第76話 夜、別邸のベッドの上で……
なお結局マナルコペアはこの部屋で一緒に寝ており、真ん中のベッドに真奈が、その奥に流湖が寝ている。
と言っても、二人は眠くないのか起き上がってなにやら楽しそうに話をしているが。明日も学校があるのに大丈夫なのか?
「あんな絵に書いたボンボンクソ野郎がいるだなんてな……明日何があるというのか」
帰り際に、捨て台詞のようにアイツは確かに『明日を楽しみにしておけ』と口にしていた。何かよからぬことを考えているのは明白だ。だが、今の俺にはそれに身構えるしかできることはない。大事に至らなければ良いのだが……
「お兄ちゃん、どうしたの?」
呟いたのが聞こえたのか、真奈がこちらに首だけ向けて問いかけてくる。
「ああ、なんでもない、気にするな」
「そう? あっ、今日もその、いい?」
と言うと、真奈は自分のベッドから降りてこちらまで歩み寄ってくる。
「ん、仕方ない、少しだけな。あまり長時間接触するとどうなるか分からないからな」
妹の『伊導お兄ちゃんのことが好き好きすぎて脳がアヘアヘしちゃうのおおおおお病』についてこれまでわかったことをまとめると、以下の通りだ。
○『俺フェロモン』は無条件に常に摂取されるわけではない。
これがわかったのは大きかった。今までは俺と一緒にいるだけで微量にフェロモンを浴び、そのせいで脳内物質が出続けると予想していた。
だが、実は真奈が意識して取り込まなければ摂取される事はないと言うことが判明したのだ。
ある意味で思い込みにより、俺と一緒にいればずっと『俺成分』を摂取し続けるものだと決め付けていたため、真奈の脳もそのように反応してしまっていたのだ。
なのでこれからはそんなことはないと逆の思い込み、というか意識をしっかりとしておけば、摂取を抑えることができると予測されている。これに関してはまだ実験段階なため確実とは言えないが、少なくとも無意識に"悪い思い込み"をしているよりかはずっとマシになるはずだ。
・摂取する量によってその後の体調が変化する
以前に判明したことだが、やはり過剰に『俺成分』を摂取すれば、その分"体調が良くなりすぎること"が未だにたまにだが起きている。
真奈自身も最近はどれくらい必要かという感覚が少しずつ身について来ているので、その回数は減ってはいるが、元気になりすぎるとその反動が大きく、成分が切れた時に普段よりも重い体調不良になってしまうのだ。
なので俺からも、彼女にどのくらい接触していればいいかをきちんと管理確認しなからばならない。これは二人三脚のような状態で歩みを進めている状態だ。
○二人の接触する方法によって量が変化する
俺たちがどのくらいの面積で接触するか、どのような方法で摂取するのかによって『俺成分』が摂取される量が変化するのだ。頭を撫でた場合と、裸で抱きしめ合った場合ではその脳に分泌される量が大きく違うことが分かったのだ。
これを検査する時はとても恥ずかしかった。テスト期間に行ったのだが、機械の前で裸になったり、かと思えば10分間頭を撫でてくださいと言われたり。あの時にはオレの中の大事なナニカがだいぶすり減ったぜ……
今のところ判明した重大な事実はこの三つだ。他の要素が判明するにはまだまだ時間はかかるだろうが、気長に根気よくやっていくつもりだ。一先ずは一番目が分かったというだけでも、真奈と不必要に接触を避けなくて済むと言うことで気が楽になったものだ。
「うん、今日はちょっといつもより疲れているから、抱っこがいいなぁ」
「抱っこか、はいはい」
真奈のお気に入りスポット、俺の膝の上にちょこんと座り、背中を胸に預けて来た。
「むう〜〜」
と、こちらを向いてベッドに腰掛ける流湖と視線が合う。
「な、なんだよ」
「真奈ちゃんだけずるい」
「は?」
彼女は立ち上がると、サササっとこちらへ歩み寄る。
「真奈ちゃんだけずるい」
「は、はあ」
「真奈ちゃんだけ」
「あああああわかったから、なにがして欲しいんだ?」
というと、流湖はにこりと笑い。
「キス」
「え?」
「べろちゅー」
「え、いやいや、なにを仰っているのか……」
「そうですよ流湖先輩! お兄ちゃんを困らせてはいけません!」
真奈はプンスカと頬を膨らませる。
「真奈ちゃんはいいよね〜、いつもお兄ちゃんとあれやこれや出来るんだもんね〜」
「アレやコレやはしてないぞ」
「でも真奈ちゃん、RIMEで自慢してくるんだよ……今日はこんなことしてもらいましたー! って」
「え? 本当か?」
再び顔を下に向けると、真奈は横を向いて下手な口笛を吹いている。
「おい、挑発するようなことをしないの!」
「ぴょっ」
軽くチョップをお見舞いしてやった。
「だってー、最近の先輩積極的すぎるというか、お兄ちゃんのこと完全に狙ってるんだもん! 少しでも牽制しておかないといつ出し抜かれるか分かったもんじゃないもんっ」
本人の前でそんな開けっぴろげに言うものか普通?
