった。
まず小さな変化なんだけど、少し前まで神格が3000ポイントくらいだったんだけど、何故か4500ポイントくらいに増えてた。
多分原因は大きな変化。聖域に仕事に来てるドワーフさんやエルフさん達だと思う。
「いつの間にこんなに増えたんでしょうね……。」
確か許可したのは深淵の森の魔族のドワーフさんのローソンさんの弟子達と、初期から居るドワーフさん4人の家族で、お弁当持参で来れる人だけだったはずなのに、うじゃうじゃ居るんだよ……
「主よ、魔族のドワーフは全てローソンの弟子と言う事ですじゃ。それにアトラ大陸の人種のドワーフは殆どが血族なので、このようになるのは必然かと。」
たぶん両種族のドワーフさん達だけで2000人を超えてるし、エルフさんなんか……
「しかしエルフを受け入れたのは失敗ですな……外界に存在していない植物を見て狂喜乱舞するのは分かるのですが、出会う植生生物全てを質問攻めにするなど……。」
最長老も、うんざりするくらいに質問攻めにされたそうだ。
そしてエルフさん達は既に聖域を観光地化してると言うか……外界から持ち込んだ木材を使って旅館らしき物まで作り始めちゃった。
「エメリーさん。あまり目に余るようなら、エルフ種全てを聖域に出入り禁止にしますからね。」
俺と最長老とエメリーさんと3人で、旅館らしき建物の確認に来てるんだ。
「ニノ様、人数制限で許してください。私達エルフ種が、何世代も掛けて探し回った全ての植物が
パンツァー様が聖域を作る前までは、世界中に分散してた意志を持つ植生生物さん達。そんな植生さん達は聖域を作った後に全て聖域に集められたみたいなんだ。
深淵の森以外の外界に生えてる植物さん達は、意志を持たない普通の植物さん達らしい。
俺や東郷君は、普通に会話出来るんだけどな……
とりあえずドワーフさんとエルフさんは、人数制限を付けよう。
盆栽サイズになって俺とエメリーさんの横を歩く最長老が、前々から疑問だった事に答えてくれた。
「深淵の森と霧の大森林に殆どのエントやアルラウネが暮らして居ましたからのう。」
「霧の大森林ってラスト大陸南方の打ち上げられて赤い月になった部分ですよね?そこの植生さん達は全て聖域に?」
でも霧の森に住んでたエントさんやアルラウネさんなんか、そんなに数が居ないような?
「殆どの者は赤い月に生えてますのじゃ、我が妻を中心に据えて。」
「あれ?最長老の奥さんって世界樹さんですよね?でもチシャ菜って世界樹なんじゃ?」
地球で鑑定すると世界樹って表示されるんだけど?
「あれは分体ですのじゃ、本体だと聖域の5分の1程の土地が必要ですからのう、生えるには。」
「どんだけデカいんですか?」
聖域の1/5とか相当デカいよ?
「世界樹あれ1人で、世界中の酸素の1/4くらいは、光合成して作り出せる程の大きさですな。」
エメリーさんは、最長老の語る世界樹の話をメモしながら目を輝かせてる。
「古き大いなる主が、霧の森を
「やっぱり奥さんは強いですか?」
何処の世界も嫁の尻に敷かれるのが普通なのかな?世知辛いな……
「強いなんてもんじゃ無いですぞ。
「ん?世界樹さんって神化してるんですか?」
神化してるなら、聖域にも来てもらいたいな。白い月の中に居る連中とやり合う時の為に。
「
おお!珍しい。生まれつき神獣とか生まれつき神人とかは沢山居るらしいけど、生まれつき神木なんて初めて聞いた。
「古代の地球に生えておった頃は崇められていたのですが、時が経つにつれて葉や枝を狙う者が多すぎましての。」
生きてさえ居れば、大概の傷も病気も治る葉だし、枝は最高の木材らしいから、地球に生えてたら狙われてたんだろうな色んな奴から。
「古き大いなる主が此方に連れて来て下さってからは、ワシと2人でこちらの環境を生き物が住める環境に星全体を作り替える仕事をしてたのですが、2万年程前にそれも終わりましてな。」
ふむふむ
「それからワシは魔王として、妻は生き物達の拠り所として生きていたのですじゃ。」
「あれ?最長老って魔族なんですか?」
魔王だったら魔族だよな?でも仙木だよな?