「あらあら〜、真奈ちゃんは私のことをライバルとして認めているわけね〜?」
と、どこかのサキュバスのような口調で煽り返す流湖。
「してますよ。何度もお話ししてるじゃないですか。流湖先輩は私の良き友達であり、頼れる先輩であり、にっくきライバルなんですから」
「真奈ちゃん……あはは〜、なんか負けた気分、ねえねえ慰めてよ〜」
すると俺のベッドに乗って四つん這いになり、後ろから俺に抱きついてきた。
「おいやめろっ、離れろってば」
「なんで? もう、伊導くん冷たいな〜。こんな美少女からいつも接触してもらっているのにつれないよね、実は女の子のこと好きじゃないの?」
「そういうわけじゃない。ただ、前にも言ったが今は恋人を作る気分じゃないって話なんだ。俺だって健全な男子高校生だぞ、そんなことをされるとドキッとするし、こここっ、興奮もするんだ。間違いを犯したくないからこそ、あえて拒否しているんだってことに気がついて欲しい」
俺も真奈のように敢えて己の気持ちを隠さずに伝える。その方が彼女には良い気がしたからだ。
「へえ、伊導くんも男の子なんだ。んじゃあ」
「いっ!?」
パジャマの中に手を突っ込んだ流湖は、俺の両乳首を指でクリクリと弄ってきた。
「ふぇ!? 先輩何してるんです!」
「何って、アパートでも一度こんな感じの夜あったじゃ〜ん、今更驚く?」
「あああ、あれとは状況が違うじゃありませんか!」
俺から飛び降りた真奈は顔を真っ赤にして流湖に抗議する。
「でもさ、こういう普段と違う場所でするイケナイことって、興奮しない?」
「そそそれは、その、そうかもしれませんが」
おい真奈、そこは認めるなよ!
「にひっ、折角だしさ、やってしまおうよ、イケナイこと」
「イケナイ、こと……」
グルグルと瞳を渦巻にし混乱する真奈。正気に戻ってくれーっ。
「ほうら、ここ、空いてるよ?」
いつのまにか俺のパジャマのボタンが開けられており、真奈の視線が俺の肉体に釘付けになる。
「あ、お、お兄ちゃんっ……!」
「おい、真奈」
「はあ、はあ、お兄ちゃんのお腹……♡」
「くっ、やめ」
真奈は近づいてくると床に膝立ちになり、なんと俺の胸から腹にかけてを舐め出してしまう。
「そうそう、その調子だよ〜」
「いい、く、くすぐったい」
「ひぁ、おいひぃ、よぉ♡」
「うぁ、やめろよっ……!」
「いやいやっ、もっとほしいのぉ♡♡」
「その調子その調子〜」
今度は後ろに座る流湖が首筋から耳にかけてキスの嵐を降り注ぐ。
「ちゅむ、ちゅっ、はむっ、れろ」
「うおおお、おかしくなりそうだ」
「おかしく、なっひゃえば?❤︎」
「いや、だ、だめ……」
「もう、強情なんだか、らっ!」
「むぐぉっ!」
遂には、俺の顔を押さえて口に舌を突っ込み蹂躙してきた。
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