「魔族と人種の違いとは何か、獣と魔物の違いとは何か、実を言うと何も違わんのですじゃ。祖先の故郷がラフテルかマーズかビーナスの、どの出身かと言うだけなのですじゃ。」
ラフテルって地球と火星の間にあった惑星って言われてる奴だよな?マーズは火星だし、ビーナスは金星だし……。
「動物や人はマーズ、魔物や魔族はラフテル、竜などの爬虫類系はビーナス出身で、それぞれの星に植物達は住んでいたのですじゃ。」
「それじゃ地球は?何が住んでいたのですか?」
「地球は蟲と水棲生物と植物の星だったはずなのですが、他の星々の住環境が悪くなって来た時に入植を受けいれて、様々な生き物達の星になったのですじゃ。」
蟲……カンタ君……
「はるか太古の地球は、カンタ様が最高神として君臨なさっていた蟲の楽園だったのですじゃ。」
やっぱり……
「カンタ様は辛ろうございましょう。様々な虫や微生物達が駆逐されて行く、ご自分の世界をただ見ているだけしか出来なかったのですから。」
「カンタ君って、なんで地球に帰りたがらないんでしょうね……。」
いつも誘うんだけど着いて来てくれないし。
「カンタ様が今の地球を見たら、狂って祟り神になってもおかしくないでしょうから。」
そうか、底抜けの明るさの裏に、そんな影があったのか……。
「情けを掛けて受け入れたはずの他の星の生き物達が、ご自分の守護する生き物達を貪るだけには飽き足らず、気持ち悪いと駆逐して行くのですから……」
「なんでカンタ君は他の星の生き物達を受け入れたんでしょうね?」
「主と同じく、弱っている生き物達に弱いのでしょうな。それに今は此方に古くからの蟲達は連れてこられているので、地球の虫達が絶滅したとしても、しかと種としての命をつなぐ事が出来るでしょうから。」
もう少しだけ、カンタ君に優しくしようと思った。
とりあえず旅館は潰そう。やっぱり聖域に人種を大量に受け入れちゃダメな気がするから。潰すの勿体ないけど……凄い手間の掛かった木造建築だし……
「エメリーさん、聖域に生きているエントやドライアド、アルラウネさん達の分体を作って貰いますから、外界に植林しましょう。」
エメリーさんに話し掛けたはずなのに、沢山のエルフに囲まれてしまった……
ぐぬ、植物マニアめ!
最長老とカンタ君の話で少しだけ盛り下がっていたんだけど、話題のカンタ君が何処にも居ない事に気がついた。
「エルフさん達の暴走は、仙木さん達の分体を外界に植林すれば解決出来そうですけど。カンタ君に指揮を頼もうと思ってたのに……どこにも居ないですね……」
タブレットを使って世界中探しても居ないんだよね。
「主の神器ですら見つからないのであれば、主の守護する地域に存在していないのでは?」
「普段なら昼間はサーキットでスクーターを乗り回してますし、夜は私の部屋で漫画を読んでるか、動画を見てるかゲームをしてるんですけどね。」
あれ?カンタ君って夏休みの高校生みたいじゃん。そんな事を考えてたら、自動販売機の横に転移門が現れた。
「あれ?ナメッコとニノにい、どうしたの? 2人で驚いた顔して。」
転移門から現れたのがカンタ君で、現れた転移門はマルトさんの
「もしかして地球に行ってた?」
「ん?日本に行ってたけどなんで?」
あれ? 地球に行きたがらないんじゃ無かったっけ?
「カンタ君って、元々地球の最高神だったんだよね? 虫達が駆逐されるのを見て怒らないの?」
ストレートに聞いてみた。
「は? ニノにいって偶に変な事言うよな。蟲が駆逐とか……ふっ。」
なんだろう、外人さんがフゥって言いながら掌を上に向けて動かす仕草で呆れられた。
「色んな星から色んな生き物を入植させて、特級神から上級神に降格したオイラを心配してんの? 心配しなくても大丈夫さ。」
あれ? 最長老が言ってたような感じじゃないじゃん。
「どんな生き物達が入植して来ても、地球の大地はいまだ変わらず虫の星だよ。人間がどれだけ増えても、蟻の数にすら追い付いてないじゃん。」
確かに虫の種類って凄く多いし、蟻とかどれだけ生きてるのか見当も付かないな。
「依然として、海はポセのおっちゃんが、陸はオイラの守護する生き物の楽園だよ。微生物や虫が本気になれば、地上の動物なんかすぐに駆逐出来るからね。怒るわけないじゃん。」
「確かに微生物が本気を出したらヤバそうだけど。カンタ君は動物達を駆逐しろ、なんて命じないよね?」
する訳ないだろ?変な事言うなぁって呆れながら俺の家に入ろうとしたカンタ君……。
「ちょっと待て!カンタ君、それは何?」
「ん? 北斗〇拳のテレビ放送されてた時の、録画したビデオテープだけど?」
おお!リアルタイムを録画したヤツか。
「それどうしたの?」
「ん? 日本に行って過去に戻って録画して来た。オイラん
うぇ?カンタ君って……
「カンタ君って日本に家があるの?」
「あるに決まってんだろ? 神なのにホームレスとか洒落になんないじゃん。世田谷に庭とガレージ付きの一戸建て購入して車も持ってるけど?」
「カンタ君。もしかして、ちょくちょく日本に帰ってる?」
「帰るに決まってんだろ? 嫁も居るのに。」
くぁ! まさかの既婚者!
「カンタ君って結婚してるんだ、と言うか家族が居るなら日本に帰りなよ。」
「亭主元気で留守が良いって言うだろ? 偶に帰るから家族を大切に出来るんだよ。毎日顔を合わせてたら嫌になるし。」
見た目が高学年の小学生にしか見えないから、思いっきり騙された。
「ニノにいも、結婚すれば分かるさ。」
なんて言いながら、飲み物とポテチを準備してるカンタ君。
俺も一緒に懐かしいCM入りの北斗〇拳でも見よう。
盆栽サイズの最長老も、まるで観葉植物みたいに部屋に居てカンタ君と3人で全巻CMも含めてちゃんと見た。
最長老があべしあべしうるさかった。
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